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29 天道の継承(王土日向)

 29 天道の継承(王土日向)



 最上級大臣王土日向は自らの執務室で大笑いを抑えきれずにいた。

 王侯将星が敗れ、神博士のアジトの一つを失ったのにも関わらずこの笑い。

 当然だ。武官の極み、大将軍として幅を利かせていた王侯は日向には目の上のたん瘤だった。

 利害は一致していたとはいえ、王侯は何時、王土の民の一派に矛先を向けるか分からない危険人物。

 更に天道を継承していたため、五つの究極生命体の枠が空いたからだ。


 ――これで私は天道を継承できる。


 既に天道の力が宿ったカプセルを手にして、それを飲もうとしていた。

 天道は究極生命体の中でも、始祖道に次ぐ当たりだった。

 天道の能力は限界を超えた破壊と再生の力。日向は前々から天道を継承したいと思っていた。

 日向がカプセルを口にしようとした瞬間、何者かが、日向の前に現れた。


「日向様。天道を継承するのですね?」


 紅い髪をした細身の青年だった。左腕には隷属の腕輪が嵌められている。

 自らの腹心。唯一新島彰敏に匹敵する存在。

 指揮能力の高さを無視するとしたら王侯将星より能力は上である。

 その正体はガイア帝国第一皇子。本当であったら、ガイア帝国を総べる存在。

 しかし、日向を含む神博士一派は有能な皇子の存在を危惧し、秘密裏に捉え、隷属の腕輪を嵌めさせた。


「そうだ。私は天道を継承する。人間の肉体などに未練など無いわ」


 日向はあっさりと人間の肉体を捨てる事を無機質に述べる。

 それは本音だった。人間の肉体などに未練はない。己の栄達と王土の民の復権の為には何でもする。

 破壊と再生の力は魅力的だとも思っている。

 破壊と再生……即ち、不死身だと言う事だ。年も取らない。永久的に策を練られる。

 日向はカプセルをゴクンと喉に流し込む。身体が熱い。熱が体中を蝕む。

 数秒後、日向はその身に宿る強大な力を実感した。


「これで私は天道となった。新島も武村も最早、敵ではないわ。

 始祖道であられる神博士様と共に王土の民の復権を果たす!」


 日向は自らの強大な力に御満悦だった。

 天道の力さえあれば、ガイア帝国を滅ぼせると日向は信じていた。


「日向様。お喜び申し上げます。天道である貴女様に改めて忠誠をお誓いします」


 片膝附一礼して日向に忠誠の誓いを言った。

 日向も自らに首を垂れる第一皇子に悪い気はしなかった。

 本当であれば、暗愚な桜華ではなくガイア帝国を総べる存在……だが、今は完全に日向の犬である。

 王土の民の復権まで後少しとなっている。その喜びを日向は噛み締める思いであった。

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