12 お嬢様への懸念
投稿します。
ジャンルを間違っていたのでハイファンタジーからローファンタジーに変更しました。
12 お嬢様への懸念
武村は戦士団の宿舎の談話室で鷹匠麗花が新島を見初めた件を本人に聞かせるために呼び出した。
談話室は全く飾り気など何一つも無く殺風景であった。
棚から酒を取り出して器に用意していると、新島が入って来た。
新島は不機嫌で神経質そうな顔を浮かべていた。
「一体何の話か知らないが、碌な話じゃねえのは察しがついている」
「まあ、そう言わずに座れ」
そう言うと、新島は渋々椅子に座った。何処から切り出せばいいのか武村は思案しながら言葉を発した。
「単刀直入に言う、新島、大総統閣下御息女、鷹匠麗花様がお前を見初めたそうだ。大総統が是非にと」
武村が正直に話すと、案の定新島が、見る見るうちに不機嫌になった。
無理もない、新島は結婚する気など毛頭ないのは承知だ。
新島は昔からモテたが、究極生命体を駆逐することに全霊を捧げている。
「あんなガキが俺に? だが、断れそうもないな……。
大総統、奴は娘を溺愛している。娘の為ならばどんな手も使う奴だ。
将軍の座も奴が大金を払って用意したものだ。
あのガキが、将軍の力が無いことはどんな奴でも分かる。断れる自信がねえ。腹くくるしかないな」
新島はハッキリと断れる自信が無いと述べた。
「そう言う事だ。諦めろ。大総統は帝都にお前を連れてこいと言われてな」
武村は諦めろと言い、もう一つ気になる事を言おうか迷っていたが、
「それと、少し気になることがあってな」
「何だ?」
「麗花様が、少し様子が変でな。纏い持つ雰囲気や違和感が拭い去れないのだ」
武村は麗花お嬢様に感じた違和感を新島に口にした。
それを新島にも感じてもらいたかった。
どうにもあの時の麗花お嬢様が何か大きな秘密を抱えているのではないかと懸念があった。
「分かった。それは気になるな。何か大きな秘密を抱えているのかもな」
何かに感づいたように新島は怖い顔をして部屋を出て行った。
――流石、新島。俺の懸念にすぐ何かを感づいたな。
そんなことを想った刹那、武村は新島が気付いた懸念に自分も気付き青ざめた。
すぐにそんな筈は無いと必死に頭から消し去った。