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ずっと一緒にいたい

お立ち寄りいただきありがとうございます。


 父と母はそう言って出ていった。

レベッカは鏡を見ていて、

「やっぱりそう簡単に治るものでもありませんのね。」

とがっかりしている。


 2人になって、

「ティモシー様、お疲れは少しはとれましたか?」

とレベッカが訊いた。

「元々疲れていなかったので、今も疲れていないよ。」

「でも昨夜はちゃんとベッドでお休みになってないでしょう?」

「そんなもの、いままで討伐に出れば何日も野宿をしていたし、慣れているよ。」

「そうですか。ティモシー様はお強いんですのね。」

「そうでもない。怪我をして、ずいぶん体が弱ってしまった。それとも年のせいかもしれないな。」

「ふふふ、弱っても普通の人以上かもしれませんわ。」

「俺は君から見たらずいぶんオジサンだからなあ。」

「あら、そうですか?おいくつか、伺っても?」

「28だ。」

「なあんだ、10歳しか違わないじゃないですか。」

「10歳も、だ。」

「『しか』でも『も』でも、とにかくそんなに違いません。」

「そう思うか?」

「はい。」

レベッカはにっこり笑った。


「ティモシー様、私ね、きょうはお昼すぎに目が覚めたんです。それからいろいろ考えてたんですけど、園芸は好きだし、領地にいけば農地があるから今までの知識を活かした事もできるかなとも思うんですけど、やっぱりいつまでもふらふらと王都で園芸店で働いているのもいけないかもしれないなあって思いました。これからはいままでのようにはいかない、ちゃんとわかるように護衛をつける、と父に言われたんですけど、またこんなに人騒がせなことをしないようにするにはもっともだなと思いました。でも、そんなにぞろぞろ護衛をつけて通うなんて、いかにもお貴族様の道楽だなあって思って。そんな人に迷惑かけて、自己満足でしかないなあって思うんです。だったら迷惑かけないように、例えばおとなしく家でお菓子作って売る、みたいなほうがいいのかな、って。」

「ふらふらと、とは思わないがな。」

「ふふふ、ティモシー様は優しいからそう言ってくださるけど、やっぱり私はもうちょっと地に足をつけないといけないかもしれません。どうしようかしら。そうはいっても、いわゆる貴族の娘のようにパーティーに着飾って出て結婚相手を見つける、みたいなことは性に合わないし。」

「園芸店をやめることもないと思うが。」

「そうでしょうか。」

「好きなことを一生懸命やっていることの何が悪いんだ?でも、たしかに護衛をひきつれて通う、みたいなことは本意ではないというのもわかるな。」

「はい・・・」

「園芸店の人たちは君のことを好きみたいだったぞ。君の菓子やパンもとても美味い。あれなら売り物になる。どちらにしても、または他にもなにかあるのかもしれないが、ひとつにこだわらずいろいろ挑戦するのも良いかもしれないな。だが、今はけがをして少し弱気になっている。こういう時はいろいろなことを考えずに養生したほうがいい。」

「・・・・・・そうですね。ティモシー様、ありがとうございます。私、ティモシー様と話していると、ごちゃごちゃだった頭が整理されていきます。」

「そう思ってくれるのはとても嬉しいな。」


 レベッカはクッキーをひとつとって、ティモシーの口に入れようとする。

「ん?」

口を開けろと、自分の口を開ける。

ティモシーはおとなしく口を開けて、レベッカのクッキーを食べた。

「これ、ご教授料です。」

と、いたずらっぽく笑っている。

(かわいい、かわいすぎる。)

ティモシーの心の叫びは聞こえてはいないようだが。


 兄が帰ってきた。アーロンも一緒だ。

「おっ、きょうはガーゼとったんだな。かわいそうに、いかにも殴られましたって顔だな。でも、心配するなよ、そんなの消えるからな。」

「お兄様、ありがとう。鏡見るとさすがにへこむけど、まあ仕方ないわ。身から出た錆だもん。」

「それで身から出た錆というのはちょっと違う気がするけどな。まあ、お前は元がかわいいから、治ったらまたすげえよ。」

「なにそれ、すげえって。」

レベッカはケラケラ笑っている。


 夕食になった。

今夜はアーロンも加わって賑やかな夕食となった。食後、父はティモシーと父の部屋で飲むことにした。兄とアーロンも参加だ。

レベッカは参加できないので母とおしゃべりの時間にした。


 レベッカは母に体をもたせかけて甘えている。

「ねえ、お母様」

「なあに?」

「お母様って、お父様と結婚する時、お父様のことすごく好きだった?」

「そうねえ。私はお父様とは家と家の決めた結婚だったけど、お見合いしてお話して、すごく好きになったわ。」

「すごく好きって、どんな感じ?」

「会いたいなって思ってて、会うと嬉しくて、お父様が帰る時悲しかったわね。」

「ふーん」

レベッカは黙って考えている。

母は

「ずっと一緒にいたいなって思う人って、そうはいないものよ。」

と言った。


 ホートン卿グレッグは若者3人と一緒に上機嫌だ。とはいえ、若干の緊張感はある。はじめのうちはバーナードとアーロンが魔導師団の話をし、それにティモシーが加わっている、という形だった。ティモシーは魔法も使えるのだが、それよりも武力のほうがかなり上だ。幼い時からグロフォード卿に叩き込まれた武力は、大怪我をしたあとでも、未だ勝てる者がいないくらいだ。一方、バーナードは魔力が群を抜いている。やはり幼い時からホートン卿に叩き込まれた魔法は今やホートン卿に次ぐ実力となっている。この2人が組めば、世界最高の強さであろう。アーロンはバーナードより実力は劣るが、その分精神面でとても安定していて、バーナードを支える『女房役』である。グレッグはこの3人がいれば我が国は世界最強だと誇り高く思った。また、バーナードとアーロンは共に人生を歩んでいこうと約束した仲である。バーナードはホートン家の嫡男だし、アーロンも嫡男だ。後継をどうするのだろうと、それが気がかりだったが、ティモシーによれば、レベッカは子供をたくさん産んでバーナードにも分かち合うと言っているそうで、グレッグはそれを聞いてひとまず安心した。

お読みいただきありがとうございます。

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