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ブラックストリート  作者: エッグ・ティーマン
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戦いの先の事件

 2018年 リムソンシティ ホーネット地区 地下格闘技場

 ラースキン巡査は声を張り上げた。「アイリーンが!ギャングに誘拐されている。追って!」「ああ。俺が止めようとしたが殴られた。絶対に許さねえ。」と立ち上がりながらレッドスパロウズの男が叫ぶ。眼帯の管理人がピストルを取り出し、警備員を殴り倒すブルーショッツのメンバーを複数人撃ち殺した。だがアイリーンを誘拐した二人のギャングは外に出た。ラースキンは彼らを追う。

 外に出ようとしてなにかにつまずいて倒れるラースキン。見ると、全身ハチの巣になった警備員が倒れている。武器帯同が試合以外認められていない格闘技場内では不利になると見込んだギャング達は外に武器を帯同した仲間を四人呼んだようだ。ラースキンはうずくまると警備員の腰からピストルを抜き取っていきなり立ち上がり、武器がある者に撃つ。その者は驚いて飛び下がったが、同時に別の二人のギャングが銃弾を浴びせる。ラースキンは間一髪で弾丸を避けると、駆け寄るギャングの腰を撃ち抜きながら死んでいる別の警備員の手からライフルをもぎ取り、ギャングに構えると連射した。二人のギャングがのけぞって倒れる。腰を撃たれたギャングが立ち上がろうとしたが、一発殴ると気絶。残ったギャングが組み付いてくると同時に誘拐犯の二人はアイリーンをバンに放り込んだ。バンは別の者が運転しており、即座に発進した。地面に押し倒されたラースキンだが、相手の股間を蹴り上げて立ち上がり、顎を五発殴って気絶させた。

 「よお、雑魚。勝負だ。」と先ほど殴られたと証言したレッドスパロウズがラースキンが投げて渡したピストルで誘拐犯と銃撃を始める。

 ラースキンは止まっているタクシーから運転手を引きずり下ろし、タクシーを発進させた。「おい!

コソ泥、ビィルヘルム様に言いつけてやるぞ。」とタクシー会社の社長の名を出して騒ぐ運転手だったが、いきなり逃げるブルーショッツに突き飛ばされて倒れる。

 ラースキンは目の前にある車とトラックの間をすり抜けて赤信号でトラックにぶつかりながらもブルーショッツの後を追う。ブルーショッツはハイチ人ギャングなので街はずれの黒人街に向かうはずだ。ひたすら黒人街を目指して進んでいると、遠くにブルーショッツのバンが見えた。「クソ!」悪態をついたラースキンはいきなり近くの広場に突っ込んだ。人々が悲鳴を上げる。彼は逃げ惑う人々の間を縫ってバンに直行した。道を走っていた二つのバイクを突き飛ばし、バンに体当たりする。だが、相手はバンだ。圧倒的な力で押し返してきた。横に滑ったラースキンが運転するタクシーは横のトラックにぶつかる。トラックに運転手は急ブレーキをかけて停車し、下り・・・タクシーの屋根に乗ったと思うと放り出される。彼を轢く寸前の車が急停車し、玉突き事故をおこしている。パトカーのサイレンも聞こえ始め、あたりは騒然とした空気に包まれる。法定速度の二倍ほどのスピードでラースキンは追いかけ、バンに後ろから激突する。「クソ!しつこい野郎だ!」と叫んでバンの助手席のギャングが大きなライフルを取り出して窓から突き出す。「まじかよ・・・」と叫んだ次の瞬間飛んできた銃弾でフロントガラスが割れ、ラースキンはハンドルを握ったままかがむ。その結果制御を失った車は近くのレコード屋に突っ込み、ラースキンは倒れてくる棚の下敷きになって気絶した。


「小僧、起きろ。」との声とともに水をかぶせられる。目を開けると自分はリムソン市警の取調室にいることが分かった。目の前にはパトロール課のハーマン刑事とアカハネ刑事がいる。記録机にはラースキンの同僚であるマーガレットが座っていた。水をかけたのはアカハネだ。ハーマンは爆笑した。

 「さてと、あんたとこうして対面とはな。」とラースキンをにらみながらアカハネ。「いやはや、驚いたね。お前さん、おおきなこぶを頭に作ったうえ、顔の一部はガラスが刺さっていたし。」とハーマン。その時初めてラースキンは自分が顔を包帯で覆われていることに気づいた。さらに両腕にも包帯が巻かれ、両足には絆創膏がところどころ貼ってある。「事情を話してくれよ、ぼう・・・」そういいかけたハーマンをアカハネが止める。「なんだよ。」ととまどうハーマン。それに対してアカハネは興奮して答えた。「こいつは使えるぜ。よし、マーガレット、今から俺らが話すことは非公式だぞ。」マーガレットはアカハネが言わんとしていることを理解し、報告書をくしゃくしゃに丸め、録音装置のスイッチを切ってから一礼して取調室をでていく。

 「事情を話してくれ。これは取り調べじゃねえぞ。安心しな。」とアカハネ。ラースキンは実はいまだに地下格闘技場のアイリーンと禁断の男女関係を続けていることからブルーショッツにデスマッチを仕掛けられたこと、その戦いに気を取られている隙にブルーショッツの他のメンバーはアイリーンを誘拐してしまったことを話した。話し終わると。ハーマンは「この好色野郎が!」と叫んで笑う。一方のアカハネは「おい、ちょっとこいや。」と言って笑うハーマンを取調室の隅に連れて行ってハーマンと顔を突き合わせて何事か話し合う。

 やがて戻って来た二人は驚くべき提案をする。なんとこの一件については上層部には報告せず、さらにブルーショッツからアイリーンを取り戻す手伝いをしてくれるという。だがラースキンは分かっていた。この提案には裏がある。彼らにメリットをもたらすような企みがあるはずだ。


同日 夜 リムソンシティ ニューカブキチョー

 ムサシノクラブは日本建築の技術を使って建てられたヤクザ経営のクラブだ。

 このクラブのVIP室(この部屋は一般人には存在を隠されており、ムサシノクラブが認めた者のみ入室できる。)でラースキンはアカハネ、そしてムサシノクラブ経営陣を裏で操るヤクザ「武藤会」の副理事長オザキと向かい合う。

 オザキを見た瞬間ラースキンは悪い予感が当たったことを悟る。すなわちアカハネの提案には裏があったのだ。アカハネ率いるリムソン警察日系人警察官派閥の目的は日系人勢力の拡大だ。彼とヤクザはつるんでチャイナマフィアへの攻撃やヘイトスピーチ会の主催などしてきた。即ち彼らにとってリムソンシティは日系人が支配するべき街である。もちろん裏社会も同様にヤクザが統一を目論む。裏社会におけるこの統一は日系人以外の勢力を排除することによって成し遂げられる。その「日系人以外の勢力の排除」の一環として今回のアイリーン奪還作戦がある。アイリーンをさらったギャング集団ブルーショッツはハイチ人ギャングである。もしアイリーン奪還を口実にブルーショッツを襲えば彼ら、ひいては彼らと密接な交流があるソマリアギャングにも打撃を与えれられるかもしれない。そういった意図があるのだろう。

 アカハネとオザキが語った内容はおおむねラースキンの見立てと一致していた。オザキが組長を務める武藤会内の暴力団組織から武闘派の精鋭を八人提供するという。その上でアカハネの派閥の機動隊員も二名参加。指揮はアカハネがとり、ラースキンも同行。つまり、計12人でブルーショッツの拠点を襲撃する計画だ。これは上層部から承認を得ていない秘密作戦になるらしい。ラースキンは暗い気持ちでアパートに帰る。


六日後 リムソンシティ サン・ドリル地区

 この場所は複数の黒人ギャングが抗争をしながら支配する危険地区のひとつだ。(といってもリムソンシティ全体が危険地区ではあるが。)

 その中の、ある空き家の庭にバン二台が駐車した。そのバンから複数の人影が下りてくる。皆黒ずくめで、二挺のピストルを握る。


 その頃廃墟から道を挟んで向かい側の広い平屋の建物の中。ブルーショッツメンバーが宴会をしている。無造作に並べられた鉄製のテーブルの周りに薄汚れたパイプ椅子が置かれ、そこに座るギャングたちが酒をあおり、マリファナ入り煙草を吸い、ポーカーの賭けを楽しみ、また自分達のシノギについて議論を交わす。「ああ、クライアントの気前の良さったらなあ・・・」と酒を飲んで真っ赤になった顔をさらに赤らめて大声で話す太った男。全身入れ墨だらけで、首からは動物の骨と黒いビーズという不気味なネックレスを下げる。腰のわに革ベルトには十本のナイフ。さらに机に上にはショットガンが置かれる。その男の向かい側にすわり、「本当にそのとおりですね。こうして宴会ができるし、少しボスも遊べるでしょう?」と答えたのは青いバンダナ、青いマント、青い入れ歯の老婆。「それにしてもクライアントの意図が分からねえよ。」と同じテーブルに座っていた青いバンダナと青いTシャツ、ごわごわの無精ひげの男が会話に参加する。太った男は渋い顔になって男を叱る。「馬鹿者!我々はそんな余計な事考える必要はねえんだよ。クライアントとは金だけの関係。そう何度もいっただろうが。ブルーショッツのボスたる俺の弟がそんなことでは困る。」

 その時いきなり四方の窓ガラスが吹き飛び、黒ずくめ、黒覆面の男達が侵入してきた。


 ラースキンは飛び込むと、近くにいたブルーショッツの青年に銃を突きつけ、「アイリーンはどこにいる?」と言おうとしたが・・・青年の頭が吹き飛んだ。「よお、諸君!プレゼントだ!」と叫んでいるヤクザが撃ったのだ。別のヤクザはピストルの撃鉄を起こして慌てて立ち上がる二人のブルーショッツメンバーの腕を日本刀で切り落とし、さらに別のメンバーの顔面を切りつけた。慌てたラースキンは立ち上がろうとするブルーショッツメンバーを蹴り倒して心臓に銃弾を撃ち込んでいるアカハネの元に駆け寄る。「やりすぎです!ヤクザの方々はこの場所を血の海にするつもりのようですけど・・・」「ああ、彼らはそのつもりだぜ。俺もな。」「あの・・・私としては無駄な・・・!!」アカハネは持っているピストルの銃口をラースキンの方に向け・・ラースキンの右耳の近くの空間に打ち込んだ。右耳に絶叫が聞こえた直後、ドロッとしたものがラースキンの顔の右半分にかかる。見てみると、鉈を握った筋肉質のブルーショッツメンバーが頭の上半分を吹き飛ばされて床に倒れて絶命していた。「危ないぞ。お前も余計な慈悲は考えずに殺したほうがいい。」とアカハネ。溜息をつき、殴りかかってくるブルーショッツのカップルの足を撃ち抜いたラースキンはあることに気づく。大勢のブルーショッツメンバーが裏口周辺をちらちらと見ている。そこを見たラースキンは気が付いた。ブルーショッツのボスが四人ほどの部下に囲まれて逃げ出すところだ。ラースキンはナイフで襲ってくる女の手をひねりあげた上に床に叩きつけて倒し、近くでブルーショッツ殺戮に興じている機動隊員二人に声をかけて裏口に走りこんだ。「まずい!」ボスは裏庭から隣のソマリアギャング「ブルーライオンズ」の縄張りに逃げ込もうとしていた。ブルーライオンズはブルーショッツの同盟者のギャングだ。ブルーライオンズから援護を呼ばれると事態は厄介なことになる。ラースキンとしては、ヤクザと黒人系ギャングの抗争に巻き込まれるのは願い下げだ。

 四人の手下が阻もうと武器を手に駆け寄ってくる。ラースキンと機動隊員二人は二挺のピストルを連射して四人を倒し、ボスを追う。ボスは時々ピストルを撃ちながらも怯えた様子で逃げる。ボスは空に銃を撃ち、「助けてくれ!襲撃者だ!」と叫ぶ。

 

 「おい、銃声が複数聞こえるぜ。」「本当だ。」こう話すのは庭で夜のバーベキューに興じていたブルーライオンズメンバーだ。二人は立ち上がり、近くの小屋の中に走りこむ。「おい、兄貴!銃声が聞こえるぜ。」「ブルーショッツのテリトリー内だ。ちょうど彼らの本拠地のあたりかな?」「それままずいな。おい、リック。お前は俺と来い。偵察だ。ジョーイはボスに知らせろ。我らの兄弟が危機に瀕している可能性がある。」


 ラースキンはブルーショッツのボスの足を撃つ。ボスはうめいて倒れるが、起き上がろうとする。よろよろ歩き出したボスにつかみかかって押し倒すラースキン。「クソ!てめえは何者だ!」と悔しそうにボス。「質問に答えろ。」と銃口を突き付けるラースキン。「うう・・・わ、分かったよ。どんなしつ・・・」「お前たちがさらった地下格闘技場の女性はどこにいる?」「わ、分からない。」「は?」「だから、わ、分からねえよ。だって俺ら依頼誘拐しただけだし・・・・」「おいおい、まじかよ・・・で、依頼人は?」「それも分からん。」「は、嘘つけ!!」と怒鳴るラースキン。「いや・・・ほ、本当だ・・・でも依頼を仲介した奴なら知っている。」「誰だ?」「ミスターKだ。」「そいつはどこにいる?何者だ!?」「落ち着いてくれ・・・そいつは今バラッド地区に住んでいる。そ、そいつは・・・頼むから銃口を下ろしてくれよ兄ちゃん・・・わ、分かったよ。そいつは我々の重要な取引相手で、儲かる仕事を斡旋する仕事をやっている。仲介屋だよ。そいつに聞けば依頼人の正体が分かると思うぜ。」


四日後 リムソンシティ バラッド地区

 オスカーは裏路地に走りこみ、覆面を脱ぎ捨てた。パトカーのサイレンが遠ざかっていく。ほっとした彼は大きな黒い鞄から今日の収穫物を取り出す。麻薬売人のたまり場から強奪した大麻7㎏、富裕街に住むコレクターを脅して奪った小さな金の彫刻、美術館のケースから盗み出した現代アート。さらに強盗仲間と金塊の山分けをしなければならない。路地の向かい側の建物に行こうとした時・・

 「よお、久しぶりだな!」と聞き覚えのある声。「ラ、ラースキンさん!?」軍隊時代の上司に会い、驚くオスカー。「ああ。こんなところにお前がいるとは。」「ラ、ラースキンさんこそこんな裏路地で何を?」「それは言えねえ。秘密の用事だ。」「こちらも実はそうなんでして・・・」「おい、もしかして向かいにあるあの建物に用事があるんじゃねえのか?」「な、なんでそれを・・・」「俺もあの建物の所有者に用がある。用事は違うだろうが目的地は一緒のようだな。」「は、はい・・・」「すまんが俺は個々の訪問は初めてだからな。取り次いでくれねえか。俺はこの路地に身を隠してまず、様子を窺おうとした。だが取り次いでくれる奴がいるならありがたい。」「あ、あの・・・」「何だ?」「ラースキンさんは警察官でしたよね?」「ああ。」「俺がこの建物に用事があるということは・・」「ああ。察した。だが安心しろ。俺は警察上層部にバレないよう、私的な調査を行っているだけだ。それに、お前ごとき雑魚に警察は関わり合っている暇はねえ。」「へ、へい・・・」「それより、さっさと取り次いでくれねえか。」ラースキンがイライラしたのを見て、「は、はい・・・」とオスカーは走っていった。

 数分後、オスカーは戻ってきたが、なんだか様子がおかしい。顔が青ざめていた。「おいおい、どうした?」「いや・・・ラースキンさんの調査、リムソン警察にバレてしまいます・・・」「は!?」「警察に連絡せざるを得ない状態です。」

 部屋の中を見て、ラースキンは愕然とした。部屋は血だらけであった。数人の人相の悪い男が床に倒れていた。皆頭部に弾丸によるものと見られる穴があいていた。だが最も悲惨であったのは、木の椅子の上で絶命している太った男だった。彼は全身から血を流していた。全身に何かで殴られた跡があり、頭は原型をとどめておらず、手足の骨は折れて皮膚を破って突き出ている。顔は重いものでつぶされており、肉塊と化していた。また体が完全にハチの巣になっており、血が飛び散っていた。「猟奇殺人だ・・・」とラースキンは呆然としてつぶやく。

 

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