拷問屋オスカー
2019年 リムソンシティ郊外 ムンバク探偵事務所
「あなた方も思い切った行動に出たものですね。」ハリー刑事は呆れたように言う。「ええ、捕まる可能性はありました。」と静かに答えるジュディ。それを聞いてハリーは言う。「ああ、勇気ある行動ですよ。あなたとマーガレットさんは姉妹関係だということも承知しています。しかし、最初から私を頼って欲しかった。」「申し訳ありません。我々、まさかマーガレットが亡くなるとは思っておらず・・・」とムンバク。「ええ、ええ、お気持ちお察しします。しかし、なぜ私を?」するとムンバクが苦笑して言う。「あなたなら本部という立場から見ているのでお分かりでしょうが、最近の警察は不正が多いのです。ジャカの地元当局もマーガレット殺人事件を隠ぺいしようとしているように思いましたよ。」ハリーは「なるほど・・・」と言って数分考えた後言う。「まずは、あなた方がつかんでいるマーガレットさんの事前情報を。」「ええ、分かりました。」そう言ってムンバク達は話し出す。
彼女はリムソン市警の婦警であると同時にロックウェル署長の愛人でした。といっても彼女はロックウェルを好きでもなかったし、彼の汚い金を取ろうともしていなかった。彼女を道具のように操る男がいたのです。その男こそ故ホーバンです。彼はリムソンシティの裏社会に食い込む風俗経営王。そしてロックウェルに賄賂を渡していた人物でもある。だが、ロックウェルはニューカブキチョーのヤクザやサン・リドル地区のハイチ人・ソマリア人らからも賄賂を受け取っていました。つまり、そちらの組織とホーバンのネットワークの間にいざこざが起こった際に守ってくれる保証はなかった。そのため、ホーバンはマーガレット巡査を使ってハニートラップを仕掛けたわけです。それに愛人スキャンダルで有力者を脅すのがホーバンの常とう手段でした。しかし一方でロックウェルのほうも彼女を利用しました。ホーバンのネットワークに通じている彼女は通常の捜査では手に入らないような裏社会の情報をロックウェルに提供したのです。これらの情報をロックウェルはいいように利用しました。そして、我々も。我々はリムソンシティの情報を常に収集している情報屋です。裏社会に潜っている多くの情報屋との繋がりがある。その中でも最も優秀だったのがマーガレットでした。ジュディと姉妹関係にある彼女は、喜んで我々に情報を流してくれました。我々があなたのような正規の警官と知り合いになれるまでに成長できたのは彼女のおかげです。さて、亡くなる直前まで彼女は我々が受けた調査依頼に関する情報収集を行ってくれていました。ジャカシティで。ジャカシティは彼女の得意分野でもないのに潜り込んだんです。恐らくはホーバンのネットワークを使っていたのでしょう。調査内容ですが、ある女性を探す調査です。依頼人はラースキン巡査です。彼はホーバンの経営する地下格闘技場にいた女性を探していました。彼女は接待係として働いていたんですが、ギャングに誘拐されたのです。そのギャング共は犯罪仲介人を通じて雇われたらしいのですが、肝心の仲介人が別件の連続殺人事件の被害者となり、依頼人は不明です。しかし、優秀なマーガレットはその情報をつかんだらしいのです。しかしその真相を話そうとした途端、彼女を何者かが殺しました。低い声の男で、恐らく殺し屋です。ジュディは、実の姉妹が殺される瞬間を電話越しに経験していました。そして、いてもたってもいられない我々のもとに最悪の知らせが届いたというわけです。
話を聞き終わったハリー刑事は何か話そうとしている絶妙な表情を見せている。「刑事、どうされましたか?」とダイムラー。「実は・・・・」
「何ですって!」とジュディが叫ぶ。ハリー刑事は衝撃の事実を伝えた。「メディアには公表していません。しかし、ラースキンさんは何か証言しようとしたんです。殺されたロックウェル警察署長と共に。」「何とねえ・・・」ムンバクがひとしきり唸る。「しかし、ロックウェルとそのハンク?でしたかね。そいつを殺した犯人はラースキンとは思えません。何故ならロックウェルと共に出頭してきたんでしょう?」とダイムラー。「分からないので一応参考人扱いで手配書を回しました。しかし、あなた方なら何か参考になることを知っている可能性がある。少しお話聞かせていただけますか?」とハリー刑事は言う。
二日後 リムソンシティ ホーネット地区 地下格闘技場
バーに十人程の男たちが入って来た。皆派手なジャージを身に着けている。「ボス、このバーにはいい女がいっぱいいますね。」と太った男が言うと、「ああ、そうだな。」とボスが答える。彼は細身だが、鋭い目の上にある切り傷と青色に染めた無精ひげが彼に並々ならぬインパクトを与えている。ボスは一人のウェイトレスの肩をつかみ、言う。「飲み物配ってる暇あったら奉仕しろや、ねえちゃん。おい、お前ら、飲み物やるよ。」とのボスの声に、モヒカン刈りの少年二人が飲み物を盆ごと女から取り上げる。ウェイトレスは戸惑ったものの、ボスが近くの席に座るとその隣の席に腰を下ろしてほほ笑む。禿げた大柄の二人の男がボスを守るように立つ。「おい、ジャックス、他の女もかっさらって来い!」との命令を受けた太った男と筋肉質のラキア人傭兵らしき人物はいきなり他の客としゃべっているウェイトレスの肩をつかみ、強引に引っ張ってくる。「ボス、連れてきやした。」「ありがとさん・・・」と言いながらボスは女と反対側の隣席の客を振り向き、言う。「そこどけや。女が座るんだぞ!」しかし、その客も荒くれものだった。「なんだ?俺がなぜてめえの都合で・・・」しかし、彼は後頭部から打撃を受けることになる。後ろには、先ほどのモヒカン少年のうちの一人がいた。彼はいつのまにかこん棒を手にしており、客を殴ったのだ。「ふん!」ボスは悶絶する客の頭を踏み、怯える女に言う。「まあ、座れや。」
「お客様、申し訳ありませんが他のお客様への暴行は禁じられております!」と大声が響き、二人の用心棒が現れた。「なんだ?店の野郎か?」とボス。「ええ、あなた方は出禁ですな。」二人の用心棒は警棒を抜いた。「ふん、ボコせ!」とボスが酒をあおりながら手下に命じる。二人のモヒカン少年はこん棒を構え、二人の大柄の男も拳を固めた。そして・・・大乱闘だ。まず、こん棒少年が用心棒に殴りかかり、もう一人の用心棒がその少年の頭を警棒で殴りつける。するとその用心棒の髪の毛をつかんだ禿げ男が用心棒を床に叩きつける。起き上がった二人の用心棒は禿げ頭二人と殴り合いを始めるが、こん棒少年たちが後ろから加勢したために、すぐに倒れる。すると、バーテンダーがいつのまにか呼んでいた五人の用心棒が警棒で少年たちに殴りかかり、禿げ男二人が応戦する。そこに残りのジャージ不良集団メンバーも加わり、乱闘が激化した。ボスは怯える女たちを逃がさないように両手で肩を押さえながら言う。「お前ら乳首のデカさを俺にアピールしろよ。俺が勝ちと認めたこうとホテルに行ってやるからよお!」
「オスカー、あんたの出番だ。クソ客を制裁しろ。だが、殺しちゃだめだぞ。捉えて評議会に見せる。」「はいよ!」そう言ってオスカーは瓶の酒をあおって空にするとそれを持って立ち上がる。
「いい警棒じゃん!」折り重なって倒れて気絶している用心棒たちから、不良集団は警棒を取り上げる。「おいおい、バーテンダーさんよ、店の者を呼んで来い。このクソみたいな用心棒どもを片付けろ。」しかし、そういったボスの頭の上に後方から酒の瓶が振り下ろされ、ボスは頭を抑える。温案二人は顔を見合わせて席を立ち、離れた。「うちの作業員はてめえらを片付けるわ!」そう言ってオスカーは目の前に立つ禿げ男の腹に強烈なパンチを叩きこんだうえで足で払い、倒れた禿げの上に立って素手で少年二名のこん棒を受け、跳ねると彼らの頭の上に着地。取り上げたこん棒二つでもう一人の禿げと起き上がった少年全員を倒し、他の不良も一瞬で気絶させた。そしてよろよろと立ち上がった不良ボスは逃げようとするが、オスカーはその背中に乗って頭を連続パンチ。気絶させた。
「助かったよ!」ラークが作業員たちを引き連れて現れた。「こいつらは評議会の制裁を受けないとな。」ラークの命令で不良たちは一人残らず縛り上げられて、地下格闘技場の方向に運び入れられた。その様子を見ながらオスカーは尋ねる。「奴らを評議会はどうするんだ?」すると、ラークはオスカーの口に耳を近づけて言う。「多分だけど殺す。」「ほう・・・」オスカーは薄笑いを浮かべた。「あんたのボスたちは残忍だな。」「ふん。まあな。」「殺し屋である俺に処刑させてみないか。」といきなり提案をするオスカー。「何!?」と驚くラークに、オスカーは畳みかける。「俺は軍隊時代にテロリストを拷問した。今回もその方法でボス達を満足させられると思うけどな。」「それはつまり、評議会の前でお前が奴らを?」「そうだ。評議会の前で俺があのクズどもを殺す。」「ちょっと待ってくれ、俺に決定権はないんだよ。」とにわかに焦るラーク。「いいさ、評議会の連中に提案してみてくれよ。きっと気に入るぜ。」
四日後 リムソンシティ リムソン市警本部
「私があんたのために動く理由はないんですけど!」とバネッサはキャロルに食ってかかった。しかし、キャロルは冷静に言う。「バウントがあなたをこちらにやったということは、『バネッサ警部をご自由にお使い下さい。』ということの筈よ。だから私はあなたをリムソン市警捜査本部の連続殺人事件の担当捜査官に任命したのよ。」「ちょっと待ってよ!それ非公式でしょ!実質連続殺人事件の捜査はおわりよ。」「実質ね。でも、書類上はまだあなたが連邦警察で捜査を続けていることになってるわ。」「ふん、それで私が納得するとでも?だって今回の連続殺人事件とラースキンが行方不明になったこと、関係ないでしょう?」しかしキャロルは即答する。「あるわよ。彼は非公式の連続殺人事件捜査員だったわ。その裏にはアイリーンについて調べたいという彼の思惑もあった。そんな彼がいきなり行方不明になったわ。何かありそうね。特に最近動きがないあなたの上司は不気味ね。」「バウントは、ハリーに睨まれているから動けないの。」それを聞いてキャロルは少し考え込む。「やっぱりバウントじゃなくハリー刑事に連絡を取るわ。彼は味方になってくれると思うわ。」「じゃ、私の仕事は・・・・」「ハリー刑事に頼んであなたを連邦警察に戻してもらうわ。」「はあ・・・勝手にすれば。私はバウントの部下よ。あなたじゃなくてね。そのことを忘れないでね。」「そうね。でも、組織が違うとは言え我々は同じ警官よ。協力しましょう。」といってキャロルは手を差し出す。しかし、バネッサは握手に応じず、無言で出て行く。「あらま・・・」と言ってドアを聞詰めるキャロルは溜息をつく。「彼女は優秀だけど手がかかるわ。操るのは難しいかもしれないわね。」
バネッサは携帯電話を取り出し、ある人物に電話する。
「あ、どうも・・・・」「どうもじゃないわよ!とにかくあなた、何処にいるの?」「それは言えねえな。今仕事中なんでね。」そう答えた声は明らかに殺し屋オスカーのものであった。彼は続ける。「俺に仕事ですかい?」「いいえ、今はいい。だけど、聞きたいことがあるの。」「なんです?」「ラースキンの居場所について知らないかしら。」「ああ、あいつですかい?知りませんよ。俺はあんな馬鹿とは縁を切りましたから。あんたも縁を切ったほうがいいぜ。」「私だってそうしたいわ!まあいい、ありがとう。」「へいよ!また何かわかったら連絡しますぜ。」
六日前 リムソンシティ 連邦警察本部
ハリー刑事は話を聞くと「これはかなり裏がありそうですな。」と言って顔をしかめる。「ともかく、警察庁を通じてジャカ警察に連絡を取ってみます。」そう言ったハリーはジュディに顔を近づける。「かならず真実を暴き出します。ご安心を。」ジュディは涙を流しながら頷く。「ありがとうございます!」そう言ったジュディの顔には久しぶりに笑顔が見えている。頼もしい味方を得た喜びだ。
「あらま、お節介ね。でもいいわ、マーガレットさんのお仲間の皆さんを安心させてあげるのよ。ジャカ警察に問い合わせてみるわね。」「ありがとうございます!アン局長。」ハリーは感謝を言う。「ああ、ところで話は変わるけど、薔薇鉄皮隊の兆候は見られるかしら?」こう聞いたアン局長の言葉に、ハリーは少しこわばった顔をする。「申し訳ありません。様々な出来事が起こりすぎて、捜査が進んでおりません。」「聞いたわよ。ロックウェルとハンクが殺されたんでしょ。ラースキンも行方不明だしね。」「ええ。ムンバクさんたちから持ち込まれた話も場合によると関係してくるかもしれません。」「ええ、そうね。でもあなたが一所懸命に捜査していることは分かっているわ。後ね、ハンクについて私のところに情報が届いているわ。」「情報?」「ええ。聞いて驚かないで頂戴。ハンクはね、偽警官よ。」「偽警官!?」ハリーはオウム返ししたまま、驚きで会話を続けられない。「ええ。」「情報は誰からです?」「私のスパイ。」「え?」「警察庁にいる友人よ。長官と親しい。」「ああ、なるほど・・・」「あなたは巨悪と戦う覚悟はできている?」「はい?」「ハンクを偽警官として連邦警察に潜り込ませたのは長官よ。彼がハンクという架空の警官の情報を作らせてデータベースに入れたみたいね。」「なんですって!?」「私が警察幹部の不正について調べていることは分かっているでしょう?」「ええ。」「あなたが私の捜査の唯一の協力者ね。誰も信用できない。」「それは・・・・ありがとうございます。」「で、どうやら不正の疑いは事実みたいね。あなたはハウスラーを追及することになるかも。」「は、はい・・・」ハリーの顔はこわばる。巨悪との対決は危ない橋だ。しかし、やらなければならない。「待って、まだあるのよ。」そう言ってアンは続けた。「あなたも分かっていると思うけど、ハンクは殺し屋よ。本名はセバスチャン。とある組織に属しているわ。その組織は・・・待って!」「どうしました、局長!」「ジャカの連中に問い合わせる手間が省けたかもしれないわね。ハンクの属している組織は多分ジャカの連中が捕まえた男の率いる組織だわ。彼らの組織の名前は不明よ。だけど、隠れ蓑として使っているカジノバーにセバスチャンは出入りしていたみたいね。」「何と・・・」驚くハリーに、アンが警告する。「ハリー、気を付けなさい。この事件の根は深いわよ。」
八日後 リムソンシティ サン・リドル地区
駐車場に車を乗り入れると、オスカーは首元にある録音機に話しかける。「会場到着したぜ。」その声に応じて、「了解。慎重にな。」というイタリアンマフィアベルディの声。
しばらく待機するオスカー。すると、ログハウスからラークが出てきた。「よし、行くぜ。」とつぶやいてオスカーは車から降りる。
「よう、ラーク。」「おうよ。時間ぴったしだ。評議員の方々は待ってるぜ。」ラークは少し緊張した様子でオスカーを案内する。ログハウス前に立つ「ピンキーライオンズ」の構成員が丁寧にお辞儀してドアを開ける。
ログハウス内部には一部屋しかなく、その部屋の中に評議会のメンバー、そして椅子に縛られた不良グループのメンバーがいた。オスカーは、評議員たちが横並びに座る机の前に置かれている椅子に座るようラークに言われて着席した。「よく来てくれたね。」と口を開いたのは「イエローアサシンズ」のボスだ。「さてと、あんたの仕事について説明するぞ。」そう言ってレッドスパロウズのボスが説明を始める。「あんたの後ろに縛られているのは、ご存じの通り我々の商売を邪魔しようとした命知らずだ。」評議会の面々から笑いが出た。後ろではさるぐつわを付けた口を動かしてうめく不良たちの声。「あんたには、こいつらに制裁を加えてもらう。殴ってもいいし、道具を使ってもいいぞ。」レッドスパロウズのボスがそう言うと同時に「ブルーショッツ」のメンバー数名が机や沢山の箱をオスカーの隣に置き、箱の中の物を机の上に並べ始めた。ペンチ、ハンマー、ベルト、ナイフ、のこぎり、鉈、硫酸、ハッカ油、焼きごて・・・多彩な道具が並べられる。「とにかく、君の好きなように彼らを拷問してくれ。」とレッドライオンズのボスが締めくくり、あとはオスカーの時間だ。
怯える不良たちに対して、まずオスカーは一人ひとりベルトで顔を殴りつけた。そして怒鳴る。「何か言ってみろよ!」そう言ってまた顔を殴りつけた。苦痛に歪む不良たちは鼻血を流し、うめき声をあげるだけだ。「そっか、てめえらはしゃべれないんだったな!」そう言うとオスカーはひとりひとり腹を蹴り飛ばした。椅子に縛られているため、不良たちは全員地面に転がった。オスカーはその不良たちの腹を何度も何度も踏みつけた。嘔吐する音が響く。「汚い音たてるんじゃねえ!」オスカーの怒号が響く。そして彼はハンマーを手に取る。不良たちは恐怖で固まっている。「ふん!」掛け声と共にオスカーはハンマーで不良のリーダーの顔面を殴りつける。骨が折れる音が響いた。手下たちは恐怖で震え、目で訴えかけてくる。そんな手下たちにオスカーは容赦なく言い放つ。「もぞもずうるせえぞ!」そうしておもむろにピストルを取り出すと、手下たちを一斉に射殺した。残るは気絶寸前のボスだ。「おい、しっかりしろよ!」そう叫ぶとオスカーは不良のボスの椅子を起こし、体に硫酸をかけ始めた。うめく不良のボスの声を無視し、彼はまたベルトで殴りつける。何回も、何十回も、何百回も・・・不良のボスが死ぬまで。
男は監視カメラでオスカーによる拷問の様子を見ていた。「あの狂暴性、わが組織に必要だな。」そうつぶやいた男は電話を掛ける。
評議会の卓上にあった電話がなる。「ブルーライオンズ」のボスが受話器を取る。「ああ、見ていたか。うん、分かった。」ブルーライオンズのボスはそう答えると、目の前に立つ怪物オスカーを眺める。「少し待て。お前に会いたい人がいる。」
十分後
男は覆面を取り、被った。車に出迎えのラークが走ってくる。「見たよ。奴にしてもらいたい仕事があるからな。」男はそういう。ラークは「ああ。この中だ。」と答えて男を案内する。
中にはオスカーが待っていた。「座る場所を用意してやればいいものを。」と呆れたように言う男に対し、シルバーウルフのボスが言う。「奴はそんなやわじゃない。」「ふん、確かにそうだな。」そう言った覆面男に対してオスカーは静かに問いかける。「あんた、誰だ。」「いい質問だな。」と男は言い、答えた。「リムソンシティの調停人さ。人種で別れて争う彼らの仲を取り持つ。サン・リドルギャングは私の役割をよく理解してくれている。」「ふうん、で、俺に何の用だ。」とオスカー。すると男はある写真を取り出す。「あんたを雇いたい。この二人の男を消してくれ。」写真を見たオスカーはにやり、と笑う。「こいつは俺の知り合いだ。」オスカーが指さした先にはラースキンがいた。「だが奴はこの連中が・・・」そう言ってオスカーは評議員たちを差す。「消したんじゃないのか?」するとブルーショッツのボスが答える。「オザキが代わりにアカハネとかいう警官を差し出してきた。この警官は生きてる。」「そした、私にとって邪魔な存在だ。」と覆面男。「とにかく、消してくれ。居場所は分かってる。」との覆面男の言葉に頷くオスカー。「ああ、必ず消してやる。」そうして「調停人」とオスカーは固い握手を交わしたのだった。