薔薇鉄皮隊の真実
2019年 アメリカ共和国 ジャカシティ ジャカ警察
玄関で警官数名と保安官助手たちが言い争う様子をムンバク達は眺めていた。
「今は忙しい!帰ってくれ!」とわめく巡査に対して彼を押しのけながら保安官助手が言う。「おいおいあんたら、我々の捜査リストに載りたいのか?」すると別の警官が歩み出て周囲にいる保安官助手たちに指を突き付ける。「いいか、こっちだってあんたらを今すぐに逮捕できるんだぞ!」だがその時、保安官助手の間をかき分けてモラントンが現れる。「警部!」と巡査たちは動揺を隠しきれない。「私が招待したんだ。通してやれ。」巡査は戸惑いながらも、「はい・・・」と言い、保安官助手たちのために道を開ける。
「よし、行こう。」とダイムラーが言い、ムンバク・ダイムラー・ジュディの三人は車を降りる。
「何の用だ!今忙しいんだ!」と言ってデボンはモラントンを睨みつけた。「来客だ。」と一言だけ言うとモラントンはどいた。保安官助手たちが大勢入ってくる。「おい・・出ていけ!」デボンは動揺して叫び、彼の部下は抗議する。「モラントン、何をしてくれた!?」デボンは入り口に向かって怒声を浴びせるがモラントンの姿はなかった。「クソ!」デボンは大声で罵ると卓上の受話器を取り、署長室の番号を押した。
三日前 トルーマン州 コロンブス山
「お嬢様がお好きなワインでございます。」と言いながらがっしりとした体格の老人が白ワインを二つのグラスに注ぎ、キッチンに戻った。「ありがとう。」と言ってラースキンはワインを一口含み、笑みをアイリーンの方に向けた。アイリーンはぎこちなく微笑み、ビスケットを一枚とってベランダから見える景色を見つめる。「何がともあれ、君が無事でよかったよ。」とラースキンが言うものの、アイリーンは景色を眺めているだけだ。その目は少しうるんでいた。「どうした?」とラースキンは尋ねる。「ねえ、真実を話すわ。」と突然口を開くアイリーン。「ああ・・・」と驚きながら生返事をしたラースキンに対してアイリーンは話し始めた。
心配してくれてありがとう、ラースキン。私ね、ギャング共に誘拐された時にとても不安だったの。奴らの狙いは分からなかった。だけど、目が覚めたらギャング共はいなかった。でも私は椅子に縛られてうす暗い場所にいたの。そして目の前に・・・あのいまいましい男がいた!野蛮な強盗の癖にご立派な屋敷に住んでいるあいつにね。そう、ロンドよ。不動産王の顔を持つ強盗。「あんたが気に入ったよ、アイリーン。」と言って奴はあのガサガサした手で私の髪の毛をつかんだ。思い出すだけでも肌がかゆくなるわ。それから奴は・・・私をレイプした。数十年前のようにね。だけど野蛮さは薄れていたわ。数十年前にはレイプした女を焼いて殺したけど今回は違ったから。「いいか、今夜のことは秘密だぞ。」と奴は言って私にあの気色悪い甘い臭いの薬をかがせたのよ。私は気を失いかけたけど、奴の部屋に入って来た別男の声なら覚えているわ。そう、あの声はカーナックだった。裏社会の大物たちの間に潜んで儲ける卑怯者よ。カーナックはロンドに愚痴ったわ。「あんた、どうしても女が欲しかったんだな。ギャングどもを説得するのに大変だったんだぞ。」ロンドは私をギャングにさらわせた黒幕のくせにこういうのよ。「ギャングだと?女をあのカジノバーから盗み出すだけだろ?」カーナックはこう答えたわ。「女はホーバンの地下格闘技場に移動したんだ。そして、彼女はあいつのお気に入りだ。」私は気絶する寸前、全て悟ったの。私がとあるカジノバーで働いていた時にロンドは常連だったわ。思えばあのときから奴は私を嫌らしい目つきで見ていた。ずっと狙っていたのね。カーナックを通じて誰かに私を誘拐させようとしたらしいわね。だけど、カーナックは私が地下格闘技場の接待係に移動したことを知ってギャング共を雇ったって訳。でもね、奴らは不運ね。昔みたいにレイプした相手を殺しておけばよかったのに。そう、私は地下格闘技場の裏手で目を覚ましてからすぐ復讐の準備をしたわ。だけど無論私はか弱い女。一人で復讐はできない。だからね、マイクにやらせることにしたのよ。私は彼が復讐したがっているロンド、カーナック、そしてホークの情報も渡したわ。マイクはこの三人に恋人をレイプされて殺されて、かつ体を焼かれたの。マイクと私の関係性だけど、それは正直説明が難しいわね。マイクと私に直接の繋がりはないわ。父とマイクは親しかったみたいだけど。三人の変態怪物の放った炎を生き延びたマイクを父は保護した。あの三人から守るために。私と兄と母が当時住んでいたフランスに連れてきた。祖父が父からマイクを預かった。さてと、で私がマイクを動かせた理由を話さないとね。さて、祖父も母も亡くなった時に私と兄は父に連絡をとったけど消息不明だった。父はクラブの経営者で、裏社会の人間だから何かに巻き込まれたのかもしれないわ。今も行方はわからない。でも私たちには新しい保護者ができた。祖父の知り合いよ。その男性は私たちを養子として「カンパニー」に迎え入れてくれた。「カンパニー」と呼ばれる場所には彼の部下たちがいた。皆親切だったわ。まあ裏では皆強盗とかしていたけどね。そう、「カンパニー」は犯罪組織だったのよ。でもいい人達よ。彼らは私たちだけでなく、マイクも保護したの。兄と私とマイクは「カンパニー」の中で育ち、彼らに育てられた。でも、あるとき「カンパニー」のリーダーは単独でストリートギャングの縄張りに入り込んで撃たれてしまった。彼は勇敢だったのね。死ぬ間際、彼は私たちの家の財力で組織を成長させてくれという遺言を残したの。兄と私は組織を継いだ。マイクの保護は継続した。兄は優秀な経営者気質があった。兄は組織を急成長させ、フランスで最も大きい組織にしたの。でも兄の野望はとどまるところを知らない。兄は「カンパニー」を国際的な組織に成長させようとした。そのために私たちは世界中の犯罪組織と交流した。無論このリムソンシティにも繋がりを作った。私はこのネットワークからマイクの復讐相手の情報を得ていた。だけど、兄には冷徹な一面もあった。ロンドもカーナックもリムソンシティの裏社会が機能するために必要だと言うの。ホークはその頃とっくに落ちぶれていたけど、もしマイクにホークの殺害許可を出せばホークから得た情報を使ってマイクは他のロンドとカーナックをを殺すだろうと兄は考えていたみたいね。でも、私がレイプされて事情が変わったの。私はマイクに二人を殺させた。組織の殺し屋を使ってもよかったけど、私はマイクの気持ちを知っている。マイクがどれだけつらいか。その気持ちをはらしてあげるためにも、情報屋として既に送り込んでいたマイクに情報を渡したわ。
「そう、私が連続殺人に関わった犯人よ。実行犯はマイクだけど、教唆犯は私。そう、それと・・・ラースキン、あなたに嘘をついていたことを謝らなければいけないわ。私の本当の名前はアイリーンじゃない。私はテーヌ。今話題の薔薇鉄皮隊の女首領よ。」
二週間後 ジェファソンシティ シティホール
モレコフ報道官に対して記者たちから次々と質問が飛ぶ。モレコフは司会者に合図をした。司会者は「こちらで指名させていただきます。」と大声でマイクに向かって叫び、記者たちは静かになる。
「アメリカン・ポリティカル・ニュースです。今回の海外過激派への武器横流し事件についてホワイトキャッスルの関与はないということですが、監督不足は認識しておられますか?」「ええ、先ほども申し上げましたようにヘスリーは軍上層部の改良だけでなく、ペンタゴン上層部の役員を一新する予定です。また、自身の進退について民主共和党の定例会で幹部と話し合いを重ねる予定です。次の方を指名して。」
「ファクトオブアメリカです!今回の件については国連も注視しているはずです。国際社会についてはどう説明なさるつもりですか?」「はい、お答えいたします。この件についてヤーナ事務総長が来週にも緊急会合を行うことを先ほど発表しました。大統領自らがこの会合で詳細を説明すると同時に、米ロ首脳会談・米中首脳会談を行って関係改善をはかっていく予定です。また来月行われるEUの会合にバース外相を派遣することを検討中です。」「はい、では次・・・」「すまないがヘンリー、そろそろ時間だ。」と司会を制止する報道官。「承知しました。皆さま、本日は臨時の記者会見にお越しくださいましてありがとうございました。」「どうもありがとう。」と言って報道官は足早に裏口に待機させている車に向かう。大勢の記者たちが競うように後を追う。「待って下さい、報道官!」「まだ説明責任を果たしていません!」「大統領が会見を行う予定は?」報道官はそういった質問にも答えずに車に乗り込む。
報道官は携帯を取り出した。「やあ、君の記者会見を見たよ。」「やはり座長は御覧になっていましたか。」「うん。私が株主を務めるメディアは多くあるのでな。表向きには知られていないがね。」報道官は苦笑する。「それで、ヘスリーの様子はどうだね?」「ふん。あの男はバカでしょうなあ。ファットに全てを任せた結果、今は自分が破滅しようとしている。」「ああ、あいつはバカだよ。あいつの前任者と違ってな。まあ、あそこまで賢かったらむごい手を使って消すしかなかったがね。はははははは・・・」座長の不気味な笑い声が聞こえるが、報道官もそれに合わせて笑っている。「ところで座長、そろそろ・・・・」「ああ、分かっておる。薔薇鉄皮隊から準備が整ったとの連絡が来ている。」「ほう・・・この段階でもうペンタゴンの連中は不要ですね。」「ああ、もちろん。ヘスリーとファットの好きなようにさせてやろう。そして君も不要だ。」「はい?」そういった次の瞬間、前の席に座っていたボディガードがピストルを向ける。運転手は平然と運転している。「ではさようなら、モレコフ君。」そう言って電話が切れるのとボディガードの持つピストルから弾丸が発射されるのが同時に起こった。
五日前 リムソンシティ ホーネット地区 地下格闘技場
「あんたの上司の知り合いだ。ラークっているだろ。俺はあいつのダチだよ。」とオスカーは入り口の用心棒に対して説明する。用心棒は「少し待ってろ。」と言うとトランシーバーに話しかける。「オスカーという白人男がいますが、通してよろしいでしょうか?」向こうから返事が返ってくる。「ラークにそんな知り合いがいた。通してやれ。」
「久しぶりだな、オスカー!」ラークは立ち上がるとオスカーに笑いかけ、傍らに侍る女たちに言う。「少し外してくれ。また後で楽しもう。」「分かったわ、王子様。うふふふ・・・」女たちは流し目を送ると笑い合いながら散り、金持ちそうな男性を探している。オスカーは少し警戒しながらすすめられるままに腰を下ろし、「随分出世したようじゃないか。」と言う。ラークは黒い高級スーツに身を包み、二人の屈強な用心棒を後ろに立たせていた。「そうなんだよ。この格闘技場をホーバンの手下から買い取った黒人評議会が俺を警備主任に任命してくれたんだよ。ボスの口利きで。」「黒人評議会か・・・・」と言いながらオスカーは少し考えた。「噂には聞いていたが、本当に結成したんだな。」「ああ。俺ら黒人はサン・リドル地区内でいがみあっているけど、本来は団結すべきなんだ。」とラークは熱を帯びた口調で話を進める。「ハイチ人、ソマリア人、ラキア人である以前に俺らは黒人だ。今、イタリア人は大規模なネットワークを作っている。チカーノの連中は潤沢な金を持っているし、麻薬のルートも確保してある。中国人と日本人は独立した街をそれぞれ牛耳っている。だが俺ら黒人はどうだ?あの狭い土地で下らん小競り合いを繰り広げているだけだ。こんな調子では成長しないだろ?」「なるほどな。あんたのボスは賢いな。」「ああ。俺らのボスはサン・リドル地区のすべての黒人組織を説得した。」「ほう、そりゃすげえな。だけど皆よくあんたのボスの話を聞いたな。仲介者がいたんじゃねえか。」いきなりラークの表情が固くなる。「どうした?」「あー、雑談したいところなんだけどよう、出世しちまったせいで忙しいんだ。本題に入ってくれると助かる。」オスカーはにやり、と笑うと言う。「実は最近殺しの依頼が少なくてな。あんたのボスたちにやとってもらえねえか?」オスカーの表情は再びくだけたものになる。「いいぜ。たぶんこれから先消したい奴らは増えてくるだろうよ。まだ採用決定じゃねえが、評議会にかけあってみるよ。」「ありがとう、恩に着るぜ。」と言ってオスカーは立ち上がる。「じゃあまたな。」と言ってラークは女たちを呼び戻すよう近くにいたウェイターに命じた。
「ふう、ひとまずOKか・・・」外に出たオスカーはつぶやいた。
五日前 ジャカシティ バイリン地区 カジノバー「パペット」
男はオーナーから金を受け取った。「売上は順調に伸びているようだな。」「ええ。ディーラーたちがうまくやっているようです。」とオーナー。「そうだな。ボスにも報告しておく。あんたの上層部入りも夢じゃねえぜ。」オーナーは深々と礼をして感謝の意を示す。
バーの内部には、無秩序にマシンやテーブルが配置され、様々なゲームが従業員の主催のもと行われている。それらの間を酒や軽食を配る華やかな色のドレスを着た女たちが歩き回る。近くのステージの上では半透明のドレスを着た女性たちが隣で歌うDJの音楽に合わせて激しく体をくねらせている。
しかし、その華やかな雰囲気をぶち壊すような大声が響き渡る。恐らく拡声器を使っている。「おい!ジャカシティ保安官事務所だ!捜査に協力してもらおう!」「待ってくれ!閉店後で・・・」用心棒が保安官助手たちを外に出そうとする。「安心しろ。客には用はないし、給仕係にも用はない。ここのオーナーに用がある。」
用心棒が困り顔で入ってきてオーナーに言う。「バイスさん、実は・・・」「どうも、ジャカシティ保安官助手のラドクリフです。バイスさん、少しお話が・・・・」「おお・・バイス君、どうかしたのかね?」とぼけたように金を受け取った男が言う。「ああ、あなたにもお話が。」ラドクリフ。男は「何だって!」と叫ぶと青ざめた顔で椅子に座る。
外には保安官の車が停まる。運転席には保安官、助手席にはモラントン警部、後部座席にはムンバク一行が座る。「地元でも有名なカジノバーでしてね。我々といがみあってきましたよ。何しろ指名手配中の人物の何名かはこの場所にかくまわれていると言う噂がありましてね。」と苦笑いしながら保安官。「ああ、そのようですな。恐らくオーナーが犯人を知っていると思われます。ムンバクさん方、もしかしたら今回の聴取で犯人が分かるかもしれませんよ。」とモラントン。「ああ、そのことですが・・・あなた方はお帰りいただきます。」「何ですって?!」とジュディが叫ぶ。「当然でしょう。この方々は一般人です。捜査は我々だけで。私が送りますよ。」ダイムラーが小さく「卑怯者・・・」とつぶやく。
30分後 ジャカシティ保安官事務所
事務所内の取調室では保安官助手が下を向くオーナーを詰問している。「あんたに殺人または教唆の容疑がかっているんだ。」「し、知らない!」「マーガレット殺人事件は知っているな。」「あ、ああ・・・」「彼女は・・・」「う、うん・・・分かってる。私の店で働き始めた。」「な?彼女の来歴は調べたか?」「来歴も何も、彼女は・・・」と言ってからオーナーは口を押える。「ん?言えよ。」と取調官。「それは・・・」「もしかして前の職場を知ってるか?」「あ、ああ・・・」と言って渋々オーナーは話す。「俺の雇い主の属する組織の女だ。」「何!?」「俺と一緒に捕まった男はなんらかの組織に属している。その組織の管理下にある場所で働いていたんだ、マーガレットは。殺された理由は知らない。本当なんだ!信じてくれ!」
隣の取調室。オーナーと共に捕まった男が「あんたがマーガレットさんを殺害したのか?」「どうだかな。」と下を向いて薄笑いする男。「まあいい、あんたは多分殺し屋を使っただろう?殺し屋もあんたも豚箱行きだ。奴は今どこにいる?」「あんたはどう思うか?」「ふざけるな!質問に答えろよ」「黙秘する。俺にはその権利がある。」「ほうほう、そうかい・・・」そう言って取調官はマジックミラーの向こうに手を振った。即座に扉が開いて木製のバッドを持った大きな男が入ってくる。「これでも口を割らねえか!」と大男。だが容疑者の男は笑顔を浮かべて「やあ、強そうだな。用心棒として雇ってやろうか?」と言うだけだ。
同日 ジェファソンシティ 連邦警察本部
アン組織犯罪対策局長はハリーからの電話を終えると、溜息をついて総監を振り返る。「どうしたね?」「ハリーから連絡が来まして、増援を・・・」「ああ、構わんよ。」と総監は簡単に言う。「え?」と拍子抜けするアン局長。「どうしたね?もしかして私が増援を許可しないとでも?」「いえ。そういうわけでは・・・」「まあいい、徹底的に薔薇鉄皮隊を追い詰めろよ。」そう言って総監は出て行ってしまった。「何かあるわね・・・もしかして・・・」アンはテーブルの上の新聞を手に取る。そこには大きな見出しで「共和国軍内部から武装勢力への武器供与か。大統領も認める。」と書いてある。「軍幹部が逮捕されたからかしら?」とアンがつぶやく。そして、電話機を見つめると再び受話器を取ってハリーにかける。新たな可能性についての推測を伝えたのだ。
一か月後 トルーマン州 コロンブス山
ラースキンは自分の状況を理解し始めていた。今、彼は薔薇鉄皮隊の首領であるアイリーンによって監禁されているのだ。武器の携帯もアイリーンの使用人に預け、また常にアイリーンが近くにいる状態だ。アイリーンが優しい口調で説明してくれたのだ。
私の兄はあなたを殺そうとしていたわ。殺し屋ボックスマンも本来はあなたを殺す予定だった。だけど私が兄を説得したわ。兄の計画を邪魔しなければ彼はあなたを殺さない。兄の計画については話せないわ。私が薔薇鉄皮隊の首領だとあなたに打ち明けただけでも兄からしたらかなりまずいのよ。私はそのことを兄に話していないけど、兄が知ったら確実にあなたを殺そうとするでしょうね。私はあなたを愛しているの。兄が今回のプランを成功させるまではあなたはこの家の中にいなきゃいけないのよ。」
ラースキンは溜息をついてハンモックに横たわる。目の前の椅子に座るアイリーンはラースキンに微笑み返す。
使用人が入って来た。ボックスマンを連れている。「あらま、ボックスマン、どうしたのかしらね?」とアイリーン。ボックスマンは溜息をついて言う。「俺のボスが逮捕されただろう。だけど俺は逃げ切った。あんた、かくまってくれよ。」「ボックスマン。それは出来ないわ・・・キャッ!」アイリーンは叫ぶ。ボックスマンがピストルを向けていた。「俺は直接あんたと組む。あんたと俺の間にいたボスがいないからな。俺をあんたの組織の正式な構成員にしてくれ!」