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第二話 失望

毎日投稿の予定です!


拙い文章ですが、楽しんでいただけると幸いです!


「お、おい!精霊王の『加護』って!」


「あぁ、長い歴史の中でも、数少ない者しか与えらえれていない、『伝説の加護』だろ!」


「それを、二つももっているなんて……」


「間違いない!あいつは、天才だ!」


「いづれ、この国のトップに立つ男だ!」


 いたるところから、ハルを称賛する声が聞こえる。そんな中、俺は、静かにハルを見つめる。強力な『加護』が手に入ったことで、ハルの顔は喜びに満ち溢れている。そして、ハルが俺のもとに戻ってきた。


「やったよ、レン!精霊王の『加護』だって!」


「あぁ、おめでとう」


「次は、レンの番だね!」


「どう頑張っても、お前の後にいい結果が生まれないから、憂鬱だよ」


 軽口をたたきながら、俺は呼ばれるのを待つ。


「レン、前へ」


 そして、神官に呼ばれた俺は水晶の前に立つ。周りは、俺のことよりも、ハルの方が気になっており、今も、早いうちに関係を築こうとしているのか、話しかけている者もいる。


 それを片目に、俺は水晶に手をかざした、次の瞬間


 水晶が真っ暗に染まり、大きな音を立てて、粉々に砕けた。


「なっ!?」


 破砕音と神官の驚いた声に、周りの者は、何事かとこちらを見る。水晶が割れた、など、俺含め、ここにいる者たちは聞いたこともない。俺が戸惑いながらも、神官の言葉を待っていると、


「……レンよ、そなたに『加護』は存在しない」


「えっ……」


 告げられた言葉に俺は愕然とする。


「ど、どういうことですか!」


 たまらず俺は神官に詰め寄る。それに対し、神官は顔を歪めながら、答える。


「教会の教えにはこのようなものが存在する」


 ーー水晶が、黒く染まりしもの、神から見放されし者なりーー


「それって、つまり……」


「『加護』は神から与えられるもの、しかし、お主は神から見放された、よって、『加護』は存在しない」


「そ、そんな……」


 結果を受け入れない俺は、その場に膝から崩れ落ちる。すると、


「ハハッ!無様だな、レン!」


 後ろから、俺を小馬鹿にした声が聞こえる。俺は振り向きながら答える。


「……ガイアか」


 俺よりも少し体躯のいい男が、こちらを見つめていた。彼の名前はガイア、この町の悪ガキ集団の頭である。ことあるごとに、俺やハルのことを馬鹿にしてきた、嫌な奴だ。


「ざまぁねぇな!『加護』がないんじゃ、お前の夢、『勇者』になる、なんて絶対に無理だな!」


 そう言いながら、ガイアは大笑いする。そして、それを聞いた周りの者は、


「え、『勇者』?『加護』もないのに?」


「夢を見すぎだろw」


「あ、確か、あいつ、さっきの天才と、どっちが『勇者』になれるかの勝負をしている奴だぞ」


「は?勝負するまでもないじゃんw」


 嘲笑、それが俺を包む。そんな中、ハルだけは俺を見つめるだけ。目が合った俺は、ハルのもとへ向かう。


「……すまん、ハル」


 なぜか口から出たのは謝罪だった。それに対し、ハルは無言。


 すると、同じローブを纏った複数の人間がこちらに向かってきた。ローブに刻み込まれた紋章は、剣と槍が交差し、中央には獅子の顔が置かれている。


「お、おい!あれって!」


「王国騎士団の紋章だ!」


「「!」」


 それを聞いた俺たちは驚愕する。こんな王都から遠く離れた町に、普通、騎士団はいないはず。いったいどうして?


「失礼、ハル君、であってるかな」


「は、はい!」


「私は、王国騎士団の、ベレンという」


「べ、ベレンさんは一体、どうしてここに?」


「なに、任務の帰りに少し滞在させてもらっていてな。ちょうど『加護の儀』があると聞いて、見させてもらっていたのだ」


「な、なるほど」


「さて、ハル君、相談なのだが、我が王国騎士団に特別入団するつもりはないかい?」


 ベレン、と名乗った男が告げた内容に、俺たちは驚愕した。


 本来、王国騎士団とは、試験を受け、合格した者が入団できる部隊である。しかし、稀に騎士の推薦により、特別入団する例もある。特別入団で入団するのは、類稀なる才能を持っていると判断された者だけであり、ハルはその一人に選ばれたのだ。


 皆、俺に対する興味は失せ、ハルと騎士のやり取りに耳を傾ける。


「ぼ、僕なんかが、特別入団出来るんですか!?」


「もちろん、二つの精霊王の『加護』なんて、逸材に決まっている」


「じゃ、じゃあ!よろしくお願いします!」


「あぁ、よろしく」


 そう言い、二人は握手し、周りからは大きな拍手と歓声。それを見つめていた俺は、思わず問いかける。


「あ、あの!」


「ん?君は確か……」


 ベレンは、憐れむような顔でこちらを見てくる。しかし、そんなことはどうでもいい。


「……『加護』がなくても、騎士団には入団できますか?」


「……残念だが、騎士団に入るには、最低、中級以上の精霊、もしくは、それと同等の強さをもつ『加護』をもっていなければならない」


「そうですか……」


 一縷の望みを断たれた俺は、なんとか絞り出した声で返事をすることしかできなかった。


「レン……」


 ハルは、苦しそうに俺を見る。そして周りから送られるのは、侮蔑の視線。それに耐えながら、俺はハルへと言葉をかける。


「王国騎士団入団おめでとう、ハル」


「あ、ありがとう。でも、レンが……」


「俺はいいんだよ、才能がなかっただけだ」


「そ、そんなことない!レンは誰よりも才能があるよ!」


「それは、今まで、ハルが俺としか訓練をしていないから、そう思っているだけだ」


「違うよ!レンは!本当に、本当に強いんだ!」


「ハル、慰めはもういい」


「慰めなんかじゃないよ……!」


 目に涙をためながら、こちらを見るハル。


「『加護』によって強さが決まるこの世界で、『加護』のない俺は間違いなく最弱だ」


「そんなわけ…!」


 ハルが何かを言おうとしたが、俺はそれを遮り、続ける。


「だけど、俺は、『勇者』になるのを諦めない」


「ッ!」


「いつか、お前に追いつき、そして、お前を追い越して、『勇者』になってみせる」


「レン……」


「だから、先に進んでいてくれ」


 ハルが、目を見開き、こちらを見つめる。


「俺は、そこで、お前を追い越してみせる」


 その言葉を聞いたハルは、少しの間、俯いていたが、顔を上げ、口を開く。


「……うん、分かった。先に行って、待ってるよ」


 瞳に大きな信頼を映して、ハルはこちらを見つめる。


「ありがとう……」


 お礼を言った俺は、目からあふれるものを見せないように教会から走り去る。


「……()はお前が弱いなんて、一度も思ったことなんかないよ」

 

 

 レンが走り去る姿を見ていたハルのもとに、ガイアがやってくる。


「よぉ、ハル、お前も大変だなぁ」


「……何が?」


 これまでと、全く異なる低い声で答えるハル。それに、驚いたのか、ガイアは一瞬、ひるんだが、続ける。


「あんな無能のくせに、『勇者』を目指す奴に、ライバル視されて大変だろ?」


「……」


「な、なんだよ!」


「ガイア、君は馬鹿なの?」


「は?どういうことだよ?」


 何の脈絡も無く、馬鹿呼ばわりされたガイアは、思わず、疑問を口にした。それに対し、ハルは淡々と告げる。


「レンは、僕の()()()()だよ、否定はさせない」


「なっ!」


 告げられた内容に、ガイアは驚愕の声をあげる。なぜ、ハルは、あんな奴をライバルと認めているのか、ガイアは理解が出来なかった。すると、ハルがそれに気づいたのか、付け加えるように告げる。


「表面の強さしか見ていない人には、一生、理解できないよ」


 そう言いながら、ハルはそこから立ち去った。


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