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第一話 始まり

初長編です!


拙い文章ですが、楽しんでいただけると幸いです!


 とあるの森に存在する朽ち果てた神殿。その中心で、二人の子供が向かい合う。一人は短く切り揃えられた黒髪に引き締まった体躯をしており、手には木剣、もう一人は肩にかからない程度の長さの淡い茶髪でスラリとした体、手には何も持たず、ただ構えを取っている。


「いくぞ、ハル」


 木剣を持った子供が、ハルと呼ばれた子供に話しかける。


「うん、準備は出来てるよ、レン」


 ハルは答えると同時に、手のひらに小さな風球を生み出す。対して、レンと呼ばれた子供は、一瞬、白光を纏ったが、すぐに、元の状態に戻った。そして、レンが踏み込んだ、次の瞬間、


 すさまじい突風が吹き荒れ、地面が割れた。


 一足で、ハルの目の前まで移動したレンが、木剣を振り下ろす。ハルは、その攻撃を風球を複数撃ち放ち、軌道をそらす。そして、足に風を纏わせ、一瞬で距離を離したハルが、追加の風球をレンの脇腹めがけて、撃ち放つ。レンは、最小の動きでほとんどの攻撃を避け、避け切れなかったものに対しては、木剣を横に薙ぎ、切り伏せる。


「相変わらず、凄まじいね、レンの強化魔法。普通、木剣で魔法は切れないよ」


「そういうハルだって、風魔法しか使ってないだろ」


「炎魔法は、余波で森を燃やしてしまうかもしれないからね」


 構えは取ったまま、ハルは続けて、口を開く。


「そういえば、いよいよだね」


「あぁ、『加護の儀』のことか?」


 『加護の儀』

 十五になった子供が、教会で神より『加護』を与えられる儀式。『加護』とは、いわば才能。例えば、下級精霊;炎の『加護』だと、小さな炎を生み出すだけなのに対して、上級精霊:炎の『加護』だと、巨大な炎の球を生み出し、一撃で百を超える魔物を倒すことが出来る。


「うん、レンはどんな『加護』が手に入ると思う?」


「さぁな、俺はこの、強化魔法しか使えないからな、そこまで、強力な『加護』が手に入るとは思えないな」


「そうかな~」


「むしろ、俺含め、町の皆はお前の『加護』の方が気になっているぞ」


「レンの方が強いのに……」


「よく言うよ、世界でも数少ない、二属性持ち、のくせに」


「まぁ、そうだけど……」


 この世界には、魔法が存在しており、多くの者は、炎、水、風、土の基本四属性のうち、一つの属性魔法が使える。例外として、レンが使う強化魔法といった、無属性に分類される魔法や、光、闇といった、特殊な魔法も存在する。


 しかし、極稀に、ハルのように、複数の属性を使える者が現れる。そういう者たちを人々は、所持する魔法の数に合わせて「〇属性持ち」と呼んでいる。


 基本、持ち主の属性と同じ属性を持った精霊の『加護』が与えられる。一説では、人々が魔法を使えるのは、生まれながらに、『加護』の「種」のようなものが宿っているからではないのか、と言われている。


 ハルに大きな期待がかかっているのは、歴史上、複数の属性を使えた者たちは、強力な『加護』を持っており、ハルもそうなのでは、と思われているからだ。


「俺としては、ハルがもし強力な『加護』を持っていたら、嬉しいぞ」


「どうして?」


「ライバルが強かったら、燃えるだろ?」


 レンはそう言いながら、獰猛な笑みを浮かべる。それに対し、ハルは、


「そうだね、僕たちはライバルだからね」


 レンとは違い、穏やかな笑みを浮かべているが、その目はレンと同じぐらい燃えている。


「覚えていたんだな」


「そりゃそうでしょ、僕たちの始まりなんだから」


 当然!と言わんばかりに、ハルが答える。


「どっちが先に『勇者』になれるかの勝負でしょ?」


「あぁ」


 『勇者』

 王国において、最も偉大な騎士に受け継げられる称号。

 かつて、たった一体で世界を滅ぼしかけた、巨大な翼に尻尾、鋭い爪と牙を持った、伝説上の存在、『竜』。それに対し、たった一人で立ち向かったものがいた。その者は、()()の魔法を駆使して竜と対決。戦いは三日間続き、最後は強力な魔法によって、竜は討伐、人々は竜の脅威から救われたのだ。国王は、その者に対し、最も勇敢で、偉大な騎士とし、『勇者』の称号を授与。以来、『勇者』の称号を受け継いだものは、その称号に恥じない力を示し、人々の平和を守り続けてきた。


 二人は、ある日を境に、『勇者』を目指すようになり、どちらが先に『勇者』になれるのか競い合っているのだ。


 そんな彼らにとって、この『加護の儀』は、重要な行事である。『勇者』としての力を示すためには、王国の騎士団に入団し、そこで実力を示す必要がある。そして、騎士団に入団できるのは、限られたエリートだけ。二人は、これまで、誰よりも努力してきたが、だからと言って、強力な『加護』が与えられるとは限らない。


 しばらく話し込んだ二人は、再び、訓練を再開し、しばらく続けた後、二人は町に戻るために神殿から立ち去った。



 そして、数日が経過し、遂に、『加護の儀』の日を迎えた。


「いよいよだな、ハル」


「そうだね、レン」


 『加護の儀』は、町の教会にて執り行われるため、二人はそこへ向かう。そして、教会に到着すると、


「やっぱり多いなぁ」


「そうだね、町中の人が集まっているからね」


 いたるところで今か今かと待っている子供たち、中には、親と一緒に来ているものもいる。すると、教会の入り口が開き、中から、数人の神官が出てくる。


「今から、『加護の儀』を執り行う、名前を呼ばれたものは前へ」


 そして始まった、『加護の儀』。多くの者は、下級精霊の『加護』を受けており、たまに、中級精霊の『加護』を受けたものが現れると、盛り上がりを見せる、というのが続き、しばらくすると、残すは俺たち二人となった。


「ハル、前へ」


「は、はい!」


 最後は俺か、と思いながら、神官のもとへ向かうハルを見る。


 神官が、水晶に手をかざすようハルに告げる。そして、ハルがかざし、その結果を確認する神官。すると、


「こ、これは!?」


「信じられませんぞ!」


「まさか、本当に存在するとは!」


 神官たちが、騒ぎだした。何事かと思いながらも、俺達には結果が分からず、神官の言葉を待つのみ。そして、落ち着いのか、神官が口を開く。


「ハル、そなたの『加護』は二つある」


「「「「「!?」」」」」


 その言葉を聞いた多くの者が動揺する。原則、『加護』は一つであるにも関わらず、ハルは二つ、持っているのだ。驚くな、という方が無理である。


「え、えっと、僕の『加護』って……」


 自身の『加護』が気になるハルは、神官に続きを促す。


「うむ、そなたの『加護』は、炎の精霊王、サラマンダーと、風の精霊王、シルフィードーの『加護』である」


 神官がそう告げた瞬間、いたるところから歓声が沸き上がった。


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