(74)春の兆し
寒さにも慣れてきた頃。そろそろ冬明けの季節だという事を聞いた。寒さが落ち着いてきたら旅も再開するか。
「なんか冬明けの風物詩とかないのかな?」
「桜みたいな?」
「それは見てみたいよね」
「スライムの大繁殖とかじゃない?」
「あり得る」
この世界は四季はあるが、風物詩を楽しむ感性があるのかは謎だ。
「まぁ、今度の目的地は港町だよな」
「そうですね」
「お魚が美味しいのかな?」
「魚醤に興味あるんだよね。美味しいのかな?」
「お金はどうなの?」
「どうにかなる位には溜まったよ」
「薪を売ればそこそこ入るかな?」
冬で結構節約できたので、港町で魚を料理できるだろう。あー、寿司食いたい。醤油をたっぷりつけて美味しくいただきたい。今は味がしないんだよな。もう少し進化できれば味も感じられるだろうか。
最近はレベルも上がりにくいし、あの時ヒューマになっておけばよかったかな?
「寿司か、私はラーメンが良いな」
「私は味噌で」
「俺は醤油だな」
「なんか話が変わってません?」
「そうだよ。麺と焼豚が無いんだスープだけってのも味気ないよな」
「それはラーメンじゃない」
「まぁ確かに」
あー、俺も味を知りたい。この体は味が分からないから退屈だ。
「港からは別の大陸とかに行けるのかな?」
「知らん」
「行ってみれば、分かるでしょ」
お土産とかがある訳じゃないし、あっても送る相手がいないしな。
「まぁ、春なら漁船も出始めるな。それに商隊の護衛依頼が二週間後にあるらしいからな。それに乗ってこの街を出ていくか」
「よし、この期間に服も買えたし、依頼の日まで待ったりしているか」
「おー」
その日は迷宮の自室でのんべんだらりと過ごすのであった。




