(73)サザナミが動く(その3)
魔法使いの相手は苦手なので、サザナミは一旦排水溝に入って、レバーを引いて仕掛けを作動させる。レバーを作動させると、部屋の三方の壁が崩れて他の部屋とつながる。その先には大柄な体格をして包帯を巻いた大男が三人入ってくる。
「んだよ、これっぇ!」
タンク役に襲い掛かるそのミイラは姿形は人間だというのにその力は人間以上であった。加えて、能力も厄介である。その包帯がどんどん巻き付いていき、組みつかれるだけで動きが制限される。
ミイラはタンク役をぶん殴り、吹き飛ばすと同時に排水溝からサザナミが後ろから出現しサポート役を抑え付ける。コクヨウが上から肉球で鎧ごと叩き伏せたので、タンク役も助けに入れない。サポート役は失せる意識の中、人の笑い声の様なモノを聞いて意識を落とした。
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俺がサザナミ用に生み出していたミイラたちは別に人間の死体からできた訳じゃない。迷宮の能力で作れたのでそれを使わせている。何度も言うが、人間の死体は使ってない。この迷宮では人は死んでないし、魔人も死んでない。
将来的には死ぬことにはなるかもだけど。死人が出て来る迷宮なんて言う、趣味の悪い物を作る気はない。
俺もサザナミ達の部屋に行こう。
「それで、この三人はどうするんです?」
「んー、ふむ、タンクは男でそれ以外は女か」
「武器と鎧も壊れちゃってますね」
「ふむ、負け犬にはそれにふさわしい装いというのがありましてね。それをやってみたいのですよ」
そんな事をサザナミが言うので、敗北者の扱いは任せることにする。
みんなで待つこと数分後、サザナミがぶっ飛ばした三人をデコレーションして、縄で括りつけて引っ張ってきた。
「防御力はそこまで変わってないみたいだ」
「武器の方も前と同じかそれ以上」
「怪我も治ってるな」
損害の少ないタンク役から見ていこう。
一番変わったのは鎧だろう。胸には犬の顔が彫られていて肩当にも同じく犬の顔が彫られている。というかいたるところに犬の顔が彫られている。これがシェパードとかならまだいいだろうが彫られているのはチワワにトイプードル、ブルドックに土佐犬なんかだった。
「可愛くできたでしょ」
「えろ~い」
「エロ~い」
サザナミが自慢げに掲げたアタッカー役の女性はバニースーツに着替えさせられ、腰には大きいベルトがまかれてそこにはステッキ状の仕込み杖が刺さっている。頭にもちゃんとうさ耳が着いているし、腰にもフワフワの尻尾が着いている。
「こっちは?」
「名付けて、お家デートの中掃除中のズボラ彼女!」
サポート役の女性は雑に纏められた髪に、黒縁の大きめのレンズが着いた眼鏡を付けている。服はシャツとスパッツの上から大きめの白Tシャツを被せられている。靴はサンダルで杖の代わりに先端に魔法増幅用の魔石が埋め込まれた箒を持たされている。
「職人のこだわりを感じますなぁ」
「というか、これどうしたの?」
「私は裁縫もできるし、最近は鍛冶の街に言ったことで鍛冶技術も身につけたのだよ」
「原料はこいつらの装備と鍛冶の街での端材か」
別に作るのは構わないだろうが、これは何処かで脱がれてしまうモノでは? そこんとこを聞いてみた。
「心配、ご無用。これには呪いが施されていて一週間はこれを装着していないと他の衣服がはじけ飛ぶ仕組みになっているのだ」
「無駄に高性能な技術だな」
「前にポイントで付与装置を作ったでしょう。それを使えば呪いも付与できる。それにちゃんと強化の効果もあるから無駄ではないのです」
「ネタ装備でも強いのってゲームによってはあったよな」
「あー、あったかもね」
コクヨウが同意を示してくれた。彼女もゲームとかやってたみたいだな。
「で、感想は?」
「鎧はダサい。女性陣は性癖に刺さるのはいるだろうね」
「バニーはともかく魔法使いの彼女は可愛らしいですね」
「普段ガサツでこういうのを着なさそうな女がこういう形の服を着るっていうシチュエーションが良いよね。ズボラ風とメガネっ子の合わせ技は良いと思うよ」
「こういうのはTシャツのイラストがクソダサいとポイント稼げますからね。そこが抜けているのは減点対象だね」
なんか性癖発表みたいになったな。だが、俺もTシャツのイラストがクソダサいなら大幅な加点ポイントだった思う。
「今からでも何か書こうかな?」
「キノコと猫にしようぜ」
「どんな組合わせですか」
「絶妙にダサい」
「まぁ、合わないよな」
という訳で、サザナミが松茸にじゃれるキジトラ猫の絵を描いてきた。うむ、これはダサい。さて、用事も終わったし外に放り投げるか。




