(27)荒野の決着
ガチムチカブトムシの眉間に杖は刺さったがまだ生きてる。しかし、高速移動はしないっぽい。今なら、殺れる。怪人態に変化、全力で大剣を振り抜く。
「ゴオオァッ!」
クソ、腕だけか、胸を逸らされて胴体への直撃を避けられた。
「ワカバ、サザナミ、足にしがみつけ!」
ワカバとサザナミが奴の足にしがみ付いて一ヵ所に固定する。避けられるのなら機動力を下げる。ワカバの掴んでいる足の根元に打ち込むと足がちぎれるが、奴はそれを捨てて離れた。片足でも高速移動は出来るらしい。俺は切った奴の腕と足をもって安全地帯に下がる。こうして切り離した部分は光の粒子にならないことは分かっている。
そして、これを喰う!
「うぇ」「おっおお」「ガァ」
三人娘に引かれているが、しょうがないだろ。これである程度生き残る可能性は上がったんだから。
奴はそこまで距離を取らずに大体200mの地点で佇んでいる。眉間の杖は取り去らい、腕と脇腹に生えていた二対の腕の内、左側の脇腹にあった腕と左足が無くなっている。バランスはとれておらず、地に膝まづいて呼吸を整えている様だ。
「多分、俺達が出たら一撃で仕留められる様にしてるんだろう」
奴の体勢は完全に突撃モードだ。出たら、殺られる。
「どうします?」
「刺し違えてでも、殺す。トップスピードは出ないようだけど、次は渾身の力来る。再生されて、今与えた致命傷が無駄になるのが一番まずい」
上でも何回か再生する奴等に当たったことがある。100階層分が1階層に纏まっているフロアで出て来る奴がそれを持っていないとは考えにくい。
やれる可能性があるならこっちも渾身の力で飛びだし、真正面から激突する。ただ、奴が今出せるトップスピードで来られるのも面倒だ。出先でつぶしておさえつける。奴の力に対抗できるのは俺一人だが、とどめを刺すのは俺じゃなくていい。
「俺は今から飛び出して奴に対抗する。何とか止めておくから、その間にお前ら三人でトドメをさせ」
「「はい」」「ガウ」
合図はせずにクラウチングスタートの体勢を取り、心の中でスタートのピストルを鳴らして走り出す。燃料切れ気味だが、背中のスラスターで加速して、何とか速度を出そうとする。
奴は全力を片足に集中して俺に向かって走り出す。避けても良いだろうが良ければ俺を逃がすことになる。俺を此処で逃がせば、今の奴は追いつけないと感じているから、真っ向勝負にかけたのだろう。
「ウオオオオォォォ!!!」
「ゴオガアアアァァ!!!」
奴の走り出しに近い位置で組み合う。俺の目的は奴を止める事、こうして抑えるのが一番の攻撃。俺の飛び出しと同時に、ワカバ達が飛びだして、骨ナイフや爪での攻撃、奴の呼吸器に張り付いての窒息を狙うなど、本気で奴の事を取る気で行く。
「ウ、ゥガァ」
斬撃が首に数撃打ち込まれ、首が落ちた事でやっと奴は死んだ。倒した、こっちに転生して初めての強敵だった。そんな気がする。体の力を抜いて、人間態に身体を戻す。奴の体も、光の粒子になって消える。
他の皆も疲れている。しばし、休憩だな、休んでいようぜ。
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少し休憩すると、先ず杖の回収。怪我の確認、治療を行い、カブトムシ戦の戦利品の確認。これは、
「靴かな」
「ブーツですね」
「ガウ」
サザナミやワカバには合わなそうな男物ブーツだ。しかし、俺は知っている。こういうのは履く人間のサイズに変化して装着しやすくなるファンタジー装備の筈だ。
「ワカバ、履いてみてくれ」
「え? はい」
困惑気味だが、普通に履いてくれるなんて優しい子だな。ワカバが足を入れると、スッポリと丁度良いサイズに変化した。
「おお、履き心地が丁度いいです」
「その辺少し走ってきなよ」
ワカバが言われるがままに走ると少しスピードが上がっているように思える。おお、アクロバティックな動きまで。凄いな。機動力が上がるとかそんな感じか。
あ、扉も出てきた。よし、次に行こう。




