(17)サザナミの知り合い
俺と同じ侵入者がいるであろう、方向に進んでいく。人間か野生の生物か、何であったとしてもここにいるのなら相応の手練れ、糧にしてやる。
「いたぁ~~!」
遠目に見えるはゴブリンとライオンに羽が生えた何か。対峙と同時にサザナミを置いて侵入者たちより前にでる。怪人態になり、サザナミも臨戦態勢を取る。いきなり出てきた怪人とスライムに困惑しているのか、戸惑っているゴブリンとライオン。
一撃で決める。相手には何もさせない様に、狙うは首。
「アオンッ!」
うおっ! サザナミが突っ込んで来た。なんだ、なんだ。
「フルルルルゥ!」
止めてる感じか、こいつらを攻撃して欲しくないって事か? あ、逃げてる。追わなくて良いのか?
おお、今度はあっちが前に出た、俺も逃げ道を封じるか。
「グゥウ!」
「ガルゥ」
ゴブリンは必死に威嚇しているが、ライオンの方は及び腰だ。いけないな、死ぬ最後の瞬間まで威嚇しておかないと。骨断剣を肩に担いで、殺す気は示さないけれど威嚇は続ける。
「グゥアウ!」
『ん? ああ、そこのゴブリンとライオン?ちゃんや話をさせてくれないか?』
外にいた時にゴブリンを吸収して得たゴブリン語で話してみる。
「な、何ですか?」
女の子だったか、ん? サザナミも変身をして、初めてゴブリンの姿になった。すると、話に加わってきた。
「春乃、久しぶり」
「え、だれ?」
「私は陽子。雪波陽子よ。久しぶりね、斎藤春乃ちゃん」
「ほ、本当に。陽子なの?」
「そうだよ」
「う、うわぁぁぁん!!」
ゴブリンがサザナミに抱き着いた。どうやら、前世の知り合いだったようだ。女の子同士だったら色っぽい景色だったのだろが、ゴブリンだと特に感じるモノもない。ライオンはオロオロしているが、サザナミが自己紹介すると何かに気付いたように二体に抱き着いた。
「…………」
「アァァァン!」
「ガォォォン!」
異様な光景だ。青い肌の小人と緑肌の小人、羽の生えたライオンが泣きながら抱き合っている。何だこりゃ? まぁ、昔と今の差を考えればこうなるだろう。…………俺はダチと会ったらどうなるだろうか? こんな感じに泣いて抱き合うのだろうか。…………気持ち悪いな。
❖ ❖ ❖
落ち着くまで待ってると、車座に座って話し合いが始まった。使うのはゴブリン語だけなので、ライオンは傍に座っているだけだ。
「サザナミさんや、お前さん話せたのな」
「この姿の時だけですけどね」
「そかそか。もう少し、早めに話してくれても良かったんやで」
不満がない訳ではないが、こうして話してくれれば少しは寂しさが紛れたというのに。まぁいい、お前は腕の中にいる刑だ。
「放してー!」
「嫌だ、俺を寂しくさせたお前には寂しさを紛らわすという、特別任務を遂行してもらう!」
「その顔止めて! 怖い!」
「いやだ、この顔でお前に恐怖と嫌悪感に抱き着かれるという苦痛を味合わせてやる!」
「ふぬぅ!」
中々暴れる。しかし、俺の筋力にかなう訳ない。やがて俺の力に負けて諦める。こっちは寂しかったんだ、これくらいはさせてくれ。
ゴブリンとライオンが戸惑っている様だ。
「んで、君達は何なんだい? コイツの反応を見るに、転生者かい?」
「あ、はい、私は、ええと、気付いたらこんな姿で、生きてきました」
「ほうほう、自己紹介でもするか? 今は名前もないけど」
「あ、あははは、じゃあ、まず、私から」
困っているゴブリンから自己紹介してくれるようだった。
「私も名前は無いです。それでええと、前世では斎藤春乃って名前でした。見ての通り? ゴブリンです。宜しくお願いします。それとこっちも転生者で名前はないんですが、前世の名前は三上日奈ちゃんです。今はキメラになってますけど、女の子です」
「私も改めて、この世界ではスライム、名前はサザナミ。前世の名前は雪波陽子です」
「最後の俺は今は怪人、最初はゾンビ、名前はなしで、前世は疋嶋慎吾だ。と言っても、多分君達とは前世で交流が無かったな」
「まぁ、無かった」
「それより、そんなに仲良くなってるのが気になるんだけど」
「数ヶ月一緒に居たらこんなもんだろ、ほら、こんなに伸びる」
ミョーン、と頬を抓って腕を横に伸ばす、そのままサザナミの青い肌が伸ばされる。
「わぁ、仲がいいですね」
「ははは、だろぉ」
「コイツがウザいだけ」
サザナミには俺とのスキンシップが不満のようだ。コイツをもっと弄り倒したい気持ちはあれど気になってた事を尋ねる。
「二人は何しにここに来たの?」
「ええと、私は住んでた村がいきなりやって来た人達にやられちゃって、ここら辺まで逃げてきたんですけど。その道中にこの子と会って今も一緒に居てもらってます。ここに来たのは本当に偶然で彷徨ってたら見つけて何か食べ物あるかなって探していました」
「ほうほう」
つまりは村を焼かれて孤児になったという事だ。人間ならまだしもゴブリンであるなら人間たちからしたら害獣駆除と一緒なのかもしれない。世知辛い世の中だ。
「キメラの君も似たようなモノなのかい?」
「グウゥ」
首を横に振った。なら、家族と別れたのか、自立したのかそんな所だろう。言葉が喋れないので分からないが、彼女は特に不幸な過去はなかったのだろう。
「何だっていいけど、これからどうする? 二人? 二体? は一緒に来る?」
「…………い、一緒にいてくれますか? 正直強さ的に心もとなくて」
大分早く本題に入ったが、話は伝わるようだ。そして一緒に来てくれるそうだ、人数が増えるのそこそこに歓迎できる話、世話代は増えるがまぁ、困ったら困った時だ。
「俺は連れて行ってみたい。サザナミはどう?」
「私も一緒に居たいです」
「なら決まり、よろしくなお二方」
「はい!」
「がうっ!」
元気な返事が返ってきた、さて今度は何処に行こうかな? 迷宮を戻るか先に進むか一気に色んな選択肢が増えたな。




