(15)進化・第二段階、です!
新しい相棒を手にしてから幾つ経っただろうか。第二層から進んで、今は七階層に来ている。出現するのは二足歩行の犬と大きな鼠だ。たまにネズミに乗ってる犬も見かける。
“サポートさん。俺はあとどれくらいで進化できそう?”
“検索完了。コボルトを一匹倒せば、進化が可能になります”
早いものだ。強くなるために潜ってまだ序盤かもしれないというのに、もう進化に一歩目を踏み出すとは。さらに、サポートさんから情報が伝えられる。
“次の進化は存在進化となりますので一度レベルがリセットされます”
“存在進化?”
“進化には能力が向上するだけの上昇進化と種そのものが変わる存在進化があります。ご主人様は上昇進化を経験済みなので、次は存在進化を行うことになります”
“二つの進化は交互に行うことになるのか?”
“はい、その通りです”
“進化先は何になるか、分かるかい”
“存在進化をなさる場合は進化先を選んでいただくことになります。今、ご主人様の進化先としてあげられるのは、5種です。頭の中に情報を掲示します”
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グール
・人肉を喰らう人型の怪物。肌は鋼鉄よりも硬く、運動能力は常人の十倍はあります。理性が無くなり、本能で行動することになります。噛み付くことで、噛みつかれた対象をグールにすることができます。
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レブナント
・本能で行動するようになります。身体能力は数十倍に引き上げられます。特殊な魔法を使用することになります。捕食する事で自分から分裂して、自身の同胞を増やすことができます。
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マミー
・皮膚が包帯の様になり体に巻き付きます。皮膚は自在に操作することができます。運動能力は少し落ちますが、特殊な能力に目覚める可能性があります。
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怪人
・運動能力、魔法能力が常人の四倍に上昇します。容姿は人間に近い人間形態と、異形の状態である怪人形態の二つに切り替えることができます。
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レッサー・アンデットメイジ
・運動能力が常人の四分の一に落ちますが、魔法能力が向上します。魔力の操作に長けて、呪いやデバフを与える魔法に特化します。
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中々により取り見取りな進化先だが選ぶ先は一つだな、やはり怪人だろう。正直、他はデメリットが目立つ。怪人は上昇率こそ少ないモノの、人間に変身できることが一番魅力的だろう。
“サポートさん、進化することになったら【怪人】になれるようにしておいてくれ”
“畏まりました”
サポートさんにこう言っておいたし進化先を見するようなことは無いだろう。
んっ? 敵が接近してきた。犬――、コボルトがやって来た。しかし、十匹。こいつは厳しい。行くぞサザナミ!
二層のリスよりは遅いが、小回りに長ける。愛剣である【骨断剣】は大剣の為、懐に入られるのは厳しい。このままでは、ヤラれる。
…………なんて言うと思ったか。対策済みだ。愛剣を蛇腹刀のように伸ばして、広範囲のコボルトの首を狙って小さい刃をぶつける事で一気に首を刎ねる。間にある鉄線も魔力で強化しているので、鉄線でも首を刎ねられた。一振りで十匹全員の首を刎ねられた。
“レベルが上昇しました。進化が可能になります。準備中…………、準備完了、進化を開始します”
やべっ、眠くなってきた。
「サザナミ、暫く寝るから、警戒よろしく」
「…………」
そう言うと、意識が途絶えた。最後に見えた光景は、愛しいスライムの姿だった。
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ポヨポヨ、ポヨポヨ。顔に不思議な感触がある。しかし、やり方を変えたのか、鼻の中に冷たいものが入り込んでくる。
「ふっ、フゴッ! はっ、はぐっ! えっくション!」
くしゃみが出た。最初は気持ち良い感触だったというのに、酷いことをする。サザナミ、お前はなんてことをするんだ。引っ張ってやる、おお、思ったより伸びた。モチモチ感もある。抱き心地もいい。暫く、枕にしよう。逃げんな、逃げんな。くしゃみで俺を起こしたから仕置きの時間だ。
「ステータスの確認をするか」
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名前:なし 種族:怪人 状態:異常なし Lv1
称号:異世界転生者 名無しの怪人 スライム飼い 骨の造形師
HP:800/800
MP:800/800
SP:800/800
コモンスキル
剣闘術(Lv1) 射撃(Lv1) 狩猟闘術(Lv1) 痛覚無効(LvMax) 高速再生(Lv1) 高速思考(Lv1)天脚(Lv1) 鑑定(LvMax) 魔力操作(LvMax)
固有スキル
吸収捕食(LvMax) 身体操作(Lv Max) 骨組織操作(Lv1) 形態変化(Lv1) サポート(Lv1) 風神雷神(Start-up)
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能力値が落ちたが、基礎的な能力は上がっている。レベルを上げられれば、元より強くなれるな。
「サザナミも進化すると良いな」
暫くはモチモチ感を楽しんで迷宮で休むのだった。




