(109)一難退治し、また一難
デカ物の正体は恐竜か?
ティラノサウルスのようだけど、標本とは違って生きている奴は迫力がある。しかし、本物の龍を見た後だからか、迫力が小さく感じる。
けど、まぁ、実力は本物だろう。道中の魔物を喰ってきたのか、血がついている。
俺らを見つけると、咆哮を放ちながら突っ込んできた。前足が小さいのなら、攻撃手段は体当たりや踏みつけ、噛みつき位だろう。魔法も使ってくるかもしれないが、正直そうなったらそうなっただ。対処するしかない。
「よし、森に入ったら二手に分かれるぞ。俺は囮役で動いて動きを止めるから、お前は後ろからぶん殴ってやれ」
「はい、承知」
普段は丁寧なワカバもこういった戦闘中は取り繕う余裕がないらしい。
言葉少なに指示した後に森に入ると、俺は大剣叩いて自身へ注意を向かせて、ワカバは森の木々に隠れながら移動し後ろへ回り込む。
俺がヘイトを集中させると、森の木々を幾つか倒しながら足止めしようとするが、ほぼ全てなぎ倒して進んでいく。無駄だと分かったら、攻め方を変える。
今度は魔法で応戦する。同じ所をグルグル回り始める。
短細胞なのか、驚くほどに疑わず迫ってくる。加えてこんな感じの追いかけっこは得意なのか、スピードを上げて走ってくる。ワカバの待機している位置を確認すると、魔力を体内で必死に練り上げていく。
十数秒で目的の量を練り上げる、そのままワカバが待機している地点でジャンプする。その際に、足から魔力を地面に放射して魔法を発動させる。地面に大穴が開くが、視野が狭くなっている上に、俺がジャンプしたことで視点が上に向かい、地面の穴に気づくことなく気持ちよくはまってくれた。
「グガアアアアァァァ!!!」
直ぐには立てないようで倒れこんだ魔物恐竜は顔と足を使って、起き上がろうとしてくるが、ワカバが金棒を振り下ろした。普通の魔物なら脳天を貫通して地面も砕け散る威力だが、魔物恐竜はかなり頑丈なようで、逆にワカバが弾かれてしまった。
しかし、魔物恐竜は脳震盪を起こしたのか、立ち上がれそうになさそうだった。
俺は、ワカバが仕掛けた時点で、着地を済ませて再び接近したので今度は足を狙っていく。そのさい、吹っ飛ばされたワカバの足を掴んで反対側へ投げ飛ばす。
「セリャァアアア!!!」
「オゥラァアアア!!」
俺とワカバの裂帛の叫びが重なり、両足を攻撃する。俺の方は半分くらい断ち切ってやったが、あっちはどうだろうか。
「俺は半分断ち切ったぞ!」
「こっちは、骨を粉砕できました!!」
帰ってきた声は中々の戦果を告げてきた。
魔物恐竜の方も苦しみの衝撃で声も挙げられないらしい。その為、一旦離れる。
離れると、痛みが襲い掛かってきたのか恐竜はゴロゴロと暴れだす。地面を揺らす為、立ってられない。
離れた時に、腕を伸ばしてワカバは回収済みだ。今は木の上にのって、状況を観察している。
「援軍は来るかね」
「轟音は響いたので、あの子達がうまくやれば来る筈です」
「待ってられん。俺を持って彼奴に叩きつけてくれ」
「……わかりました。無茶しますから気を付けて」
ワカバは俺の足を掴むと大きく振りかぶって、上空へ飛び上がって俺を振りかぶる。俺の方も邪魔にならないように背筋を伸ばして、大剣を構える。ワカバが回転をかけて、落下していくので俺も直撃の瞬間に勢いをつけて、振り下ろすと見事に脳天に直撃してかち割ってやった。フハハ。
「ぷはっ、うぇ、ばっちぃです」
「俺も風呂に入りたいな。ん? どうやらやっと、援軍のようだぞ」
「いや、違います。森の中から聞こえてきますから、」
ワカバがそう言うと、今度はオオカミ型の魔物が飛び出してきた。今更、脅威でもなんでもないので、雑に大剣を振り回すだけで、オオカミ共は吹き飛んでいった。
すると、地響きのような音が森の中から聞こえてくる。
「だめだな。ワカバ、こい」
ワカバを掴んで、サッサと逃げる事にする。形態変化しなくても、普通の魔物位の速度なら十分逃げ切れる脚力は持っている。自由な形態変化は後で燃料切れになるリスクを孕んでいるので、今回は見送りだ。
「城門はしまっているな」
しかし、城壁の上にいた兵士がロープを投げてくれた。これ幸いとワカバを背中へとやって、ロープを伝って上に登っていく。
「助かりました」
「いや、良いって事よ。それより、あれはなんだ?」
「魔物の大群ですよ。迷宮から逃げ出してきたっている蛇を退治してたら、帰り道に追われました。相当強い奴を倒したら群れで魔物が向かっている気配を感じたので、頑張ってここまで逃げてきました」
「そうか。それは災難だったな」
「なんです、あれ?」
「多分、魔物大暴走だな。迷宮の魔物が大量に出て来たんだろう」
助けてくれた衛兵のおじさんに現状を教えてもらった。迷宮から魔物が溢れ出てきたので、それが町に向かって進撃してきているらしい。
「耐えられます?」
「おうよ、十数年ぶりだがこういう事は周期的に起こる。その為の対策も領主様は用意してくださっているからな。それより、お前らの仲間だろ、あれ。早く行ってやりな」
気の良いおっちゃんが指さした先には、黒い獣に乗ったサザナミやノンナが待っている。
おっちゃんに礼を言うと、ワカバを抱えて下へ下がっていく。
「着いてたか」
「ああ、うん。それと、ごめん」
「援軍の話、ごめんなさい」
どうやら、援軍を呼んだが、スタンピードの方に対処するからと、援軍を断られてしまったらしい。
生きている以上は気にしなくていいと思うが、律儀な奴らである。
「大丈夫です。返り討ちにしてやりましたよ」
「おうよ。それと、この後どうするか言われてねぇか?」
「ああ、弓が扱えたり、腕力あるやつは城壁前に集まって、と言っていました」
なるほど、射撃でけん制と制圧で、強敵相手に味方が集中できるようにするらしい。
「よし、コクヨウ、ワカバは俺と一緒に門の前へ。サザナミとノンナは裏方で援護に努めてくれ」
「「「「はい」」」」
役割分担には納得してくれたようなので、いざ、出撃!
❖ ❖ ❖
そろそろスタンピードの周期という事で領主様は魔銀級の冒険者を雇っていたようだった。
しかも、二組いる。そのうえで、魔銀級まで鍛え上げた領主様の直属の騎士様が出張ってきている。
作戦はやっぱり、最初に考えていた通りに制圧射撃で削っていき、、残った大物を魔銀級で削っていくようだった。金剛級までは下に降りて行ってもいいようだが、俺たちはパーティーメンバーのほとんどが黄金級なので制圧射撃部隊だ。
「もう、直ぐそこに来てるな」
「本当だ。数、多いねぇ~」
「私、あんまり遠距離やったことないんですが」
俺が森にいた時に、既に地響きが聞こえていたのだから凄まじい進軍速度である。
そして、ワカバは不安そうであるが、こんだけ数がいるのだ好きに投げても何かしらにあたるだろう。先輩冒険者もそんなフォローを入れてくれた。
「んー、魔法とかは使ってもいいんですかね」
「まぁ、良いけど。魔銀級の迷惑にならないようにね」
「了解です」
さて、何魔法で行こうか。水や土だと、迷惑になるしな。火を吐いてもいいけど、こっちも迷惑になる。他にも黄金級の奴らは杖を構えて準備しているようだった。射程距離になったら一気に放つつもりだろう。
「風でいく」
さぁ、今生の中で一番の威力の魔法をぶっ放すぞ。貯めに貯めてた魔力を一気に放つぞ~。




