(108)新しい名前と森での出来事
龍の住処に到着し、そこの主に名前を付けてもらえることになった。
なんでも名前は、真の力を引き出すのに必要らしい。
「それじゃあ、なんて名前にしようかね」
「奇抜なものでなければ、特に指定はないです」
「ほう、そうじゃなぁ」
水龍様は胡坐をかいて、真剣に考え始める。
「ふむ、お主はアンデッド系の魔人だな。それに関した名前がいいのかね。ふーむ」
腕を組んで、いかにも悩んでますというような感じで水龍様は悩み続ける。そんな感じで、しばらく悩んでいると名案を思い付いたという風に手を付いて考えを告げた。
「うむ、では、ナマリ。ナマリにしよう。黒い大樹の守護者の一つからもじったものじゃ。其方にはふさわしかろう」
「黒い大樹?」
「ふむ、知らんのか? あー、■リ■■■■域、って言って伝わるかの?」
「途中で聞こえなくなりました、不思議な感じです」
「ん-? そこまで、深化が進んでいるというのに、入ってはおらんのか? 変わった奴じゃの」
何か不審に思われてる。しかし、聞こえてないのに言葉自体は聞き覚えはあるような。何処で、聞いたっ
“マスター、いけません。そこから先は、権限が不足しています”
痛くなるはずがないのに、頭が痛い気がする。
にしても、権限不足か。……現状問題ないなら気にすることはないが、場合によっては権限を求めるべきなのだろうか?
難しい話だな。……それはともかく、
「まぁ、話はいったん置いておいて。ナマリ、ですか。良い名前ですね」
お? 体が光った。これで名づけは完了って感じかね。
うん? うん、うーん、体は、動かし易いし、軽くはなったか? うーん、無駄ではなかったな。
「調子はどうじゃ?」
「いい感じです。動き易くなったと思います」
「それは良かった。では、これにて拝謁は終了じゃ。退出を許可しよう」
「ありがたき幸せ。これにて御前を失礼いたします」
話はこれで終了したらしい。
とりあえず、許可をもらって、水龍様の前から失礼しよう。
クルーザーをまた取りに来る時までには、大量に菓子を用意して取り出せるようにしておこう。
❖ ❖ ❖
祭儀場っていうだけあって、近くに町が広がっていた。ただ、ここは立ち入り禁止みたいなので、少し離れて別の場所から町に入る。
小柄な美少女四人を連れている、顔色の悪い包帯男は奇異の目を集めている。
さっきから、視線が痛い。門兵に冒険者ギルドの場所は聞いておいたので、迷うことはない。
それにしてもあっちの大陸と比べても、中々に人種が豊富だ。鬼の様な姿をしていたり、獣耳が生えていたり、本当に人種が多い。
「いろんな人がいるね」
「土地的に魔人が生まれやすくて、魔物も強いのが多いらしいからね。差別する暇がないというらしい。どこかの国の宣教師が教えを広めようとしてぶん殴られて撤退したらしい」
道中は雑談しながら進んでいき、冒険者ギルドに到着すると、そこで色々手続きを行う。
「いろんな仕事があるな。何にしようか」
「それより、宿をとりましょう?」
「私も野宿は勘弁なんだけど」
サザナミとノンナが不満を言うので、とりあえずどこかに向かおうかね。受付にお勧めの宿を聞いて向かう。
宿の受付でチェックインをして、大部屋のカギを受け取るとそこへ向かう。
「やっと、ベッドで眠れる」
「何回かベッドで寝れてるだろう。そんなに気にするほどか?」
「部屋の奴はともかく島の奴は、あんまり寝心地は良くなかった。気づかなかったの?」
「俺の体はあんまりそういう不調は感じないかな。あっても能力的にすぐに戻るだろうからな」
「私もそういうのはないかも」
ノンナは体が痛いらしいが、俺はそういう不調はない。サザナミも体が液状だし、そういった体の不具合とは無縁そうだ。コクヨウもそうなのかな?
「コクヨウとワカバはどうだった?」
「私は寝起きで体が硬い事は多かったかもです。こういうベッドで寝られるのはうれしいです」
「んー、私も体が硬い事は多かったけど、変身するとほぐれる感じはあったね」
不思議な感じだ。
異世界に来てから、生物の仕組みには驚きの連続だな。
「体の差はどうにもならんよな」
「寝る前にはストレッチをやった方がいいかもな。それでコリは大分ほぐれるだろ」
「そうする。寝たら体がバキバキは避けたい」
ノンナ達にストレッチを薦めてみると、納得したみたいで各々で体を伸ばしたり、背中を押したりしながら体をほぐす。
「俺らもやる?」
「どこにその必要性が?」
サザナミが自分の液状の体を揺らして、参加を拒否してきた。長く一緒にいるが、コイツ結構ずぼらなところがあるよな。そこらへんは何とも言えない感じだけど。
❖ ❖ ❖
さてさて英気を養い、冒険者ギルドで魔物討伐の依頼を受注して、やってきました近くの森。ここの深部に目的の魔物がいるらしいので、全力で目指す。
「というわけで、発見した」
「大きな蛇ですね」
なんでも、数ヶ月に一回はこれが遠くの山から下りてくるらしい。
ダンジョンがあるという噂だが、町から離れているので益はないとして、放置されているらしい。それにあるであろう山周辺には高レベルの魔物がわんさかといるらしく、調査もままならないんだとか。
「スワンプスネーク。いる周囲の土地を液状化して沼地の様にして行動するかなり迷惑な魔物、らしいです。周辺の生態に影響を与えるから、早期の討伐が望まれています」
「それより気付かれてる。ナマリ、防御準備!」
「あいあいさー」
まぁ、タンク役は俺だよね。場所的にもそれが一番。
とりあえず、骨ボウガンで気をひいて、愛剣で切りつけながら、ヘイトを集中させる。
一撃に手ごたえを感じたから、かなり脅威に思って貰ったようだ。憎悪の籠った瞳で俺を見つめてくる。
よし、けん制しつつ足場をっ!!
「やべぇ、足が取られるぞ!」
「頑張れぇ、私達は上からやるから、下で引き付けてね」
「骨を使うから、ダメージは無い筈だよ」
「そうそう。それに体を工夫すれば、踏ん張れるでしょ」
わぁ、扱いが酷いな。感激しちゃうぜ。
「くそっ、戦闘中でも沼みたいにできんのかよ。それにそこもどんどん沼になっていく」
「ジュゥゥゥゥゥ!!」
とりあえず、裏拳で顔面をぶん殴りながら、押さえつける。口を開けないように腕を変形させて枷を作る。そのまま背筋を伸ばさせるようにまっすぐ立たせてやる。
そうしてやれば、隙を伺っていたワカバが金棒で吹っ飛ばす。
「はっ!」
当たり所が良かったようで、一撃で骨が折れて絶命した。
いやー、今回は選択が大変だな。
「じゃあ、さっそく解体するぞ」
「「「「おー!!」」」」
蛇を血抜きし、解体、肉と皮、骨に分けてそれぞれ荷物を分けて、持ちやすいようにしておく。別の魔物に襲われてもいいようにリスク管理の為にバラバラに持っている。
それでも格納量と保存力の高いサザナミに高価な物を持たせ、肉などは逃げ足の速い、オレかコクヨウが持っている。囮用である。
歩き始めるとコクヨウが話し始めた。
「今日は絡まれるか賭ける?」
「じゃあ、絡まれないで」
「絡まれる」
「絡まれる」
「えっ、じゃあ、私は絡まれないにします」
「私は絡まれるに一票で」
絡まれる派はサザナミ、ノンナ、コクヨウで、絡まれない派はオレ、ワカバか。今回の戦闘だけでは物足りなかったとみる。ただ、今回俺は勝算がある。何を賭けようか。
「何賭ける?」
「小遣いで銀貨一枚。これで十分だろ」
「そうしましょう。あんまり大きくてもいけませんし」
ワカバはこういう賭け事は嫌いだが、乗ってきたなら余程の無理じゃなければ壊さない。その辺の塩梅も付き合いで把握済みだ。加減をミスったら安全な所で暴れるからな。
そうこう歩いて数十分、ようやく町の端が見えて来た頃。
ドシン、ドシン―――――、
地鳴りの様な足音が聞こえてきた。俺たちの後ろから、しかもかなり早い。
面倒だな。そして、かなり強い。
「サザナミ、ノンナ、コクヨウ。お前ら三人で町に行って人呼んで来い。ワカバは俺と一緒に足止めだ」
「はい」
「「「了解」」」
即応してくれた、いい仲間を持ったな。
じゃあ、ワカバと一緒にデカ物の足止めだね。




