(107)水ノ国、到着
んー、もうそろそろ陸地が見えて来ても良いんだが、
「みんなー!! 陸地! 陸地が見えた!」
おお、噂をすれば何とやら、ノンナが見つけてくれた。よし、スピードを上げて港から離れた所に接岸するか。クルーザーを見られる訳にはいかないからな。
「美味しいご飯に、フカフカの寝床、広い大地……」
サザナミが陸地に思いをはせている。
数十分もしたら港から大分離れた浜に辿り着いた。丁度良く、クルーザーを隠して置けそうな洞窟も見える。
「幸先が良いな」
「美味しいモノとか食べたいですね」
ザザッ、ザッパアァアアアアアアア――――
「「「え?」」」
「あ?」
「へ?」
超巨大なウミヘビ、いや、水龍が出てきやがった。ええと、敵意はなさそう?
≪何者だ?≫
「………ええと、旅の者です」
≪ここは地元の者が我への貢ぎ物を捧げる場所だ≫
「な、成程」
≪普段は使わない場所だからな、使う分には構わないが、使用料として貢ぎ物をよこせ≫
「では、何か希望がありましたらお願いいたします。その通りにいたしますので」
水龍に希望を取ってみる。変な物を捧げて機嫌を損ねられたくはない。
≪食い物が望ましいな、出来れば珍味、希少なものが望ましい≫
「んー、今は保存食と菓子類が幾つかで大量に用意するには金が足りないですな。量は足りないと思いますが、まぁ、これでもどうぞ」
≪ふむ≫
チョコレートを取り出して差し出してみる、水龍はスンスンと匂いを嗅いでどういう物なのかを確認する。毒ではないと確信したのか口を開ける。包みを破いて放り込む。
≪ふむ、甘く濃厚だな、これはどういうものナノだ?≫
「チョコレートっていうお菓子です。ここらの地域では手に入らないものですね」
≪ある分だけ寄こせば此処の使用を認めよう。定期的に貢げば、長期的に此処を使用しても構わんぞ≫
「足りないと思いますけどね。では、どうぞ」
≪うむ、そこはやりようだ≫
水龍の全身が光り輝くと、妙齢の女性が現れた。ちゃんと服も着ている。段ボール一杯に市販のチョコレート菓子を詰め込んで渡す。
「おお、こんなに、苦しゅうないぞ!」
「ははは、それはどうも」
水龍は包装を乱雑に剥がしながら、バリボリと食べる。別に上品に食べてもらう必要はないが、見ていて気持ちの良い食べっぷりである。取りあえず、麦茶をピッチャーとコップを渡す。水龍はピッチャーを掴んで豪快に直接飲み込む。
そのまま暫くは水龍の菓子のバカ食いに付き合った。
❖ ❖ ❖
お菓子が残り少なくなってくると水龍の食事のペースも大分落ち着いてきた。食い足りないのか不満そうな表情をしている。俺達は貢ぎ物はやったので世話をノンナとサザナミに任せて、他二名とクルーザーを洞窟中に移動させたりしていた。
「あれだけあったのが、無くなりましたか」
「うむ、どれも美味だったしな、余も満足である」
水龍は不満そうな表情はしていてもしっかりと謝辞は伝えて満面の笑みになる。
「じゃあ、一応、追加の菓子です。包みに包まれていれば水が入らないようには成っているので、食べるときはお気をつけて」
「おー、気が利くのぉ。そうだ、では、褒美をやろう」
「?……褒美、ですか?」
下心有りとはいえ、なんかあればと思ったんだが、予想外に高評価で良さげな物を貰えそうだった。
「お主、名前がないようだな、よし、ではお主に名前を授けよう」
「名前、ですか?」
良く分からなかったので名前について色々聞いてみる。
「名前というのは重要なものだぞ。先ず、生まれたばかりでもなければ名付けられる事はない。生物として上位の存在であれば、下位の者への名付けが可能なのだ。名付けによるメリットとしては、能力を完全に使えるようになる。名付けられることで存在が世界から認められるという事だからな」
成程、名付けるっていうのにはそういうメリットがあるのか。そういうわけで、水龍のお嬢様から名付けられることになった。楽しみだ。




