今日の始まり
学校が始まる月曜日。風邪は完璧に治り学校に来ている。自分の席に着くといつものように机に突っ伏す。
そんな相手に話しかけてくる者はいない。俺だってかかわりたくない。でも例外はいる。それは勝手に話を進めるやつだ。
「おはよう藤」
そう話しかけてくるのは立花海人。俺はこいつに自分から近づいたわけではない。
俺は入学当初から誰にも関わらないようにしてきた。そして数日がたってもおなじようにしてきた。
「いつも思うんだが何してるんだ」
その時海人は前の席だったのでいつも同じようなことをしていたから気になったのだろう。その時は「いや別になにも」と答えた。ここで会話は終わる。
そしてもう話すこともないだろうと思っていた俺の予想なら。
しかしその日から毎日のように話しかけに来た。自分のことや俺についての質問。話す内容がなくても。
席替えをしてもそれは変わらなかった。今ではもう話すようにしている。話さなければ別の話題をすぐに持ち出してくる。
まあ前より学校が少しだけが楽しいと感じるのはこいつのおかげかもしれないが。これを言うと何か煽られそうだから絶対に言わないが。
「おはよう海人」
「風邪はちゃんと治ったみたいだな」
「まあな」
海人は風邪の日の夜電話をかけてきた。声の違いで俺が風邪をひいているってすぐにばれた。なぜ風邪をひいたかは話さなかったけどな。
「あんな食生活を送ってるからだぞ」
何回か俺の家に泊まりに来ている。なので俺がどんな生活をしているか知っている。
「別にいいだろ」
「お前は料理できるのに何でつくらないのかねえ~」
「食材を用意するのが面倒」
そういうとため息をつかれた。お前は息子の食事を気にするお母さんか。
そんなくだらない話をしていると急にクラスのみんなの声が大きくなる。そちら側を見ると川上の姿を見つけた。
「相変わらずの人気だな。人気者っていうのも大変だぜ」
「確かにな」
やっぱり川上の表情とあの日の表情はなんだか違う気がする。まるで仮面をつけているような…。
「珍しいな弥生さんのことをじっと見つめるなんて。もしかして好きになったか」
「んなわけないだろ」
「だよなー。だってお前だし」
「お前失礼と思わんのか」
「わざとに決まってるだろ」
ため息をつきもう一度見ると一瞬こちらを見ているような気がした。
「あれ絶対俺のことを見てるよな」
「はぁ?ありえねーよ」
クラスの奴らはさらに盛り上がりを見せる。
まあ気のせいだろ。それにもうかかわることはないし。
「藤今日暇か?暇だったら学校終わったら美優と遊びに行こうぜ」
美優とはこいつの彼女のことだ。苗字を星川。
「すまんが今日はバイトなんだ」
「謝る割には嬉しそうだが」
さすがに一緒にいてうれしがる奴はいないだろ。
すると一時間目の始まるチャイムが鳴る。
うちの学校はショートホームルームがなくそのまま1時間目に入る。
「じゃ、また話に来るわ」
そういって海人は席に戻る。
そうして今日の学校が始まった。
ありがとうございました。