再会はベランダで
目が覚めると太陽は傾き隠れようとしていた。
「ぅ…ふぅー」
背伸びをして肩をほぐす。よく寝たおかげか朝のような肌寒さはなく頭痛もなくなっていた。ただまだ体は本調子ではないことがわかる。近くにあったスポーツドリンクを飲むとまだのどに痛みがあった。
今日は寝てばかりだな。。風邪をひいていたので仕方がないがなんだか損した気分になる。
さすがに洗濯とかは明日にするか。空気の入れ替えをするために窓を開けベランダに出る。少し湿気のある生暖かい風が入り込んでくる。夏のこの風は嫌いだが今感じるとちょうどよく感じる。
すると左隣から窓が開く音が聞こえる。
…え、左隣?
そこは4月から誰もいないはずの部屋だった。どんな人が引っ越してきたんだろう。
「少しは良くなったみたいですね」
すると聞き覚えがある、というより今日聞いたような声が聞こえてきた。
「……川上さん?」
「はいそうですが」
は…え…。予想はしていたがさすがに予想していた通りとは思わなかった。
「いつ引っ越してきたんだ」
「4月からこの部屋は買っていたんです、でも家の事情で少し遅れて入ることになったんです」
なるほどな。4月から誰も来なかったのは実はもう人がいたからか。
「そういえば今日はありがとう。おかげで早く治りそうだ」
「それはよかったです」
「そういえばなんで助けたんだ?川上さんは男の人が苦手と思っていたが」
「別に苦手ではありませんよ。近づいてくる人たちが下心がまる見えでしたから苦手だっただけで」
確かにそんなやつをいちいち相手していられない。俺が川上の立場になっても同じことをするだろう。
俺の勘違いだったんだな。大変だな美少女ってやつも。
…ん?ていうことは
「俺は平気だったんだな」
「はい。下心をうまく隠していても簡単にわかりますので。あなたにはそんな気配が全く感じられませんでした」
「風邪をひいていたからそれどころじゃなかっただけかもしれないだろ」
「あなたは私に下心をお持ちで?」
鋭い目で見られる。
「あるわけないだろう。まあかわいいとは思うがそれだけだ」
すると川上の顔が少し赤くなる。
「ほめられなれてると思ったがそうでもないんだな」
「からかわないでください」
へえ~、学校で見るときの彼女の表情はぎこちないと思っていたがそんな表情もするんだな。
「はぁ~私は買い出しをしてこなくてはなりませんので」
では、というと部屋のほうに帰っていった。
川上って意外と話しやすいんだな。まあもうお礼もされたしかかわることはないだろう。体を冷やすかもしれないし俺も戻るか。
俺も部屋に戻る。俺も買い出しに行かないと。明日の朝に行くことになるのはめんどくさい。
ただ今行くと鉢合わせになるだろうし川上が作った残りを食べて時間がたつのを待つとするか。
本日二回目の同じものだったがおいしかった。ただ少し物足りない気がした。
帰ってきてからつまめる物も買っておくか。
食器を片付け、財布を持ちスーパーに出かけるのだった。
ありがとうございました。