表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たとえ異世界を何度やり直してでも  作者: ラリックマ
もう一度、会えると信じて
6/16

探究心

「いやーさっぱりしたよ。君も入ってくるといい」


 ホカホカと全身から熱気を放ちながら、フードの人は戻ってきた。というかこの人、いつまでフード被ってるんだ?

 もしかしてフードを被っているのには何か理由があるのか?

 そうじゃなきゃ、部屋の中までフードを被ってないよな……。変に気を使わせてしまうのも申し訳ないと思った僕は、フードのことについては何も触れず。


「じゃあサクッと入ってきますね」


 とだけ言って、風呂場に向かう。あまり大きくない宿屋の風呂場だからどんなものかと思っていたが、思っていたよりは悪くなかった。

 お世辞にも綺麗とは言い難いが、それでも最低限使える程度には整っているし、まあまあ大きめの浴槽も一つだけだがある。

 てか、僕もさっきフードの人がお風呂に行ったタイミングで一緒に行けばよかったな……。

 そんなことを今更思いながら、早々と体を洗う。


「すいません。入りますよ」


 風呂から上がり、部屋まで来た僕はトントンと部屋のドアをノックする。

 だが返事はない。できるだけ早く戻ってきたつもりだったのだが、もしかして僕を置いて旅に出てしまったとか……?

 でも僕が文句を言える立場じゃないし……。

 そもそも何も言わずに突発的に宿屋を出て行ってしまうものか?

 

「入りますよー」


 少し大きめの声でそういうと、ドアノブをひねる。部屋の中に入ると……。


「スースー」


 小さい寝息を立てながら、ベッドで横になって寝ているフードの人の姿があった。

 もうすでに寝ていたのか。確かに今日は結構歩いたし、疲れが溜まっていたのだろう。 

 それにこんな見ず知らずの男のことまで介抱したのだから、それは疲れるよな……。

 僕も寝よう。他に着替えはないので、汗と土まみれの汚れた服装でベッドに横たわる。

 横になると、急激に眠気が襲ってきたのでそのまま寝ようとするが、そこでふとあることに気がついた。

 この人の顔を見てみたい。そう思ってしまった。

 もしかしたらよくないことなのかもしれない。でも気になる。目の前の底知れぬ探究心を、僕は我慢することができない。

 そもそもバレなければ大丈夫じゃないか? 

 少し覗くだけ……。

 僕は(あお)向けになって寝ている彼女の側に行くと、上から顔を(のぞ)いた。

 その顔を見て、胸がざわつく……。

 整った目鼻立ち。綺麗なシミひとつない肌。眉まである手入れされた黒髪。一言で言うと、美人だ。

 どうしてフードなんて被っているのだろう……勿体無い。

 そんなことを思ってしまうほど、とても整った顔の造形をしている。僕がジーとフードの人の顔を見ていると、


「ん……ん?」


「あ……」


 彼女の閉じていたはずの(まぶた)がゆっくりと開き、ガッツリと目が合ってしまった。


「あの……その……ごめんなさい!」


 腰を90度に曲げて謝罪をする。


「え? どうして私は今、君に謝られているんだい?」


 目を開けたフードの人は、横になっていた体を起こす。


「いやそれは……その、フードさんのお顔を拝見してしまったから……」


「それは謝罪する理由になっていないよ。別に私の顔を見るのは悪いことではないのだからね……」


 その言葉を聞いて、曲がっていた腰をあげる。


「え、でもずっと顔を隠していたから、見られたくない理由とかがあるんじゃ……」


 僕の発言を聞いたフードの人は、一瞬キョトンとした後に「あぁ」と一人で納得すると。


「別にこれは隠しているわけじゃないよ」


「じゃあなんでフードを……?」


 僕は思ったことをすぐ質問すると、フードの人は言うのに少し躊躇(ためら)う素ぶりをして。


「このフードがないと、世界が広く見えてしまうからね。あまり多くの情報を入れないために、このフードを被ってるってだけ。多分君には理解できないことだからあまり気にしないでくれ。自分でも滑稽(こっけい)なことだと思っているから……」


 「それじゃあ」と言い残すと、フードの人はまた横になって眠ってしまった。

 今のはどう言うことだ……?

 よくわからないことを言われるが、そんなことどうでもよくなるぐらい強い眠気が、また襲ってくる。

 頭が回らない。我慢の限界が来た僕は、そのまま倒れるようにドスッとベッドに横たわり、意識を失った。



 

















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ