もう何度目かもわからない
また、会えなかった……。探しても探しても、彼に出会う方法が見つからない。
また、最初っからやり直すのか。
私は持っていた杖を地面に突き刺すと、呪文のような、暗号のようなものを唱えようとするが……。
「やめなさい! あなた、これ以上その能力を使ったら本当に死ぬわよ」
何処からともなく聞こえてくる注意喚起の声。また幻聴だ……。
誰もいないはずなのに、何処からともなく声が聞こえてくる。この能力を酷使したら死ぬなんてこと、”あの本”には書かれていなかった。
「うるさい。誰だか知らないけど、私が死のうが君には関係ないだろう」
私はしつこくてうるさい幻聴にそんなことを言う。はたから見たら一人で喋っているおかしな奴だと思われるだろう。
実際、私は変な女だし、その認識は間違ってないだろう……。
「ちょっと、人の話はちゃんと聞かないと損するわよ!」
人……?
おかしなことを言う幻聴だな。まあこんな幻聴に気を取られているのも馬鹿馬鹿しいし、早く呪文を唱えるとしよう。
私は地面に突き刺した杖を力強く握り、
「リバースタイム!」
そう言うと同時に、あたりには強い風が吹き荒れ目の前が真っ白になった。この時を遡っていく感覚は、何度体験しても慣れるものではない。
それから数秒の時間が経ち、目を開けると、いつも通りに一面緑に包まれた森林の中に私は居た。