表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不良JKは弟(ぼく)に逆らえない  作者: 秋月志音
第一章 松竹梅仲直り大作戦について
8/42

2-5

 母さんが帰ってくると、唯奈は一階へ話をしに行った。僕の両親は、唯奈はもちろんのこと、三人全員と仲が良いのだ。


「ハジメちゃん」

「……何?」


 今は千愛莉ちゃんと部屋に二人きりだった。初めてのことだし、僕は少し緊張している。


「唯奈さんってかわいい人だね」


 かわいい人。そう言われて僕は嬉しかった。千愛莉ちゃんが唯奈に対して正しい印象を持ってくれたと感じたからだ。


 感情豊かで、バカで、人懐っこい。そんな唯奈は、年下の僕からでもかわいく見える。

 見た目は近づきづらいけれど、中身はとっつきやすい。それが唯奈なのだ。


「そうかもね」

「なんで紅輝さんと仲直りできないのかなぁ? 唯奈さんなら、すぐに仲直りできそうなのに」


 千愛莉ちゃんは首を横に傾けながら言った。


 確かに唯奈みたいなわかりやすいタイプなら、仲直りも容易な気がする。


 これは想像だけれど、唯奈は片方と仲を戻せば、もう片方がのけ者になると考えているのではないだろうか。上手く均衡をとるような器用さを、唯奈は持ち合わせていないのだ。


「なんでだろうね」


 僕はそうはぐらかした。千愛莉ちゃんは、うーんと唸ってから、わかりやすいため息をついた。


「はぁ……紅輝さんね、私と一緒でも楽しくなさそうなんだ」

「そんなことないよ」


 紅ちゃんは今まで僕ら以外とほとんど関わりを持たなかった。だから、千愛莉ちゃんを連れてきたとき、僕は驚いたものだ。


 しかもこんな人当たりが良くて明るい女の子だったものだから、紅ちゃんも変わったんだと思って嬉しかった。


「ううん。嫌われてるわけじゃないと思うんだけど、物足りなさそうなの。寂しそうっていうか、一緒にいてもよくボーっとしてる」


 寂しそう、ということに心当たりがないわけではなく、むしろ紅ちゃんには常にそういう雰囲気があった。


 父親の転勤により仕送りで一人暮らしをしている紅ちゃんは、普段から一人で行動することが多かった。だから紅ちゃんが千愛莉ちゃんを初めて家に連れてきたとき、僕はとても嬉しかった。紅ちゃんが一人になる時間が減るんだ、と。


「やっぱり、ハジメちゃんが言うように、仲直りしなきゃだよね。唯奈さんといると楽しくなりそうだし、紅輝さんと唯奈さんが一緒にいるところ、私も見てみたいな」


 千愛莉ちゃんは無邪気な笑みを浮かべた。不純物のない言葉は、僕の中にすっと染み入った。紅ちゃんのことを本当に思ってくれていて、心配してくれている。


「千愛莉ちゃん」


 僕が呼びかけると、千愛莉ちゃんは猫のような口をしながら、僕と目を合わせた。


「千愛莉ちゃんも、三人を仲直りさせるのに協力してくれるかな?」

「うん。そのつもりだよ」


 千愛莉ちゃんはさも当たり前のようにそう言ってくれた。唯奈とすぐに仲良くなった千愛莉ちゃんは、三人を仲直りさせるための心強い味方になってくれるかもしれない。僕はそう思った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ