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不良JKは弟(ぼく)に逆らえない  作者: 秋月志音
第五章 姉さんの作った場所だから
39/42

6-7

 食卓にはたくさんのものが置かれていた。人数分の皿はなく、紙皿なんかも用意されている。料理についも、父さんが買ってきた惣菜を加えて、なかなかの品数が揃った。急ごしらえなのにパーティーみたいだった。


「いただきまーす」


 総勢七人の食卓は、母さんを大いに喜ばせた。父さんも女の子ばかりで嬉しそうだ。


「唯奈ちゃん、誕生日おめでとー!」


 母さんが沸かせると、口々に唯奈は祝われていく。僕も昨日渡しそびれたプレゼントを渡した。


「今日、家は大丈夫なの? 誕生日会」

「ハジメたちを探すときにもう断ってたよ。明日にするって」


 それは悪いことをしてしまった。でも、今唯奈がとても楽しそうなので許してほしい。


「はいはい、ここで重大発表がありまーす」


 お酒を飲んでいないのにテンションが高い母さんがそう言うと、みんなは注目する。


「その一! 紅ちゃんはうちで暮らすことになります!」

「えー!?」


 口々に驚いた声があがる。なぜか、当の本人からもあがっていた。


「前から言ってたでしょう?」


 以前していたのは、この話だったのだろうか。初耳だ。それにしても、なぜ紅ちゃんもこんなに驚いているんだ。


「私、返事してないけど……」

「紅ちゃんに拒否権はありません。こんな問題を起こしたんだから!」

「う……」


 叱られるように言われると、紅ちゃんは気まずそうに俯いた。母さんはにっこりと笑う。


「紅ちゃんのお父さんにもそう言っておくからね。決定」


 紅ちゃんは僕を見つめる。いいのか? といったところだろうか。


「紅ちゃんには首輪付けとかなきゃいけないからね」


 と僕が言うと、紅ちゃんはまたがっくりとうなだれた。紅ちゃんと同居する。うちには部屋が余っているから、確かにちょうどいいと思った。


「ちゃんと監視されないと駄目でしょうからね、ちょうどいいでしょ」

「てか、紅輝は一人暮らしに向かなさすぎ」

「二人に用事があるときは一石二鳥ですねー」


 みんなにもそんな軽口を言われてしまう。もう本当に拒否権はなくて、紅ちゃんは頷くしかない様子だった。決定、ということだ。


「その二は?」


 唯奈が聞いた。母さんは今度は悪戯っぽい笑顔になる。


「ハジメがねぇ……」


 なぜか出たのは僕の名前だった。母さんは言葉を溜めて、みんなの反応を待った。


「僕が、何?」


 不満に思ってそう言うと、母さんは咳払いをした。


「ハジメが……お兄ちゃんになります!」


 父さん以外のみんなが、思考が追いつかないというように固まってしまう。一番追いついていないのは、多分僕だった。


「どゆこと?」


 僕はバカみたいになって言った。母さんが自分のお腹を撫でると、反応が良かったのは千愛莉ちゃんだった。


「おめでとーございます! わあ、何ヶ月ですか!?」

「三ヶ月」


 母さんは三本の指を立てた。つまりは、僕がこの三本の真ん中になるということだ。僕らは顔を見合わせてから、揃って驚きの声をあげた。



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