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不良JKは弟(ぼく)に逆らえない  作者: 秋月志音
第三章 もう、家には来ないでね
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4-5

 部屋で本を読んでいると、玄関の戸が開く音がした。紅ちゃんが帰るのだ。僕は窓から下を覗く。


「じゃあ、考えておいてね」

「……はい」


 紅ちゃんと母さんが何かを話していた。また僕関連のことだと思うので、聞こえなくてよかった。


 紅ちゃんは僕に気づくと、こちらへ手を振ってくれる。僕も返すと、紅ちゃんは背を向けた。

 少し心細い。僕はベッドへと倒れこみ、仰向けに寝転がった。


 ――ハジメもやっぱり寂しいんだ。


 紅ちゃんはそう言おうとしていたのだろう。姉さんがいなくなって。三人が一緒にいなくて。


 答えはイエスだけど、このさい僕の気持ちなんてどうだっていい。姉さんのことはどうすることもできないし、三人は僕のためにいつも来てくれているし、これ以上甘えるつもりはなかった。

 ただ、僕は三人それぞれが仲直りを望んでいてほしいと思っていて、三人の気持ちを知りたかったのだ。


 僕は友人関係というものが苦手だった。でも三人を見ていると、そういうものが楽しいものに見えて、それはきっと永遠に続くものだと思っていた。だから、三人が今のような関係になっていることも信じがたいことだし、姉さんがきっかけなら責任も感じる。


 僕には唯奈の言葉が強く残っていた。


 ――ああいうのと付き合っちゃ駄目だよ。


 唯奈からは確かに嫌悪感が出ていた。姉さんが亡くなってからの一悶着において、唯奈は二人と直接ケンカしてないはずなのに。


 ということは、僕が知っていること以外に何かあったと考えるべきなのかもしれない。

 関係は時を経て変わっていく。それぞれで思っていることはもちろん違うだろうけど、立ち向かっているものも違うのだろう。


 唯奈は二人を否定した。

 麗は紅ちゃんを守ろうとしていたし、唯奈にも良い感情が見られた。

 紅ちゃんが二人をどう思っているのかは掴めない。


 きっと、僕の思っていたことは全部どこかがずれている。だから上手くいかないのだ。


 じゃあ、三人はこのままでいいのだろうか。この距離感で均衡を保っていて、ぶつかることのない今の状態が正しいのだろうか。


 変わっていくこともあれば変わらないこともある。それが、僕の家に来ること、話すことだ。


 僕に対しては何も変わらない。今までどおりの関係がそこには存在しているのだ。



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