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九條稙通

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 摂津で分限者の家々に世話になっていたところ、都の邸から関白が話しがあると言っていると言う報告が来た。

 関白から話があるとは珍しいことだ。

 次の関白には、わしがなるとは決まっているが、まだ数年はあるはず。

 取り敢えず、行ってみることとするか。



 都へ帰り、近衛邸の訪問の日取りを取り決め、近衛邸を訪問する。


 「九條卿、よう参ってくれた」


 久々に関白近衛稙家の姿を見ると、羽振りが良さそうに見受けられる。

 諸国を流浪する自分との差に妬みを感じてしまうが、それも仕方ないことだろう。


 「関白殿、わざわざ呼び出したのは何用じゃ?

 まだ関白を譲られる時期では無いはずだが」


 簡単な挨拶を済ませた後、関白に用件を問う。


 「実はな、わしの庶子が美濃の領主に養子に入り、小領主になったのだ。

 しかし、なって早々に神宮と渡りをつけてな、志摩の水軍衆を打ち破って、神宮領を回復し、代官になったのよ。

 神宮からも神宮領回復の報告があり、主上は大層お喜びであらせられた。」


 関白の庶子についての噂は以前から聞いていた。

 美濃で小領主になったことや志摩の神宮領を回復したとなど、都の邸で家僕から報告されている。

 関白の羽振りが良いのも、庶子から支援を受けているのだろう。


 「だが、土岐に無断でやったがため、美濃で騒ぎになっておる様でな、土岐やその家臣たちを黙らせるためにも、中央から土岐への神宮領回復を労う書状を出してくれと頼まれてな。

 主上から労いの書状を賜ることに成功したので、九條卿には美濃に下向して、息子と共に土岐に書状を渡して欲しいのだ」


 摂家九條の当主である、わしに下向して使いに行けと!?

 一瞬、頭に血が上りそうになったが、わしが怒りそうなことを、同じ摂家の近衛が意味もなく言うとは思えぬので、話の続きを待つ。


 「九條卿も次に関白となる身としては、実入りはいくら多くても無駄になることなどあるまい?

 息子には話をつけておるが故、美濃の息子の元で暫く過ごされよ。

 息子も九條卿と親しくなれば、九條卿のために力を惜しまぬであろう」


 関白は、わしが困窮しておることを知っているはずだが、そのことは口に出さず、収入になるから美濃へ行けと言う。

 そこで過ごせば、関白となるべく都に戻った後も、支援を続けてくれると、息子と話をつけてくれている様だ。

 関白の手の平の上で転がされている様な気がするのは気に食わぬが、今のままでは関白になっても拝賀が叶うとは思えぬ。

 日々の生活でさえ厳しく、畿内で世話になっている分限者たちも余り良い顔をしなくなっておるからな。背に腹は変えられぬか。



 こうして、九條稙通は帝からの労いの書状を携えて、美濃へと下向することとなったのだった。

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