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近衛稙家⑤

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◇近衛稙家


 美濃の多幸丸のところから、黒田下野守が参った。

 今回は、明の品々を土産に持ってきたが、多幸丸は本当に琉球と交易を始めた様だ。

 多幸丸には、島津や琉球への紹介状を書いてやったからな。

 それなりの見返りを貰わねば話にならん。

 明の品々を見れば、なかなかの物で、思わず頬が緩みそうになるのを堪えて、多幸丸からの書状を読む。


 多幸丸からの書状を読むと、また頼みごとばかり書いてあったので、思わず溜め息が漏れる。

 頼みごとは更に増えているが、特に厄介なのは、土岐に無断で志摩を攻め取ったとかで、弁明の為に、神宮からだけでなく、近衛家からも正当性を認める書状をくれとのことだ。

 確かに、多幸丸が志摩の地頭どもを倒し、神宮領を回復した旨を神宮から報告は受けていた。

 帝も大層、御喜ばれになっておられ、多幸丸に官位を与えては?と申されていたが、今の多幸丸は土岐の被官でも新米の小領主故、朝廷から官位を与えては立場が悪くなるとお止めしたのだ。

 この件については、帝から土岐へ志摩の神宮領回復を褒める書状でも出していただける様、上奏するか。


 もう一つ厄介なのが、摂家九條家の当主である九條稙通卿を美濃に迎えたいと言う内容だ。

 何故、九條をと思うが、多幸丸の理由としては、九條稙通が困窮しているのが、摂関の血が流れる自分には見過ごせないとか抜かしておるが、どうせ下心があるに決まっておる。

 わしの次の関白は内定しておるから、次期関白に恩を売れると言う心算であろう。

 九條家は稙通卿の祖父と父が勅勘に処されてから、公家社会で爪弾きにされておるし、公家も助けてやれる余裕など無い。

 果たして、九條が関白になって、勤めを果たすことが出来るかどうか。

 そうなると、多幸丸が九條を助けるのは良いやも知れぬ。

 稙通卿は困窮しておるから、どうせ摂津の辺りにおるだろう。

 京の九條邸を通じて呼び出すとするか。


 後は、大樹(足利将軍)に仕える乱波を召し抱えたいので、何とかしてくれだとか、困窮している公家を追加で派遣してくれや、京の螺鈿細工や漆塗職人等の職人たちを送ってくれなど書いてある。

 それは、大した労力では無いが、最近では頼みごとが増えておるのが気に食わぬ。


 「あい分かった。土岐への弁明の件は、神宮より報告を受けておるので、主上も御存知であられる。主上に上奏してみるが故、暫し待つよう伝えよ。

 また、九條卿の件だが、一応話してはみるが、下向するかは分からぬぞ」


 そして、公家の追加や職人を送ることを了承すると、下野守は恭しく感謝の言葉を述べる。


 「公家の件は分かるが、職人なぞどうするつもりじゃ?」


 「殿は志摩を手中に収めたことで、螺鈿細工を作ることが出来るようになりました。

 そのため、職人を招き、細工物を作れる様になりたいとのことにございまする。

 殿が細工物を得ることが出来るようになれば、関白様を更にお助けすることが叶うかと思われます」


 下野守の奴め、細工物を作れる様になれば、更に贈物が増えると抜かしおった。

 まぁ、多幸丸からの贈物で助かってはおるし、多幸丸の力が強くなれば、それだけ近衛家の力も強まることとなる。悪いことではないが、良いようにされておるのが気に食わぬな。


 「ところで、大樹(足利将軍)に仕える乱波の服部某なる者を召し抱えたいと言うことだが、乱波など既におるだろう」


 「確かに、甲賀の者がおりますが、志摩を手中に収めたことで、乱波が不足しております。

 殿は秀でた乱波を召し抱えたいとお考えのところ、大樹の元で乱波が不遇と聞き及び、関白様のお手をお借りしたいとのことにございます」


 「良かろう。どうせ乱波など大樹の下では扱いが悪いであろうから、わしが言えば手放してくれるであろう。

 多幸丸に仕えさせるとなると、話がややこしくなりそうだから、わしが所望することにして、美濃へ送ってやる」


 多幸丸が大樹に目を付けられると、多幸丸にとっても、近衛家にとっても良くないからな。

 取り敢えずは、わしが乱波を召し抱える形にすることにした。


 「下野守よ、近頃は多幸丸からの頼みが多すぎるぞ。其方からもしっかりと諌めよ」


 わしは下野守に一言嫌味を言って、下野守を下がらせた。



 多幸丸よ、やり過ぎれば土岐だけでなく諸侯や大樹からも目を付けられるやも知れぬぞ。

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