雑賀衆慰問と美濃での水軍再教育
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志摩国の平定が終わり、志摩の統治が始まったことで、軍の任務も警備活動へ移行した。
当家の常備軍から死者は出なかったが、雑賀衆の傭兵からは死者や重傷者が出ている。
傭兵への報酬は既に雑賀衆に払ってあるが、よく働いてくれた彼等に、わしから臨時報酬と見舞金を与えることにしたのだ。
志摩の各地を視察するついでに、各城に駐屯している雑賀衆の部隊を慰問する。
各部隊からの被害数は報告を受けているので、それぞれの部隊に見合う金額を用意している。
「良く戦ってくれた。これは追加報酬だ。死んだ者や怪我をした者への見舞金も入っているので、家族に渡してくれ」
「わざわざ、ありがとうございます。引き続き、西村様の下で働かせていただきます」
それぞれの部隊の長に代表して渡すと、大抵喜ばれる。
部隊の長が独り占めしないよう、部隊の主だった者たちを集め、彼等の働きを称賛するとともに、皆の前で銭を渡すのが肝要である。
皆の前で渡したものを独り占めしづらいだろうからな。
こうして、雑賀衆たちにウチで働くと儲かると好意的印象を持たせるのだ。
久々に中井戸村に戻ると、そこには鬼がいた。その鬼とは大島甚六である。志摩の水軍衆たちに、当家の軍のやり方を教育するよう命じていたのだが、彼等に対して、鬼になっていた。
美濃の農民たちを集めて、常備兵を鍛えたときは、もっと丁寧に教えていたのだが、意外な光景である。
大島甚六の配下である常備兵の新人たちがドン引きしていた。
大島甚六と古参の常備兵が、志摩の水軍衆を引き摺り回したりしている。
何があったのか、大島甚六に聞いてみることにした。
「どうしたのだ、甚六よ。いつもの其方らしくないぞ」
「殿、申し訳ございませぬ。しかし、志摩の水軍衆たちはまだ当家に心の底から服従しておりませぬ。元々は海賊だからか反抗的な態度をとることも多うございます。
ここでしっかり服従させねば、後々に災いとなりましょう」
確かに、大島甚六の言うとおり、ここでしっかり躾ておかねば、後々になって禍根を残すことになるやもしれぬ。
「そうか。確かに、ここで甘やかしては、今後のためにならんな。
誰かマシな者はおらぬのか?」
「九鬼宮内(泰隆)たち九鬼の水軍衆は従順な方にございます。
少しでも学ぼうとしておるのか、覚えも早く、他の水軍衆たちを諭しております」
九鬼の者たちは積極的に服従しようとしているようである。わしの中で、九鬼出身の者たちの評価が少し上がった。
「そうか、九鬼は使い物になりそうか。橘はどうじゃ?」
「九鬼は使い物になると思われますが、一番反抗しておるのが橘の者たちにございます。
その分、大分心をへし折ってやりました。」
「そ、そうか。引き続き頼むぞ」
こうして、引き続き志摩の水軍衆たちの再教育を大島甚六に任せることとした。
志摩の水軍衆は陸どころか山奥に連れていかれ、大島甚六の地獄の訓練でしごかれたことで、結果的には当家に服従し、良い方向へ向かうこととなった。しかし、この再教育のせいか、後々まで海軍では鬼の大島と怖れられることとなるのであった。
そして、美濃の常備兵の中では、大島甚六を鬼にさせる海軍は怖ろしいところと噂になったことを知るのは、まだ先のことである。