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スレイマン1世

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◇スレイマン1世


 「ポルトガルがスィーン(ペルシャ語で中国のこと)を侵略せんと企てているか・・・」


 非公式の同盟国であるアチェ王国へ派遣した外交使節が、アチェから帰国した際に、ワクワク(ペルシャ語で日本)の外交官から伝えられたとの報告が届いていた。

 外交使節として派遣した我が帝国の外交官は、ワクワクの外交官から非公式の書簡を受け取り、報告書とともに献じている。


 「陛下、ポルトガルはインドだけで無く、スィーンにまで侵出しているとなると、ポルトガルの活動は、我が国にとって益々深刻な事態になっておりますな」


 腹心でありヴェズラザム(大宰相)であるイブラヒムがポルトガルの脅威について語る。

 イブラヒムは元々はヴェネツィア領のギリシャ出身の奴隷であるが、イスラム教に改宗し、朕が即位する前から仕え、最も信頼する家臣であった。

 朕の即位後は、ヴェズラザムに任じ、未亡人であった朕の妹を妻にし、義弟となっている。


 「インドのディーウで敗れたため、インド洋の制海権を奪われ、マラッカを征服されたのが痛いな。ポルトガルは東洋で好き勝手やっておる様だ」


 1509年、祖父のバヤズィト2世の代に、インド洋のディーウ沖においてポルトガルの艦隊と海戦になった。

 我が帝国は、グジャラート・スルターン朝、マムルーク朝への援軍として海軍を派遣したものの、ディーウ沖の海戦に敗れ、ポルトガルにインド洋の制海権を奪われている。

 その後、ポルトガルはディーウに駐屯兵を置いている様だ。


 ワクワクの外交官の書簡からは、スィーンの朝貢国であるマラッカを征服したことがスィーンに知られており、スィーンから外交を拒否されたため、武力で侵略しようとしたものの、失敗したと書いてある。

 その後、スィーンとワクワクの間にあるリュウキュウなる国にも現れたが、マラッカとスィーンの件を知られており、入港を拒否されたそうだ。

 しかし、ポルトガルの商人たちはスィーンへの入国を拒否されたものの、最近は活発にスィーンの港に現れているらしい。


 我が帝国は陸軍に主軸を置いており、海軍の主力も地中海に置いているため、インド方面に援軍を出すのが難しい状況だ。

 アチェ王国と非公式に同盟を結んだのも、ポルトガル勢力をマラッカ一帯から駆逐するためであったが、支援しているものの、中々上手くいっていない。


 そんな時に、アチェ王国にいるワクワクの外交官から非公式ながらも書簡が届いたのは、数少ない朗報と言えるだろう。

 その外交官の主は、ワクワクのアウトクラトール(東ローマで皇帝を指す称号の一つ)に仕えるヴェズラザム(大宰相)の息子だそうだ。

 その外交官がアチェ王国を訪れたのも、我が帝国に外交使節を送るため、我が帝国の言葉や礼法を学ぶためらしい。

 ワクワクの外交官の話では、ポルトガルに侵略されないため、我が帝国から支援が欲しいそうだ。

 特に様々な技術を持つ者を派遣して欲しいとある。

 本当にポルトガル勢力を駆逐しようとしているならば、技術者を派遣しても良いだろう。

 我が帝国の力を東洋まで届かせるのは、現状では難しいからな。


 ワクワクと言えば、我々にとっては幻の黄金の国である。

 ポルトガルが勢力を拡大していると言う不本意な知らせが届いたものの、そんな国から外交使節が来るとなれば、自然と気分が高揚してしまう。

 我が帝国の外交官は、来年に来るように伝えたそうだが、来年に使者を謁見出来るかは分からない。

 今もまだオーストリア遠征の最中である。オーストリアが戦端を開こうとしないため、互いに睨み合っている状況だ。

 このまま戦にならないならば、来年には謁見出来るかもしれない。


 目の前には、ワクワクの外交官からの贈り物である螺鈿細工や金蒔絵の漆器の箱が置いてある。

 朕は一目でこの美しい箱を気に入ってしまった。こんな美しい箱を作る国の使者と早く会ってみたいものだ。

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