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中井戸村

冒頭の一人称は「私」ですが、領地に着いてからは領主らしく一人称を「わし」へと変化します。

 我々、西村庄五郎正義一行は、2000の兵を連れ、所領となった可児郡中井戸村へ向かった。


 「可児郡は平地が広がっていて、なかなか良さそうな土地だな」


 私が思わず呟いたら、瀬田左京が反応した。


 「そうでございます。可児郡は・・・」


 瀬田左京は可児郡出身だったので、可児郡についてベラベラとしゃべってくれた。


 可児郡の有力な武将となると、明智長山城の明智氏、妻木城の妻木氏や久々利城主の久々利氏らしい。

 明智氏は有名な明智光秀の出身一族で、妻木氏は焼き物で有名な瀬戸と山を隔てて反対側に所領を持っており、品質の高い焼き物を生産しているらしい。

 久々利氏は、私を殺す久々利頼興の所領である。久々利も現代では良質な土を取れるので焼き物が出来るはずなのだが、特に焼き物は生産していないようだ。

 久々利氏はどうせ、私を殺そうとするので、所領を奪ってやりたいところではある。


 そんなこんなで、瀬田左京が地元話をしながら、中井戸村へ到着したのであった。


 先触れを出していたので、空いてる家などは用意させている。

 それでも、2000となると家の数が全然足らないので、新たに家を建てねばならない。


 兵たちには、漢の高祖劉邦に倣い「殺すな、傷付けるな、盗むな」の法三章に加え「犯すな(強姦するな)」を加えた平時における軍法四条を伝えた。

 しかし、よく分かってない者もいるようなので、見せしめになる者が、何名か出そうである。


 そんなこんなで、西村正義一行は、中井戸村に到着した。

 到着の際は、中井戸村の乙名(室町時代の村の長老の呼び名)らしき老人を筆頭に村人たちが出迎えてくれた。


 「領主様、ようこそお越しくださいました。私が中井戸村の乙名でございます」


 「出迎え、大義である。わしが新しく中井戸村一帯の領主となった西村庄五郎正義じゃ。

 此度は、養父上の命により、中井戸村の南にある高山に城を築くこととなった。2000の兵を加え、中井戸村に居を構える故、よろしく頼む」


 「ははぁ。しかし、2000の兵が住む場所等ありませぬし、食料等はどのようにすれば・・・。」


 乙名が2000の兵を留めることに不安なのか、戸惑いつつも尋ねてくる。


 「食料については心配いたすな。食料と銭は当分は稲葉山の養父上が出してくださる。

 そして、家は各家に数名ずつ泊めてくれ。当分は兵を使うことがない故、自分達の家は自分達で作らせるつもりじゃ。村の者には済まぬが、手伝ってくれ。その分、農作業などは兵に手伝わせる。

 わしの家も出来上がるまでは、空き家で良い。」


 「畏まりました。では、領主様の為に、御用意した家に御案内いたします」


 食料と家の心配が解消したのか、乙名は私の住む家へと案内してくれた。

 その家は、乙名の家の次くらいにそこそこマトモな家であった。

 元々は、乙名の分家の家だったみたいだが、流行り病で家の多くの者が亡くなったため、生き残りは乙名の家に移り、今では空き家になっているようだった。


 「殿が住まわれるのに、流行り病で死んだ者の家など・・・」


 瀬田左京が不満気に愚痴を溢す。


 「左京、そんなこと気にしておっては、どこにも住めんぞ。思ったより立派な家ではないか」


 ここで、家臣たちの士気が下がっては困るので、私が率先して家の中へ入った。


 大島甚六と瀬田左京に各兵の状況を掌握させに行くとともに、厠の位置を決めさせ、厠を作るように指示をした。

 村も一応は厠があるようなのだが、その数は少なく、圧倒的に数が足りない。

 そこら辺の山の中で済ましても良いが、夜間など危ないし、どこでしたのか分からないのでは、衛生的にも良くない。

 そのため、村から少し離れた位置に厠を作らせることにしたのだ。


 私と黒田重隆、多羅尾光俊は乙名から村の現状を聞くことにした。

 中井戸村の人口は300人ほどで、田畑は湿田とのこと。

 湿田ではなく、乾田にしたいので、木曽川沿いというのは都合が良いのだが、灌漑設備が無いため、新たに開墾する必要があるな。

 そもそも、中井戸村を兼山の町にする予定なので、湿田も農家も邪魔なのである。

 無駄に数の多い兵隊に開墾作業も行わせるしかないな。

 田圃に出来ない場所には、粟や稗、蕎麦を植えているようである。

 あまり税収は期待できないな。


 乙名にカラスウリとキカラスウリが近辺にあるかを、特徴を伝えて聞いたところ、山の中に自生しているようだ。

 カラスウリとキカラスウリの種子や塊根を回収するとともに、何とか増やすよう指示をしておいた。


 取り敢えず、中井戸村と高山の地形を確認し、築城と城下町整備をしなければならない。


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