人形使い 13
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「・・・怖い若造だね。全部あっているよ」
関心した音色をもつ老婆の声。さりとて、敵意すらも込めた強い意志を体全体で放っている。弱弱しい老婆の姿でありながら強い意志を持った人間の気配だった。
介護職の男性の人形。
正直、一目見ただけでは人形とはわからなかった。行動も全部人間そっくりだった。呼吸も体臭も素振りもだ。彼の観察眼ですらわかりづらいほどに完成された操作術。
だから見抜いてなどいない。人形か人間かを見極めたわけじゃない。人形がそばにいて老婆がいたからというものではない。
老婆が顔を向けることなく、背中を向けて語る。
「初めてだよ、私の人形を気づいたのはねぇ。どうしてわかったと聞いても?いや、私への先ほどまでの質問を答えるほうが先かい?」
彼は口に出さず、顔を横に振った。老婆からは見えない彼の素振りでも、老婆はうなずいて見せた。
彼の推測通り、人形の視界は老婆の目となっている。人形の位置から彼を見れても、老婆からは彼が見えない。それでも彼の反応に対し、反応を返せることが確証の一つになった。
「・・・・この大通りを通った女性が、子連れの方以外、貴女しかいなかったので・・・」
彼は最初から特定理由を絞っていた。
女性である。
男性と女性。性別の垣根による思考は平等でなくてはいけない。立場も労働も含め平等でなくてはいけない。原則としてはそうだ。しかしながら男性が持つ感性と女性が持つ感性はどこか違うのだ。感情的になれず理性を持っているのは男性が多い。正しくは環境がそういう風に男性を作ってしまう。女性の場合は感情を多く持ち、どんな事柄にも思いを寄せられる素直さを持つ。正しくは環境がそういう風に女性を作ってしまう。
男性も女性も環境が持つルールをお互い守る。
その中で確かに女性は女性らしくあろうとしている。男性は男性らしくしている。無意識化にある強制された常識の中で、個性を出しているのだ。
男性だの、女性だのと決めつけるのもよろしくはない。男性にも女性のような思いを持つ人はいる。女性の中にも男性のような思いを持つ人はいる。
その特定基準こそ、心に根付く区別の意識でしかないのだ。
だが彼は女性と断定した。
見た目が女性か。
心が女性か。
心が女性であれば女性であるし、体が女性ならば女性なのだ。変わらず複雑な状況であっても、どちらかは女性なのだ。体が男であっても、心が女性であるならば女性である。されど体は男なのだから、男なのだ。
この場合彼が優先したのは心のほう。
「どうして性別が女だと思ったんだい?」
「・・・綺麗な男性の人形です・・・・・もし、自分がどんな人形を作れたとして、その姿を演じれるのであれば・・・それは自分とは別の姿で作るのではないかと思いました・・・男性であれば女性を・・・女性であれば男性を・・・自分とは異なる性別、なりたくてもなれないものを・・・その身に演じるため作るのではないか・・・そう考えもしました・・・男性の人形の割合が多いのだから、人形遣いは女性である・・・そう考えもしました・・・ただ断定した理由はそれではありません・・・」
老婆は顎で続きを促した。
「・・・清潔感です・・・この言葉の差は貴女なら理解できるはずです・・・」
その瞬間、老婆は深くうなずいて見せた。それは納得したようにも見えて、理解しがたい思いが見て取れた。わかりそうで、わからないといった反応だった。
「・・・僕と貴女。男の心を持つ僕と、女性が思い描く男の心は違います・・・女性が作る男性の姿は綺麗で、格好がどことなく良くて、容姿ではなくても強い何かしらの魅力がある・・・それは男性が描く女性のようなものと同じ・・・かわいくて、優しくて、無邪気なところといった要望があるのではないかと・・・・男性の都合の良い女性・・・女性の都合の良い男性・・・。・・・もし女性が男性を描くならば・・・・つま先から頭部まで整えて・・・それに見合った服装を求めていく・・・その求める基準が一緒にいても自分と釣り合うような恰好ではないか・・・そういう思いがあったのではないかと・・・僕はある程度整えたら、そこで終いです。少なくても・・・・貴女の人形のようにはしない・・・・誰かと一緒に釣り合うより、自分に合うかどうかなんです・・・僕にとっての清潔感は、寝ぐせがついてない・・・歯を磨いて顔を洗う程度のもの・・・・」
女性に好かれたいと思う男性ならば、話は別である。女性に好かれたい男性は、女性が描く男性の姿を必死に作り上げる。されど全部の男性がそういうわけでもない。
「・・・貴女の人形は、・・・清潔感が強すぎる・・・・もう一ついうならば、男性にはいろいろな形を見せた人形を作っているのに、女性に対しては・・・母のような姿を描いたものが多いんです・・・・男性が押し付ける女性の理想というよりは・・・女性が女性自身に押し付ける制約に近い・・・・」
彼が見た人形はほとんどが母の姿をした人形ばっかりだった。ただほかにも女性の人形はあれど、慎ましいものや、お淑やかなものといったものもあった。されど窮屈さもあった。女性の現実をしる、女性自身が作り上げた苦悩がどことなく感じ取れてしまったのだ。
隣の芝生は青く見える。
女性が女性に対し制約を強くかけ、その制約に当てはまらない男性は自由であると思っている。
男性が男性に対し制約を強くかけ、その制約に当てはまらない女性は自由であると思っている。
男性は自由と嘆く女性も。女性は自由と嘆く男性も。
お互いを知らなすぎるがゆえに起きることでもある。お互いを知りすぎた故に起きることでもある。
「・・・・男性と女性・・・・お互いは近くて遠い存在なんです・・・・お互いを表面上知ることはできても、裏面までは見れるわけがない・・・いくら情報があっても・・・・経験ができないのだから・・・」
彼は経験信者である。物事とは経験を通じて、知識となる。勉強として経験した事柄がスキルになる。情報が流れていく社会は、現代も異世界も変わらない。伝達する手段が違うだけ。そんな情報だけを知っているだけの、知識脳では話にならない。
経験だ。
経験こそが、すべての実証につながる。
「・・・女性の形が固定されたものが多かった・・・女性自身が女性という立場の枠を決め苦しめていく・・・だから固定された立場の女性人形しかいなかった。・・・貴女が持つ知識からみた男性は、その苦しめの中にはない。だから男性の人形が自由な形をもっていた・・・そう考えると、やはり女性しか考えられないんです・・・」
彼は言外に問う。間違っているかどうかの答えを老婆の反応を視線で促した。
老婆は頭を横に振る。否定。
「いいや、お前のいったとおりさ。若造・・・気味の悪いぐらいに当たっているよ。まさか人生の最後に起こす大仕事の前に、お前みたいなやつに出会うなんて」
老婆は聞こえるように呟いた。
運が悪いと。
「・・・僕も同じ気持ちです・・・他にも貴女を特定した理由がありますが・・・・お聞きしますか?」
「いくつもあるのかい。やっぱり運が悪いね。目を失った時から何も変わっちゃいない。せめてあの時の無謀さを反省できてれば、今は違うんだろうけどねぇ。せっかくだから聞いておくよ」
彼はそのまま続けた。
「・・・・貴女は一番疑われない立場の人間でもある・・・目が見えない・・・体が弱い年配・・・人々は誰もが思います・・・何かしら事件があったとしても、貴女だけは選択から外す・・・圧倒的に弱い立場の人を誰もが貴女だけは絶対にできないと信じ込むんです・・・それらは人の良識から起こる、保護の意識。・・・行動的であり、効率的である・・・・そんな貴女の考えを弱さが隠す。・・・・弱いから優しいのでなく、弱いから優しくされる・・・・どんなときにも行動を起こす人間は、守られる立場を知っている人間は、直接現場を赴くと思っていた・・・だから弱そうな人も実は特定する基準でした」
人形に任せて、安全なところに居続けない。
そうではなく。
人間の活動範囲全体が弱すぎる立場の人の安全地帯なのだ。
危険をおかしてまでの得られるものは、情報。彼が流した人形を特定できる人物、すなわち彼そのもの。彼をだますために、本気で人間を模倣した人形をつくって連れてきた。騙すためには、本物がいる。偽物交じりの中に本物が必要だった。
その本物は老婆。
偽物は介護職の人形。
この一つの本物と偽物を混ぜたもので、騙せるかどうかで相手の能力を図ったのだ。
老婆は彼を見ない。介護職の人形が彼を睨みつけている。老婆の目は見えないからこそ、人形の表情こそが老婆の表情なのだろう。声そのものは老婆のものである。老婆の口から出て、反応も老婆自身が残すこと。この人形の表情は無意識によってなったものと彼は思っている。
「ここまで暴露したところで、若造。お前は一人だ」
声を低くし現実を突き付けてくる老婆。現状は彼は一人で、老婆は人形を一体つれている。戦力は老婆のほうが上であろう。人形として性能が高いのか、強い自信こそが状況を物語る。
「・・・貴女も一人です・・・貴女と僕・・・同じ立場でしょう?」
だが彼も負けじと言い返す。現実には現実を。現状は彼一人である。老婆は人形を連れていようと、人間は老婆のみ。戦力は相手が上かもしれないが、彼も同様に負けを認めるわけにはいかなかった。
「お互い同じさねぇ」
「・・・ええ同じです。・・・貴女は少しばかり情報を持っていないことを除けば・・・同じです」
「わけのわからない噂のせいで人がいなくなってね、おかげで人混みに人形を混じらせた情報収集ができなくなった。だからお前の動きが読めず苦労した」
彼の牽制と嫌味に対し、老婆も素直に認めた。
老婆は認めつつ、彼に対し牽制を放つ。
「でも人形が温存できた。その人形はおおよそ100。どこぞの誰かが勘違いしているかもしれないけど、私は人形を100体同時接続できるんだよ。その人形は今どこにいると思うかい?」
老婆は牽制と同時に挑発しているのだ。笑い気味の言葉に、先手を打ったという目線。
読まれてばっかりだとストレスがたまっていたのだろう。老婆は彼に対し、そういう会話による先手をやたらとってきていた。
だが彼もまた別の先手をうっていた。
「・・・僕にはご存じの通り魔物がいます。・・・この場に来ていないのは理由も含めてお判りでしょう?・・・貴女を呼ぶために僕は一人でいます・・・この場にも近くにも勿論おりません・・・さて・・魔物たちはどこにいるでしょうか?・・・」
彼も老婆も自分の戦力を連れてきていない。この場にも近くにも持ち込んでいないのだ。理由はお互い同じ。彼は老婆を呼び出したかった。戦力を持ってきていた場合絶対来ないからだ。相手は効率的で現場主義の人間。そんな人間が相手の戦力をみたらくるわけがない。隠していると思ったら来るわけがない。
老婆も同じ。依頼人たる二人の護衛者。つまり彼を見たかったのだ。人形をこの場に、近くに連れてきたり隠していたら、来るわけがない。無防備に近い形じゃなければ相手と接触を図れない。
「ああ、確かに魔物を見つけたよ。私の獲物の近くでいるねぇ。それどころかトゥグストラなんかは、離れたところで警戒している。二人を見守りながら行く先に進んで先行しているねぇ。先手に罠があった場合もトゥグストラなら対処できるとふんだわけかい。よく教育された魔物だこと。リザードマンやオークは二人から離れやしない」
老婆の視界に移るものを彼は知らない。だがきっとその光景から予測するに、人形は二人の前に姿を出していないのだ。遠くから気づかれない範囲で見通しているのだろう。そして、そこはベルクではない。
「・・・お互い考えることは同じです・・・」
「よく言うよ、若造が。お前が私に手法を合わせてきただけだろうに」
彼は人形使いの性格を予想。、女性であると推定。そして古い考えにとらわれた人間だという事は会う前から考えていた。もしこの十字路に来た際、それは一人でしかない。ならば他の人形はどうするかといえば獲物の近くに置くと思ったのだ。
この近くに人形を隠すということはしないとも考えた。
人形使いは現場主義で効率主義である。
噂を流し人を極端に減らした以上、人形を隠す場所などはない。
屋内で隠そうにも十字路なのだから難しいだろう。それにそうなったとしても手は考えていた。
「・・・人形がいなければ貴女は無力だ・・・僕も魔物がいなければ無力だ・・・」
老婆が指を鳴らす。
介護職の人形が白目から復帰し、彼を睨みつけた。
「勘違いするなよ、若造。私にはこの人形があればお前なんかどうとでもなるんさ」
老婆は現状、彼よりも強い。人形がなくても彼よりは強い。そもそも人形を操れる技術を持っている時点で彼を超えている。社会的においても、人形の操作技術、人形生産技術は立派なものだ。戦闘においても彼は老婆に負けていた。
人形だけではないはずなのだ。
老婆にはまだ能力があるはずなのだ。
老婆は目が見えないのが弱点なだけ。体が年配のものだからそれの弱さもあるだけ。培った経験による修羅場の数は彼よりも遥か上だ。
彼は介護職の人形に向き直った。その人形の目と彼は目を合わせた。
「・・・奥の手というものですか・・・」
人と直接目を合わせるなど彼には難しい。しかしながら人形というものの場合彼は拒否反応はなかった。心に奥底に眠る、対人においての逃避行動が現れなかったのだ。
「・・・僕の負けです・・・ええ」
彼は口端をわざとゆがめた。それは尊大になるように見せた笑みだ。さすがの彼も表情の変化をさせることは恥ずかしさもあった。人前で笑う、人形が相手でも、老婆は人形を通してみているのだ。
「なぜ笑う、何がおかしい」
老婆はそこに対し、何とも言えない居心地の悪さを感じたのか。強い反発の意志を彼に向けていた。その次、今の状況下におけるものは別に誰も不利ではない。
老婆だって分かっているのだ。
彼がこんな程度で負けを認めるほど追い詰められてはいないことを。
「・・・お互い同じなんです・・・連れてきた戦力も同じ・・・」
彼が指を鳴らす。その瞬間暗闇が現れ人形の視界を奪った。人形の頭部を覆うだけの暗闇は、決して破壊的な能力を持つわけじゃない。だが人形の視界が閉ざされれば、困るものが一人いる。
「見えない、暗い。暗い何をした。何をした!!その人形は簡単に壊れるものじゃない!!」
老婆はしどろもどろになる。人間が持つ視力を失っているがゆえに自立ができない。そのくせ老婆は状況を把握しようとしている。慌てふためいているのは、突然のことだからだ。自信をもって連れてきた人形が突然目が見えなくなった。そんなことはありえない自信が、老婆を慌てさせた。だが老婆の経験、年の功を考えればすぐ立ち直って次なる手を打つだろう。
だから彼は駆けた。
貧弱な体を押し、懐に手を入れた。手にしたのは短剣。ハリングルッズの短剣だ。
鞘を投げ捨て、走った。風を体に感じながらも、速度は普通。彼の全力はこの世界では遅い。小さな子供程度であれば勝てる速度なのだ。それを知りながらも彼は全力でただ老婆に向けて掛けた。
背中を向けたままの老婆の背中に切っ先を向ける形を狙う。
だが老婆は彼の走る音を耳にし、即座に反転。
彼と正面を合わせるようにし、手を向けていた。
老婆の向けた手は少し輝きだした。この世界の住人が使う魔法と呼ばれるものだろう。少し踏み込めば切っ先が入る距離で彼は足を止めた。短剣の切っ先だけを老婆に向けたまま、空いた手で指を鳴らす。
人形の頭部を覆っていた暗闇は晴れた。
老婆の視界が人形を通し、現状を教えたはずだ。
「・・・お互い・・・同じですね」
「若造、若造!!お前、私をなめたな!!!人形の視界をわざと戻したのも、おちょくるためか!!!貴様、きさま!!!」
彼は落ち着き、老婆は感情のまま荒れた。老婆からしてみれば彼のやり方は手加減していると思われているのだ。彼は常に全力であるし、この世界基準では極端に遅いだけだ。むしろこの世界の老婆の動きが速すぎた。
人形の視界を奪って、老婆が慌てた。その間10秒にも満たない。そんな秒数で勝手に臨機応変に対応できる老婆こそスペックが高いのだ。
お互い殺せる距離だ。
むろん、彼は殺さない。脅しはしただろうが。彼にしては珍しく刃物を使って脅すつもりではあった。
「・・・この場はお互い手を引きましょうか?・・・それとも続けます?・・・」
彼が空いた手で指を鳴らす。
人形の頭部を暗闇が覆う。老婆の視界が人形と連鎖し、暗闇に落ちる。彼の指が再びなった。暗闇が晴れて、視界が戻る。
再び指がなって、暗闇が訪れる。
そして晴れる。
人形の視界は彼の思いのまま。老婆の視界も握ったと同じこと。それは老婆も分かっていることだろうが、それでも年を重ねてきた人間の知恵がある。
「いやだと言ったらどうするだい?」
老婆はたとえ視界がなくても、手はあるのだ。
「・・・もし嫌だといえば、罵倒します・・・・・・手を引けといったのがわからないのですか?・・・そんなだから人を簡単に敵に回すんです・・・効率的なのは結構、人が最も落ち着く家を壊すのも結構・・・貴女が優秀なのは、元から考えていました・・・でも・・・有能でも優秀であっても・・・引き際を間違えば無能という評価に変わります・・・こんな風に罵倒します」
それは彼のあきれた声にも似ている。しかし違う、彼は確実に圧力を与えるために、表情をとがらせていたのだ。冷酷なまでに、相手を甚振る怪物の姿を見せていたのだ。
それに大したことのない内容である。
だが彼が言うことは、実際にそうしてやるという意志表示でもあるのだ。彼自身、そういう風評をもってくるため努力する。老婆も自分の心、有様を読む彼が言う罵倒を言葉だけとは思わない。
あくまで優しく言葉だけで済ませているだけの脅しなのだ。
そして、彼としてもこれはわざとではない。
素だった。
お互い沈黙が下りた。
やがて先に口を開いたのは老婆だ。しぶしぶといった態度でありながら、手をひらひらと振っていた。
「若造、お前の本性が見えた気がするよ。・・・いいさね、今回は手をひこう」
彼の提案に老婆は乗り、彼は強くうなずいた。
「・・・お互いよき提案でよかった・・・」
彼の表情は無。安心感も一切見せない。老婆も無。安心感など一切ない。
お互いは武器を突きつけあっているのが現状だ。彼は短剣を、老婆は魔法を放つ体制で手を。お互い攻撃をしようと思えば、すぐにできる。そして人形が老婆にあるのであれば、彼にあるのは黒い闇を放つ何か。
一歩、彼は引いた。人形からも老婆からも離れるように一歩後ろ向きで離れた。介護職の人形は老婆のほうに歩み寄った。老婆の手を取り、肩をとって一歩離れていく。
彼が一歩離れれば、老婆一行も一歩離れる。
短剣の切っ先を、魔法を放てる手を。
お互い向けながら、背を見せずこの通りからゆっくりと離れていった。
悩むから更新が遅いんです。