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異世界トランプ  作者: 32バチ
第一章
8/16

7.異世界始めての夜

 瞼を開く。

 するとそこには、満天の星空が広がっていた。


 あっ、夜か。

 ・

 ・

 ・

 そうだ。

 僕はストレルカさんを助けるためにサイレントベアと戦ったのだったな。

 サイレントベアには、とどめは刺さなかったものも脳天をぶち抜いたのである。

 きっと死んでいるであろう。

 何とかストレルカさんを救えたのである。

 よかった。


 そう思いストレルカさんを寝かしておいたほうを見る。

 そこには、ストレルカさんはいなかった。


 ストレルカさんがいない。

 なぜだ。

 どうして。

 サイレントベアは確かに倒したはずである。

 サイレントベアにつれていかれたのと言うことはことは考えられない。

 ならなんだ。

 捨てられた。

 何で?

 サイレントベアから、助けてくれようとした僕を?

 まぁ、仕方がないのかもしれない。

 会った初日に「異世界からきました。」とかいう頭おかしい奴の世話はしたくないだろう。

 あいにく僕は生きていく術も身に着けた。

 多分だが、モンスターを狩って皮などを売れば多少なり金になるだろう。

 しばらくはそれで食いつないでいけばいい。

 そういえば、ストレルカさんがサイレントベアのことをモンスターランクCと言っていた。

 それ相応のモンスターにも僕なら対処ができるだろう。

 そうだ。

 金を稼いでブラリブラリとこの世界を旅しよう。

 そして、聖火と合流してこの異世界を満喫すればいい。


 よし。

 そうと決まれば明日の朝一で行動に移さなくては。

 そう思い、横になっている体を起こす。


 あれ、体が痛くない。

 意外にもダメージは受けていなかったっぽい。


 そのまま立ち上がる。

 そう言えば、♠Aのトランプは回収していなかったはずである。

 回収しにサイレントベアの元に向かう。


 おっ、いた。

 今更ながら僕がこんなに大きなデカ物を倒せたとは思えない。

 きっと、この長剣のおかげであろう。

 こいつがなければ僕はサイレントベアは倒せなかった。

 運がよかった、というのもあるのであろうが……考えないことにする。

 サイレントベアの回りを見ていくと長剣が落ちていた。


 あった。

 心の中で長剣にありがとうと言いながら拾った。


 この長剣、どうやってトランプに戻すのだろう?

 謎だ。

 トランプを長剣にしたときは、感覚的に言葉が出た。

 どうしようか。

 そうだ。

 こんな感じの詠唱で戻ったりはしないのだろうか。


「今、汝に秘められし力を封印す。」


 そう唱えると長剣はトランプに戻ったが、元の絵柄と少し変わった所があった。

 トランプの真ん中には、先ほどまで僕が手に持っていた長剣の絵柄がのっている。

 多分これからもこの♠Aのトランプは詠唱1つで長剣となると言うことだろう。

 ♠Aのトランプを眺めていると不意に後ろから声がとんできた。


「あっ、シズ君。起きたんだね!」


 どうやら今までの妄想は、杞憂に終わったらしい。





 どうやらストレルカさんは、僕よりか早く意識を取り戻したらしい。

 すると、隣りで僕が気を失っていることに気づき、回りを警戒して見渡すとサイレントベアが死んでいた。

 ストレルカさんはうまく状況が呑み込めなかったらしいが、もうすぐ夜になるということもあり急いで食料とタキギにできるマキを探しに行ったらしい。

 そして今に至るという……。


「ちょっとまってね。今薪タキギするから。」


 そういうとストレルカさんは手慣れた手つきで薪を配置し始めた。

 しかし、火をつける物がない。

 一体どうするんだろう。


「ストレルカさん、火はどうするんですか?」


「火はね、こうするのよ。」


 ストレルカさんは、リュックの中からオカリナを取り出しオカリナを吹き始めた。

 ワンフレーズ位を弾きおえるとオカリナから口をはずした。

 すると、どうでしょう!

 薪に火が点いたではありませんか!


「私が出来る魔法の一つよ。」


 優しく微笑みかけられながら言われた。


 魔法、やはりこの世界には魔法が存在するのか。

 あるとは思っていたが、目の前で見れると心に来るものアあるな。


「魔法ですか。他には何が出来るんですか?」


 興味が出たので聞いてみた。


「後、私が出来る魔法は水を出すぐらいだは。」


 そう言われた。

 意外に魔法は難しいのかもしれない。

 いや、魔法を使うこと自体が異世界でも難しいのだとしたら魔法を使えるストレルカさんはすごい。

 それに、魔法を目の前で見せてくれたのだ。

 この気持ちを言葉に。


「すごいですね。僕、魔法を始めてみました。」


「そお、ならよかったは。私はこれ位しかできないけど……そう言ってもらうと、とても嬉しい。」


 蔓延の笑みで言われた。

 やばい。

 かわいい。

 僕は、あまり年上とか興味なかったけど惚れてしまいそうだ。


 いかん、いかん。

 これからお世話になるのだ。

 こんな不純な気持ちを持つことは断じていかん。

 話題をかえなくては。

 そう思っていた矢先、話題を変えてくれたのはストレルカさんだった。


「火もおこったし、本題に入りましょう。」


「何でしょうか?」


 聞かれることの内容は大体想像できるが……。


「どうやって、サイレントベアを倒したの。というか私は逃げてって言ったよね。そんな無茶をしてシズ君が死んだらどうするのよ。」


 聞かれることが少し違った。

 僕はてっきり、倒し方を聞かれると思っていたが僕の心配もされてしまった。

 ここは、僕の気持ちを正直に答えるべきだろう。


「どうするかと言われても……。でも僕、逃げる時に言いましたよね。ストレルカさん。あなたを守るって。確かに最初は僕が守ってもらいましたが……。その時確かに逃げろとも言われましたけど……。でも僕は、ストレルカさんを助けたかったんです。こっちの世界に来てすぐに助けられて、僕の突拍子もない話も信じてくれて……。こんなに優しくしてくれた人を助けないわけないじゃないですか!」


 ぎゅっ!


 抱きつかれた。

 ストレルカさんから。

 あれ何で。

 いったい何が起こった。

 というか、顔が近い顔が。

 唇が妙になまめかしいじゃないか。

 しかもぎゅっと抱きついてくるから胸の感触がぁぁぁ。

 いかん。

 煩悩退散!

 やっぱりだめだ~。

 意識をそらさないと……。


「シズ君、ありがと。ありがとね。」


 ストレルカさんからの不意の攻撃をくらいあたふたしている僕に言葉をかけてくれた。


「私ね、あの時死ぬんだと思ったんだ。怖かったけどそれでもシズ君を守りたかったから……。」


 気が付けばストレルカさんの声は鼻声だった。

 相当怖かったんだろう。

 立場を逆にして考えてみるとやはり僕も怖いと思った。


「なら、何でそこまでして僕を守ろうとしてくれたんですか?」


 するとストレルカさんは、抱きつきを解除した。

 うれしいやら、悲しいやら、そんな気分である。

 そして僕の肩を持ち言った。


「重い話だけど……聞いてくれる?」


 やはり彼女の眼は涙目だ。

 そして、そんな彼女の顔は月明かりに照らされグシャグシャに歪んでいた。


「聞きますよ。ストレルカさんのためなら。」


 そう言うとストレルカさんの顔は先程よりももっとグシャグシャに歪んだ。


「ありがとう。シズ君。」


 こんな時にもっと素敵な言葉をかけられたらと思いながらも、今持てる最高の言葉を口から紡ぎだす。


「全て聞きますよ。ストレルカさんが話したいこと全て。」


「本当に……、シズ君は……彼に……アドロンに本当にそっくりだね。」


 アドロンとは、誰だろうか。

 僕は知らないが、どうやらストレルカさんは僕にアドロンの面影を見出していたらしい。

 きっと、ストレルカさんがこれから話す昔話を聞けば全てわかるだろう。


「話すのは、落ち着いてからでいいから。ねっ、ストレルカさん。」


 ストレルカさんがコクリとうなずく。


 なにこのかわいい反応。

 年上ってこんなにいいものなのかな。

 おっと、いけない。

 話がずれるところだった。

 そうだ。

 食事、食事にしよう。

 あいにく僕の手元のある食べ物といえばカロリーメイドしかないが……。


「ストレルカさん、これ食べませんか?」


「んっ?」


 ストレルカさんがこっちを見て軽く首をかしげた。

 やばい。

 反応が一々可愛すぎる。


「僕らが元いた世界の食べ物で、カロリーメイドって言うんですけど食べてみませんか?」


 ストレルカさんが、右腕を伸ばしてきた。


「もらう。」


 少し照れくさそうに物をいうストレルカさん、可愛い。

 流石にくどいか?

 まぁ、可愛いから仕方がないよね。


 僕のリュックの中からカロリーメイドのチョコ味を取り出しストレルカさんの手のひらにのせる。

 ストレルカさんがそれを受け取りてをひっこめた。


「ありがとう。」


 ストレルカさんからお礼をいただいた。

 なんてことないのにね。


 ストレルカさんはカロリーメイドの箱を見ながら何かを考えている。

 開け方がわからないのかな?


「ストレルカさん、その箱開けましょうか?」


 こちらにすっとカロリーメイドをさしだしてきた。

 やはり開け方がわからなかったようだ。


 カロリーメイドの箱を開けて、小分けになっている袋も開けて中身だけ渡した。


「どうぞ。」


「あっ、ありがとう。」


 ストレルカさんは、僕からもらったカロリーメイドをどこか怪しげに見ている。

 きっとこちらでは、カロリーメイドのような食べ物はないんだろ。

 ・

 ・

 ・

 おっ、一口食べた!

 一口食べるとストレルカの顔が少し明るくなったような気がした。

 あっ、残りを一気に食べた。

 どうやら美味しかったようだ。


 それからしばらくの間は、無言の時間が続いた。

 それを、破ったのは勿論ストレルカさんだ。


「待っててくれて、ありがとう。少し取り乱してしまったし……。まぁ、そんなことはどうでもいいのよ。それじゃあ、話させてもらうね。重いかも知れないけど気軽に聞いてくれていいから。」


 そう言うとストレルカさんは話はじめた。

 真剣な顔つきで。


「実は、私お姫様なの。」


 ストレルカさんの話は、突拍子もない発言から始まった。

次回!

ストレルカさんの過去が明らかに!!

なったり、ならなかったり♪

二日後をお楽しみに♪

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