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異世界トランプ  作者: 32バチ
第一章
7/16

6.♠A / sword

 よーし。

 どうしよう。

 取りあえず目的は決まった。

 こいつ、サイレントベアを倒す。

 と言うより倒すしかない。

 ストレルカさんが気を失っている以上、逃げるという選択肢はない。

 もしも僕がストレルカさんを担いで逃げるのは論外だ。


 まずは、何をするべきか?

 ストレルカさんを安全な場所に移そう。

 ストレルカさんは、サイレントベアの特殊攻撃で後ろに吹き飛ばされている。


 ストレルカさんの元に急ぐ。

 首もとをさわる。

 脈はある。

 良かった。

 死んでいなければどうにでもなる。


 ストレルカさんを担いで身近にある一番大きな樹木を探す。


「あれがいいかな。」


 僕は、一番大きな樹木の元に走った。


「ここでいいかな?」


 ストレルカさんをゆっくりとおろす。

 無理な体制にならないように樹木にもたれかけさせた。

 多分ここが一番安全だろう。

 ついでにと僕がからっているリュックも置いといた。

 サイレントベアの方を見る。

 サイレントベアは、走らずにゆっくりとこちらに向かってきていた。

 どうやら僕一人ではお話にならないらしい。

 熊にまでなめられる。

 いや、熊だからこそだろうか?

 まぁ、そんなことはどうでもいい。

 今はサイレントベアを倒すことだけを考えよう。

 サイレントベアと戦う前にストレルカさんに声をかける。


「勝ってきますね、ストレルカさん……。」


 まだサイレントベアと僕の間には、ある程度の距離がある。

 どうやって倒そう?

 まだ、案は出てこない。

 流石に攻撃手段が少なすぎる。

 攻撃できる手段は、ストレルカさんが持っていたコピスだけだ。

 取りあえずコピスを取りに行こう。


 コピスはどこにあるかな?

 周りを見渡してみる。

 あった。

 場所はここから2時の方向に50メートル。

 以外にもかなり遠くまで飛ばされてしまったようだ。

 サイレントベアのほうを見る。

 まだ距離はあるがもうそろそろ30メートルをきる。

 早く取りにいかなければ。


 コピスのもとへ全速力でダッシュする。

 これくらいで息は上がらない。

 本当に鍛えておいてよかったと思った瞬間である。

 もしも今ので息が上がるのならばサイレントベアには勝てない。

 その時点で、あの世行きである。


 コピスの元までたどりつくと地面に刺さっていたコピスを引き抜いた。


 目の前が一瞬真っ白になる。

 何があったのだろうか。

 そう思った次の瞬間ポケットが発光し始めた。


「ポケットが光ってる?」


 不思議に思った僕は、光っている方のポケットをまさぐった。

 するとポケットには違和感があった。

 ポケットの中に手を入れて、違和感の正体を探る。

 違和感の正体をポケットから出して確認してみた。


「トラ…ンプ……?」


 確かにトランプである。

 取り出したトランプは徐々に発光がおさまっていく。

 そういえば、サイレントベアから逃げる時に邪魔だからとポケットに入れたのであった。

 それがなぜ発光を?

 少し考えてみるがわからない。

 とりあえず気にしたら負けだ。

 今は目の前のサイレントベアに集中すべきだある。

 忘れよう。

 そう思いまたポケットの中にトランプを入れようとしたときに1つのトランプに目がとまった。

 そのトランプだけ手元に残しほかのトランプはポケットの中に入れる。

 トランプを見てみる。

 そのトランプは、♠A。

 なぜ目がとまったのだろうか?

 他のトランプを1枚だけポケットから出し見比べてみる。

 なるほどそういうことか。

 確かに違いがあった。

 他のトランプをもう2・3枚取り出す。

 やはり違う。


 ここで1つの仮説が僕の中で出来上がった。

 もしこの仮説が正しいのであれば、サイレントベアにも勝てるかもしれない。

 いや、勝てる。

 そう断言できる。

 なんてったって僕はDOUBLE STARの参謀だ。

 ピースがそろえば、作戦はねれる。

 実行部隊の聖火がいないのが玉に傷ではあるが問題なかろう。

 この作戦を実行できるぐらいの体力は持っている自信がある。

 というより、ストレルカさんを救うにはこの方法しかない。

 しかもストレルカさんには僕が命をかけてもストレルカさんは守ると言ってしまっている。

 ここで逃げるのは男ではない。


 よし。

 頭の中で自分の立てた作戦を実行したイメージをしよう。

 ・

 ・

 ・

 イメージでは完璧だ。

 きっとうまくいく。


 そう思いサイレントベアのほうを見てみる。

 するとまだサイレントベアと僕の間には20メートル近くの距離があった。

 これは、非常にまずい。

 この距離感はきっと特殊攻撃を撃ってくる距離感だ。


 どうしよう。ここで一度サイレントベアから特殊攻撃を受ける場面だろうか?

 なぜなら特殊攻撃を回避できるかもしれない攻略法がある。

 ここで一度試してもいいかもしれない。

 だが熊は頭がいい。

 ここで僕が特殊攻撃をうまいぐわいにかわしたらもう特殊攻撃は撃ってこないかもしれない。

 しかしそれは妥協点であるかもしれないし、杞憂に終わるかもしれない。

 ならここで一発回避しとくべきだろう。


 僕とサイレントベアの距離は変わらず約20メートル。

 そして、ストレルカさんとの距離感は50メートルで10時の方向だ。

 これならサイレントベアが僕に向かって特殊攻撃を放ってきてもストレルカさんに被害はない。

 不幸中の幸いだ。


 サイレントベアが右腕を振り上げた。

 特殊攻撃が来ると身構える。


 《ドォォォォォォォォ》


 1段階、サイレントベアを見ながらストレルカさんの方に少しずつ近づく。

 最後のピースは僕のリュックの中に入っている。

 これさえそろば、作戦が決行できる。


 《レェェェェェェェェェ》


 2段階、もっとストレルカさんのもとに近づく。


 あれ?

 これは?

 意外な所に特殊攻撃の弱点があった。

 それは、サイレントベアが特殊攻撃を放つために右腕を振り上げたらそれからの移動ができないということである。


 ならと思い、ストレルカさんのもとにダッシュした。

 サイレントベアは、僕がこのことに気づいたことを直感にすぐさまに特殊攻撃を放つ。


 だがもう遅い。

 僕は、すでに30メートルを走っている。

 あたるはずがない。

 少しの風圧を感じたがたいしたことはなかった。

 だがこの距離でこの風圧だと直でもらうとまずいと思ったのは言うまでもない。


 というまにストレルカさんの元にたどりつく。

 僕のリュックから携帯を取り出す。

 あった。

 最後のピース。

 これで、作戦を実行にうつせる。

 ついでに他にも何か役に立ちそうな物を探す。

 ビー玉があった。

 ビー玉か!

 こちらでお金になればと思って持ってきたが、ストレルカさんもいることだし今は生き残ることが最優先だ。

 ビー玉をトランプが入ってない方のポケットに入れる。


 僕は、3時の方向に走り出す。

 走りながら携帯を操作する。

 携帯を操作することに集中して、少し地面に足下をとられたが問題ない。

 走り続ける。


 そして、ちょうど僕がさっきいたところとサイレントベアを挟んだ対角線上に20メートルの位置につく。


 場所はこんなものだろう。

 もう一度作戦の流れを頭の中に思い浮かべる。

 ・

 ・

 ・

 よし。

 いける。


 まずは、サイレントベアと一定の距離をおく。

 サイレントベアが動かなければ僕も動けない。

 一手目はサイレントベアにうってもらう必要があるからだ。

 サイレントベアは、徐々に僕の方によってくる。

 僕も徐々に後ろに下がる。


 これじゃない。

 僕がサイレントベアに望んでいる行動はこれではない。

 さぁ、どうする。

 どうやったらあの行動……、いや、あの攻撃をしてくれるだろうか?

 僕がしてほしい行動、それは特殊攻撃である。

 まさかさっき避けたのでもう放ってこないと言う可能性があったが、それが現実になったのだろうか!

 いや、判断するにはまだ早い。

 こちらを警戒して、まだ攻撃に移れていないのかもしれない。


 どうする、どうする、どうする。

 サイレントベアは、今だにこちらに近づいてくる。

 これは本当に、こちらが何か行動をしないと特殊攻撃をうってくれないかも知れない。


 だがしかし、手元のあるものといえば最低限必要なピースしか持ち合わせが……。

 いや、あった。

 トランプが入っていないほうのポケットの中に……。

 そう、何か使うかもしれないと思って持ってきていたビー玉が!


 ビー玉か。

 もしかしたらいけるかもしれない。

 その前にもう一度携帯を操作しセットして置いた。

 これで準備はOKだ。


 あとは行動に移すだけ……。

 本当に僕にできるのか。

 いや、違う。

 やるんだ。

 やってやる。

 息を吸って、吐く。

 何でもない日常的行動が僕を妙に落ち着かせてくれる。


 よし。


 作戦ミッションスタートだ。


 まずは、サイレントベアの方に向かって走る。

 多分サイレントベアは、〈鴨が葱をしょってきた〉と思うだろう。

 そしたら、サイレントベアはこう思うはずだ。

 自分の手が届く範囲に来た瞬間に勝負を終わらせようと。

 だが、甘い。

 僕は今回そんな近くまでは接近しない。


 走っている最中に体勢をかがめてコピスを持っていないほうの手で砂をつかむ。

 サイレントベアと僕との距離が十分に縮まり、尚且つサイレントベアのテリトリーに入る前に体を停止させる。


 今だ。


 僕は思い切って左手につかんでいる砂をサイレントベアの目に入るように顔に向かって投げた。

 サイレントベアは、僕との間合いを気にしすぎていて砂に対する反応が遅れる。

 この反応の遅れが功を奏し、目に砂が入る。


 ここで僕は、サイレントベアの視界から一瞬ではあるが姿が消えるはずである。

 ここぞとばかりに追い打ちをかける。


 コスピを口にくわえる。

 これで両手が自由になった。

 左ポケットからビー玉を全て取り出し左手と右手でもつ。

 そして、サイレントベアの足元に向かって投げつけた。

 これにかかった時間なんと3秒!

 よって、サイレントベアは足元にビー玉が転がっていることに築いてない。


 一旦引く。


 サイレントベアがつられて僕の方によって来る。


 どんっ!


 サイレントベアが転げた。

 計画通り!

 あとは、サイレントベアの出方を見るだけだ。

 僕の予想だと十中八九怒り出す。

 そして、僕に向かって特殊攻撃を打ってくるはずだ。


 どうなる。


 サイレントベアが起き上がる。

 怒り狂っているように見える。


 こては……、成功か?


 サイレントベアが右腕を振り上げた。


 《ドォォォォォォォォォ》


 よし、成功だ!

 次に、サイレントベアをよく観察する。

 いつ特殊攻撃を放ってきてもいいようにタイミングを見極めなければならない。


 《レェェェェェェェェェ》


 まだだ。


 《ミィィィィィィィィィィィ》


 まだ……。


 《ファァァァァァァァァァァァァァァ》


 まだ。


 《ソォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ》


 今だ!

 サイレントベアが右腕を振り下ろそうとする。

 その瞬間に、近くにある樹木の幹にコスピを突き刺す。

 これで、大丈夫なはずだ。


 サイレントベアの特殊攻撃に最初にあたったのは、樹木であった。

 当然といえば当然である。

 これで、サイレントベアの特殊攻撃は実体化した。

 あとは特殊攻撃が通り過ぎるのを持つだけであるが、特殊攻撃が実体化したことによって大きな風圧が生まれた。

 その風圧は、僕らを中に中にと風の刃の中心に押し入れる。

 ただし僕は、樹木の幹に刺したコスピを掴んで対処する。

 これで中に押し入れようとする風圧には耐えられる。

 少々怖かったがね。


 だが、何の問題もない。

 なぜならこの風圧は予想していた。

 なぜなら、このような特殊なスキルがない限りサイレントベアの特殊攻撃・風の刃など簡単によけられる。

 もっともこのことに気が付いたのは、ストレルカさんが真正面からこの特殊能力を受けた時に〈よけれる。〉と思ったのが発端だ。

 そうなれば、この考えにはすぐに行きつくだろう。


 風が吹き終わるとすぐに樹木の幹からコスピを引き抜く。

 少々てこずったがまぁ問題なかろう。


 すぐに、サイレントベアの元に走り出す。

 そしてサイレントベアの脇を抜ける。

 サイレントベアは、特殊攻撃後の硬直時間で動きがとまっている。

 今がチャンスである。


 すぐにサイレントベアの背中をコスピで数回切り裂く。


 すると、サイレントベアが振り向いた。

 やべっ、硬直時間が切れた。


 少し距離を取り、コスピで攻めようとしたら逆に腕を一振りされてコスピを遠くにはじき飛ばされた。

 サイレントベアは、剣を持っていない僕に襲い掛かろうとしたその時!!


「時間だ!」


 キューン、キューン、キューン、キューン


 サイレントベアの後ろから携帯のアラームが流れ始めた。

 携帯のアラームは、この作戦が始まる前に僕がいた位置にセットして置いておいた。

 アラームは、現代日本でわかっている熊がもっとも苦手とする周波数に似たものだ。


 サイレントベアは、携帯のアラームを気にして後ろを振り向いた。


 ここで、決める!


 そう思い右手のポケットの中から♠Aのトランプを取り出す。

 あとは、タイミングをはかって言えばいいだけだ。

 そう、あの詠唱を。


 サイレントベアは、携帯のアラームを気にしながらもまた僕の方に向きなおろうとした。


 今だ!


「今、汝に秘められし力を解き放て!♠A/Sword。」


 詠唱が終わるとともに、♠Aのトランプが光り始めた。

 ♠Aのトランプは、一瞬にして長剣となった。


 よし。

 やっぱり想像した通りだ!


 あとは、簡単なお仕事。

 サイレントべアはコスピを吹き飛ばしたことにより僕がもう攻撃手段を持っていないと考えているだろう。

 それが命取りだ。


 サイレントベアが僕の方に向き直した瞬間、僕の長剣がサイレントベアの鼻に刺さり脳天を貫く。

 そこから上に切り上げる。


 ドガッツ


 サイレントベアが倒れた。

 脳を直接刺したんだ。

 もう死んでいるだろう。

 気が付くと服にサイレントベアの返り血が飛んでいた。

 だが、気にはならない。

 今回僕は相当頭も使ったし、体力も使った。

 なるほど、今は頭が考えることを放棄しているのか。

 だが心配はないだろう。

 僕はこんなことで怖気ずくような軟な人じゃない。


 そんなことを考えているとドッと体に疲れがきた。

 今はもうなんだっていい。

 疲れた。

 少し休みたい。


 僕は、ストレルカさんに元まで行くとストレルカさんの横で眠りについたのであった。

ようやく、サイレントベアを倒しました。

次は、何が待っているのやら??

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