4話:三鷹丘
謎の男の強襲から一夜明け、俺は、学校へ登校していた。俺の通う学園は、三鷹丘学園。一学年、二百人程度の私立高校だ。まあ、簡単に言い換えるなら、全校生徒六百人程度である。週、五日制で、別に進学校って訳ではない。部活動は、様々あるが、基本的に自由なので、かなりの数が存在している。それこそ、普通の学校にあるようなサッカーや野球から、明らかに普通の学校に無い魔術部や悪魔部なんてものまである。ちなみに、悪魔部は、悪魔を呼び出そうと日夜研究しているが、一度も成功したためしがなく、実験のたび失敗し、火事を起こしかけて生徒会に怒られるなど、ろくなことが無い。魔術部に関しては、昔の文献などから、真剣に魔術と向き合っているとかで、学校賞が送られていた気がする。まあ、部活動についての説明は、このくらいでいいだろう。
俺の教室は、二年三組。席の位置は、廊下側の一番前である。本当は窓際が良かった。しかし、名前順強制のこの並びで、俺がこの位置から動くには、一文字目が「あ」で二文字目が「い」「う」「え」か、「お」で三文字目が「は」より前か、の人物が編入してくるしかない。……それは、置いておこう。
「お、青葉じゃん。なあ、聞いたか?昨日、商店街のとこで人が刺されたらしいぜ」
もう噂になってんのか。ああ、ちなみに、今話しかけてきたのが、高木だ。俺の中学のときからの付き合いで、噂好きのうえに、女好きだ。
「噂によると、うちの学園の制服の女子だったらしいんだが、なんと、今日は数人しか休んでおらず、その中に、被害者が居るんじゃないかって話」
「ほぉう。それで、休んでいる数人って?」
「お、食いつくとは珍しい。まあ、いいや。えっと、一年の牧園さんと、うちのクラスのアリスと、隣のクラスの雛菱と、三年の鈴村先輩、だな」
立原美園副会長の名は無かった。ちなみに、うちのクラスのアリスは、亞璃栖という名前の日本人であるので、決して、ハーフとか留学生ではありません。
「ふむぅ……。多分、そん中には、いないと思うぜ」
一応被害者を知っている俺としては、「立原副会長が被害者だ」と言えればいいのだが、いったところで、一日で学校にこれるような怪我ではないので、信じてもらえないのは明白である。
「マジか……。お前の勘って妙な時には、当たるからな。だとすると、被害者は、誰だろう……」
放課後、俺は、生徒会室に行く準備をしていたのだが、当人は待ちきれなかったのか、会長がやってきた。
「青葉君、いる?」
「今から生徒会室に行こうかと思っていたところです」
教室からざわめきの声が上がっている。
「お、おい、青葉、何で、お前が生徒会長と……」
小声で高木が聞いてくる。
「お前、貧乳派だろ?」
高木、今、それは関係ないだろ。
「どうかしたの?青葉君」
「いえ、何でも。では、昨日の件、詳しくお聞かせ願えますよね」
「あ~、やっぱり?まあ、とりあえず生徒会室行こっか」