3話:緋色の救世主
だが、俺は死ななかった。
「ギリギリセーフ!」
そこに居たのは、緋色のコートを羽織った、――生徒会長だった。
「|《闇色の短剣》《ダーク・ソード》の反応を追ったら、人が襲われているところとはね……。うちの副会長の仇、討たせてもらうわよ」
ダーク、ソード?あのナイフのことか?会長は何をやっているんだ?何を言っているんだ?何が起きているんだ?さっぱり分からない。
「クッソ!一発で仕留められたら、逃げられたのに……」
男の発言。ああ、一発目、かわせてよかった。
「|《緋色の衣》《スカーレット・コート》。奴を捕らえなさい」
会長のコートの裾が大きく広がり、男を捕まえる。そして、男の体から、力が抜けていくように、手からナイフが抜け落ちた。そして、ナイフが、闇に溶けるように消え去る。
「ふぅ。大丈夫だった。キ、ミ……。あ、あれ?青葉、清二君?」
どうやら会長は、俺に気づいていなかったようだ。
「ど、どうも」
「え?あ、あの……どっから見てた?」
「え?全部ッスけど」
俺が襲われてるところに、あんたが駆けつけてきたから。全部見てたに決まっている。
「ま、マジ?」
「ええ、マジです」
数分の沈黙。無音の時間が、体感時間を引き延ばす。五分ほど経ったと感じたが、実質一分ほどに違いない。
「えっと、ちょっと、説明しなきゃいけないっぽいね。明日、放課後に生徒会室に来てくれない?」
「あ、はい。わ。分かりました」
「さて、と。うんじゃ、あの男を……って、いない!」
どうやら、俺たちが黙り込んでいる間に、逃げてしまったらしい。
「追いかけないと!じゃあね!」
走っていってしまった会長。これが、俺の人生を大きく変えた――転機の一つ目だった。