30話:開戦の合図
翌朝、朝食の時間。父は、既に会社に向かっているので、俺と母、そしてアーサーの三人での食事だった。
「なあ、アーサー。いつまでうちに居る予定なんだ?」
「ん~、教会の方は、基本的に仕事ないからね~。この辺に居たら面白いことがありそうだから……。しばらくはここに居ると思うわ」
その話に母が割り込んでくる。
「まあまあ、だったら、ずっとうちに居ていいわよ。うちの子になっちゃいなさいよ」
「本当ですか」
アーサーは、それなりに喜んでいるようだ。そんな時、アーサーの携帯が鳴る。
「メール?誰から?……ッ!」
「どうした、アーサー」
急に慌てた顔をするアーサーに問う。耳打ちで、俺に情報をくれる。
「金髪君が、ガウェインと交戦中ってトリスタンから。ありゃ~、こりゃ、オレも、お前と勝負しなきゃダメっぽいな」
ん?最後、意味分からないんだが。
「ちょっと、これから、出るぞ。確か、近くに《柊公園》があったよな、早く準備しろ」
「おっ、おい!俺は、今から登校しなきゃ!」
「大丈夫、大丈夫」
俺は、ズルズルと引きずられ、結局《柊公園》に連れてこられた。《柊公園》は、数年ほど前に潰れた大規模公園である。三鷹丘学園とは、正反対の方向に進んで十分ほどで見えてくる。それなりに大きいのだが、あまり人が来るわけでもなく、潰れてしまった。
「それで、どういうことだよ。俺たちも戦わなきゃいけないって……」
まったくもって意味不明なのだが。
「教会の方からの定時連絡だ。そして、日本に住むには、誰かに負けて、配下にされるか、誰かに勝って、配下にした者の家に住むかの二択だと。だから、お前と勝負する。そうすりゃ、どっちが勝とうが日本に住めるってわけさ」
「勝負したことには出来ないか?」
「無理だな。戦った様子がなければ、向こうも気づくだろ。これは、金髪君が戦ったから発令されたこと、負ける可能性があるから発令されたんだ。まあ、とりあえず、派手にオレとお前で殺り合おうじゃないか!」
ここは、とりあえず、やるべきだろうな。仕方ない。
「《殺戮の剱》、《全力解放》」
解放の類は初めてだが、どのくらいのパワーアップなんだろうか。




