14話:粟木
週明け、学園に到着した俺は、珍しく一人ではなかった。
「それで?何で家の前に篠宮がいたのか、その辺、詳しく教えてくれないか?」
「アハハ」
柔和な笑みで、俺の言葉を避ける。ちなみに、こいつが笑った瞬間、周りの女子がざわめきたった。これだからイケメンは……。
「実は、キミが事故の現場に出くわしたって聞いたからね」
急に真実を語りだした。まあ、語ってくれる分にはありがたいのだが。
「ああ、あれな」
「そのとき、キミ、何か、不思議な現象を目の当たりにしなかったかい?」
不思議な現象?
「僕が、後で通りかかったとき、横断歩道に入る寸前のところで、暴風でも吹き荒れたかのようになっていたんだよ。あれは、おそらく古具の力だ」
ああ、あの突風か。
「じゃあ、誰かが、俺を助けてくれたのか?」
「いや、その可能性は低いと思うんだ。偶然通りかかったキミを殺そうと放った突風が偶然キミを助けたか、それとも……」
そこで言いよどむ。一体なんだというのだ。
「まあ、それは置いといて、今日当たり、他の古具使いに会うことになっているから、放課後は空けといてね」
「了解」
しかし、他の古具使い、か。どんな奴なんだろう。
放課後、それは、突然に訪れた。突風、とでも称すべきか。生徒会室へ行こうと立ち上がった瞬間に、俺の正面から突撃してきやがった。ゴツンという擬音が一番か、その後、俺は、後ろの奴の机を巻き込み、思いっきり後ろに倒れた。俺の上に、一人の女子が乗っかっている。誰だよ。
「痛~い。何よ、もう」
それは俺の台詞だ。いきなり何が起きたってんだ。
「痛ぇな、何しやがる」
「わわっ!す、すみません」
俺の上に乗っている少女は、黒い短髪で、それなりの美少女。ただし、胸がでかい。
「凄い音がしたけど、一体何事だい?って、粟木さんと青葉君、何やってるんだい」
篠宮が、駆けつけてきた。黒の短髪少女は、粟木というらしい。
「やっほぉ~、篠宮君」
「粟木さん、生徒会室に呼んだはずなんだけど……」
「ゴメン、ゴメン」
どうやら、粟木は、篠宮が生徒会室に呼びつけた奴らしい。アーティファクトを保持する者、という解釈で間違っていないだろう。
「って、いつまで乗ってんだよ!篠宮、コレを退かせ!」
それから、生徒会室へ行けたのは、二十分後だった。理由は、途中、粟木行方不明事件、篠宮ファンによる妨害が発生したため。




