11話:青葉家へ訪問
翌日も、見回りだった。午後の時間を使って、今日は、会長、副会長、篠宮と見回っている。捜索範囲を広げて、住宅街まで行くことになった。
「この辺の住宅街って、来たことないけど、青葉君は、詳しいみたいですね」
副会長の問いに答えたのは、俺ではなく、会長だった。
「ああ、それは、清二君の家がそこだからだよ」
そう言って、とある家を指差す。俺の家。何で、この人、俺の家知ってんだ?
「なるほど、あそこが、青葉君の家か……。綺麗な家だね」
篠宮の感想はスルー。っていつの間にか、会長が、俺んちのインターホンを押してる。
――ピンポーン
そんな、少し間の抜けた音が鳴る。
「は~い、ちょっとお待ちください」
玄関の扉が勢いよく開いて、母が出てきた。
「あら、清二。それに、えっと……こちらの子たちは?」
とりあえず、全員、家に上がることにしてもらった。
「ここが、清二君の家かぁ~」
少しわくわくした様子の会長。母は、突然現れた俺の知り合いに困惑気味。
「えっと、それで、清二。こちらの子たちは?……特に、そっちの男の子」
最後に小さく付け足した部分はスルー。どうやら篠宮にメロメロのようだ。
「あ、私は、三鷹丘学園生徒会長の天龍寺カナタです」
「私は、副生徒会長の立原美園と言います」
「僕は、書記の篠宮真琴です」
最後の篠宮のにこやかな笑みに母は、目をハートにしている。勿論、比喩だ。実際に目がハートになったらびっくりする。
「それで、なぜ、うちの愚息が生徒会の方々と……。何かやらかしましたか?」
まず、そう思われる辺りが流石俺。
「ん?清二君、言っていないの?」
「ええ、まあ」
俺の曖昧な返事を聞いて、会長が、説明を始める。
「ご子息、青葉清二君は、学業、生活態度、ともに優秀でしたので、生徒会の会計に就任していただきました」
丁寧な説明をする。今の説明は、俺が生徒会入りした理由を無理やり作ったものだ。まあ、成績は上の中。生活態度も、友だちが少ない意外に悪いところはない。
「まあ、うちの子が……。ご迷惑でないかしら?」
「大丈夫ですよ。青葉君は、とっても有能ですから」
篠宮のフォローに、母は、目を爛々と輝かせる。
「……ああ、篠宮君、うちの子にならないかしら」
嗚呼、親父たちが聞いていたら何と言う事だろうか。
「つーか、結局、何しに家に寄ったんスか?」
俺の疑問に、会長があっけらかんと答える。
「ただ寄りたかったからだけど?」
俺はもはや、言葉が出なかった。何たる横暴。何たる辱め。単なる嫌がらせじゃないか。
「それでは、お邪魔しました」
そう言って立った会長は、目端に何かを捉えていた気がした。しかし、視線の先に何があるかなど、俺には分からないので、気に留めないことにしておく。
「あ、清二君は、このまま、帰りでいいわよ」
もう帰宅しているのだが。しかし、鞄は生徒会室に置かれている。
「いえ、鞄を取りに行きたいので、生徒会室に」
「ん?鞄に大事なものでも入れっぱなし?」
「まあ、そんなとこッス」
俺の曖昧な返事に少々困惑するも、あまり気に留めていないようだ。
「それじゃあ、生徒会室に帰りましょうか」




