117話:魔剱―無限伸縮の剱―
俺は、大きく足を踏み出し、《殺戮の剱》でマリクスを弾き飛ばす。
――パリィン!
窓ガラスが割れ、さらに吹き飛ぶ。家々の屋根にぶつかりながら、《柊公園》まで吹き飛んだ。これは都合がいいが、しかして、この威力は《殺戮の剱》の力だろうか。いつも以上に感じる。まあ、この場合においては、ありがたいことだ。足に力を込め、家の屋根から屋根へと跳び渡り、《柊公園》まで最短ルートで行く。そういえば、アーサーと戦った後、篠宮のところまで同じようにして行ったな。あのときは、今よりも苦労した気がする。白羅との修行の成果がこんなところにまで現れているのだろうか。
程なくしてたどり着く。
「グホォ……」
クレーターが出来たように地面が抉れ、その中央にボロボロのマリクスがいる。
「おい、テメェ、何だ」
マリクスの疑問に、答えてやる。
「青葉清二。剣士だ」
俗称だが、間違っていないだろう。古具使いであり聖剱使いであるなんていう説明は面倒だ。それに敵に教えてやる義理はない。
「マリクス・ルークだ」
奴も名乗る。
「さて、殺り合おうじゃねぇか!《無限伸縮の剱》。この剣でテメェを貫いてやるよ」
「ハッ、おもしれぇ!ハハッ、久しぶりだなァ!この感覚はよォ!!!」
俺は昂揚する感覚を抑えきれず、笑い声を上げる。
「……なっ、なんだよ、急にッ!」
俺の変異に、マリクスが少し慄く。
「クハッ、クハハハ!久々に、いい戦闘が出来そォだと、思っただけだ、気にすんなよ!テメェの望み通り、『殺し合い』を始めようじゃねェかッ!!!」
俺は、《殺戮の剱》と《切断の剱》を一つにする。そして、《聖覇にして殺戮切断の剱》を生み出し、斬りかかる。
「オラッ!ハッ!こんなもんかよッ!」
「伸びろ!」
マリクスは、一瞬で剱を伸ばして、俺の隙をつこうとする。だが、
「見えてるぜェ!キャハハハ!オラッ!オラオラ!」
俺は、狂ったようで正確に、敵をめがけて振り下ろす!
「グオッ、グッ……」
マリクスは苦しそうに呻き声を上げる。
「テ、テメェは、何だよ!お、おい、おいおい!ありえねぇ!」
「何が、ありえねェんだァ!」
《聖覇にして殺戮切断の剱》で、《無限伸縮の剱》を粉砕する!
「な、……俺のカ、《カラドボルグ》がっ……」




