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「・・・・ちょっと整理したいので、一日時間をくれませんか?」

 ラインヴァルトが驚きのあまり、声を失ったのも理由がある。

 声をかけてきたのは、同じ同僚のトール・クルーガだった。

 その彼が着込んでいる服装に驚いたのだ。

 ベルナルドと同じように、支給されている背広ではない。

 その服装は、この世界の冒険者が着込んでいる様な動きやすく、音をまったく立てないように特殊魔術を施した軽装姿だ。

 靴も地下迷宮や遺跡用のブーツだ。

 軽装服の上からは、フード付のマントを羽織っている。




「―――お前の方がかなり重篤じゃねぇか・・・。仮装パーティか、それとも冒険者に鞍替えか?、トール」

 ラインヴァルトが尋ねた。

「ラインヴァルトを一人異世界に放り込むほど鬼じゃありませんよぉ。トールにはぁ、同行者として一緒に

 行ってもらいますからぁ」

 ジュリア・ソルビーノが応えた。

「そういう事ですよ、俺は、ラインヴァルトさんが出張している間に一通りの説明は受けました。

 まぁ、最初は信じられなかったんですけどね・・・。実際に見たら信じるしかないです」

 トールがラインヴァルトの右肩を軽く叩きながら告げる。

  「・・・・ちょっと整理したいので、一日時間をくれませんか?」

 そう尋ねるが、ラインヴァルトは整理するつもりはなく、自分で安全な場所を探そうと考えた。

 あまりにも馬鹿馬鹿しくて、信じられないからだ。

「残念ながら時間はありませんのでぇ、信じてもらうしかありません」

 ジュリア・ソルビーノが告げた。




 ラインヴァルトは、若干呆れた表情を浮かべた。

「まあまあ、否応なしに信じるしかなくなりますから、それよりあちらの服装に着替えないと。その格好だと、間違いなく怪しまれますよ」

 トールが告げてくる。

「いったいどんな説明を受けたら、そんなにすんなりと受け入れられるんだ?。洗脳か何かされたのか」

 ラインヴァルトは、トールに視線を向けて、何処か心配した表情を浮かべながら尋ねる。

「そんな事はされてませんよ、それよりも、あの服装に着替えないと」

 トールが苦笑いを浮かべながら、その服装がある一角を指をさす。

「――――・・・なんだよ、あれは」

 トールに尋ねながら、白い防護服とガスマスクで貌を覆った職員が持ってきた物体を見て言葉を無くした。

 一つは冒険者が着込んでいる様な金属鎧系の防具だ。

 色は闇の様に漆黒だ。

 同じく、暑さからも身を守ることができる旅装束として現在の冒険者も愛用しているフードつきの黒マントが置かれている。

 だが、それよりも眼に飛び込んで驚愕したのは――――。




 大の大人の身の丈以上のサイズを誇る巨大な剣が置かれていた事だ。

 いや、剣というのには余りにも大きすぎ、ぶ厚く重くそして大雑把な武器だ。

 見目からしても、その大きさと重さで使い手が果たせるのかが疑問であり、一体何と闘うために製作されたのかも疑問だ。

 飛龍か魔神でも叩き斬るために、何処かの鍛冶屋が製作したのだろうかとラインヴァルトは思った。

 少なくとも、製作した人物は狂っていることは間違いないかもしれない。

「金属鎧とその大剣は、見た目に騙されてはいけませんよぉ、

 冒険者遺品回収時に発見されたもなのですがぁ、遺族には返却できない代物だったためぇ、「魔道装身具重要管理室」が保管してましたぁ。

 管理室が調べた所、その防具は着用者の体格に合うよう収縮で伸縮自在、防御力と自由度の高さのバランスを極限まで引き延ばす様に、古代魔術で製作された鎧ですぅ。

 現在の魔術技術では製作出来ない代物らしいですよぉ――――、それとあの大剣は、ベルナルドが用意した

 剣ですよぉ、それと、フード付きマントは、冒険者管理局特殊魔術製造したマントですぅ」

 ジュリアはそう説明する。




 ラインヴァルトは、その説明を聞いて本能的に嫌な予感を感じた。

「冒険者管理局魔道装身具重要管理室」が規則に従って、保管していたとなると、尋常ではない防具だ。

 さらに大剣はベルナルドが用意した代物となれば、並大抵ではない事は確定している。

「(まだ、何処かの鍛冶屋がトチ狂って製作した代物がマシじゃねぇか…)」

 とラインヴァルトは、そう思いながら、もう一つ置いてある物に視線を向ける。

 もう一つは、黒の上下、黒のレザージャットという軽装の服装が置かれ、片手で扱える大きさの片手で扱える漆黒の刀剣が置いてある。

 その視線に気づいたのか、ジュリアが説明をする。

「そちらの黒の上下、黒のレザージャットはぁ、冒険者管理局特殊魔術製造した代物ですぅ、一般市場に売りに出ている代物とは違いますぉ。

 そちらの剣もベルナルドが用意してくれた代物ですから、信頼は出来ますよぉ」

 と言ってくる。

「威力に関しては、信頼してますが、それを扱うのは俺なんですけどね・・・」

 ラインヴァルトは力なく応えた。




 もし、仮に、このままずるずると異世界とやらに行く事になれば、ラインヴァルトは黒の上下、黒のレザージャケットという軽装を着て行こうと考えた。

 剣を用意したベルナルドの姿を見ようとしたが、先ほどまでいたのに姿が見えなかった。

 ようやく姿を捉えると、ベルナルドは、長距離テレポート・ゲートで古びた鍵を使用していた。

 ラインヴァルトは、「何してやがるんだ、ベルナルドは…」と思った。

「――――話、聞いてますかぁ?」

 ジュリアが尋ねてきたので、視線をジュリアに向ける。

「理解できない話を、俺が聞いていると思っているんですか?」

 ラインヴァルトは、不機嫌な声で応える。







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