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「(さすがに、本当に面倒になってきたな。さっさ引き上げるか)」

 



「(その返答だと、使う気は無いということですか)」

 脳内にトールの返答が返ってきた。

「(面倒で厄介な事に進んで関わろうとしたのは、一体誰なんだろうな)」

 ラインヴァルトは、何処か呆れた様に脳内で返答した。

「(・・・・その責任は負いますから、今、そちらに―――)」

 トールの声が脳内に響いてくる。

「(婚約者と挙式上げる者に、こんな危ない事はさせるわけがないだろ?

 トール、お前は大人しく、避難住民を護衛しながら先に戻れ)」

 ラインヴァルトは、素っ気なく脳内で返答し、すぐに高度魔術思念言語を

 遮断した。




「バラバラに刻んで、打ち捨てられたいものからかかってこい」

 ラインヴァルトは、凄まじい笑みを浮かべながら告げた。

「鬼獣」の群れは、怒りの咆哮を上げて電撃の様な勢いで襲いかかってくる。

 ラインヴァルトは、それらを無視してゆっくりと前に動く。

「鬼獣」の群れが到着するよりも速く、ラインヴァルトは間合いを見せぬほど

 素早く「鬼獣」に肉迫した。




「鬼獣」の喉と胸、腹が深く斬り込まれ、しぶく血潮はいずれも致命的だ。

 だが、背後からは新手の「鬼獣」が殺到してくる。

 数十体がラインヴァルトに向けて襲いかかってくるが、身体が反応する可能な限り最短で、余計な力を使っての疲労を避ける様なリズムで「鬼獣」からの攻撃を

 躱していく。

 動きが早まればその分、身体に感じる空気の抵抗が負担になるのは自然の

 摂理だが、ラインヴァルトの貌には、疲労した様な様子は覗えない。

 飛びかかってきた血に飢える「鬼獣」は、全て弾き返される。




「・・・そろそろ俺はお前らの相手に飽きてきた」

 ラインヴァルトは、静かに告げた。

「鬼獣」の群れは、覇気に押される様に後退した。

 ラインヴァルトは、地面を蹴り、前方に跳躍すると一体の「鬼獣」の頸を捉え、

 一気に切断する。

 同時に聴覚が猛スピードで近づいて来る、「鬼獣」の足音をとらえた。

 視線を向けたラインヴァルトは舌打ちをした。

 六メートル前後で肌は蒼色、右腕に薄赤色の線が入っている「鬼獣」が大剣を構え咆哮して姿を現した。




 その特殊な「鬼獣」を筆頭に、四十体以上の群れが束になって押し寄せてきた。

 ラインヴァルトは、床を蹴り一陣の烈風となって押し寄せる群れに向かって行く。

 棍棒を手に持って振り下ろしてきた「鬼獣」の攻撃を紙一重で躱しつつ、右脚を大きく踏み込み、左脇腹から胸元に掛けて切り裂いて殺した。

「鬼獣」の間を縫うようにラインヴァルトは、前方にいる特殊な「鬼獣」に向けて突進をする。

「鬼獣」が手に持っている雑多な刀剣類で、執拗にラインヴァルトを追撃してくる。

 だが、一つも傷を与える事は出来ずに次々と斬り払われ、一閃される。




 鮮血を纏いながら、「鬼獣」は地面に倒れていく。

 奇声を発してのたうち廻っている「鬼獣」に、ラインヴァルトは意に反さず、特殊な「鬼獣」の姿を確認しようとした時、大剣を構えた特殊な「鬼獣」が弾丸の様にラインヴァルトに突進してきた。

 剣の切っ先は地面を舐める様に低く、そこから一気にラインヴァルトの首筋へ

 跳ねる。

 漆黒の長剣が難無くと大剣を受け止め、弾き返した。

 特殊な「鬼獣」は、間断なく、執拗に攻撃を繰り返してくる。

 剣戟は無数の光となり、ラインヴァルトを押し包む。

 漆黒の長剣は、大剣を悉く受け流し、そして隙を覗っていた。

 横殴りの一撃をラインヴァルトは受け止めず、身体を躱した。

 特殊な「鬼獣」の身体がわずかに泳ぎ、ラインヴァルトの待ちわびていた歓喜の瞬間が訪れた。




 防戦一方だった漆黒の長剣の刃が、歓喜の唸り声を上げながら、「鬼獣」の首筋に叩き込み、息の根を止めた。

 しかし、まだ「鬼獣」の群れは健在だ。

「(さすがに、本当に面倒になってきたな。さっさ引き上げるか)」

「鬼獣」の群れを睥睨しながら、片手を伸ばしながら、攻撃魔術の詠唱を小さく唱える。




 この世界は魔術に関してはどれほどの技術があるのかわからないが、「特殊能力」を活用するよりは、良いだろうとラインヴァルトは考えた。

 詠唱が終わると同時に、握る拳から真っ赤な炎の龍が召喚した。

 ラインヴァルトは、真っ赤な炎の龍を「鬼獣」の群れに解き放ち、炎の龍は獲物に飛びかかっていく。

「鬼獣」の群れは、炎の龍の顎に捕らわれ凄まじい高熱に晒されていく。

 凄まじい高熱に晒された周囲にいた「鬼獣」の群れは、あっという間に黒焦げた。

 その戦果を確認するまでも無かったのか、ラインヴァルトは焼け焦げていく「鬼獣」の群れを確認せず、その場から離れていく。


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