「(関わる気全開か、お前は)」
公衆浴場で疲れをゆっくりと疲れを癒したラインヴァルトとトールは、宿泊所には戻らずに、冒険者ギルドへと向かった。
朝食は、今の所戦闘糧食で済まそうと考えている2人には何時でも食べられる。
冒険者ギルドの両開きの押し戸を開けてゆっくりと内に入るなり、ラインヴァルトが脚を止めた。
脚を止めたその原因は、無数の張り紙が所狭しに貼られている掲示板の方向に何やら大勢の冒険者が集まっていたからだ。
大勢の冒険者が集まっている前には、金褐色の髪と青灰色の瞳をした男性が何かを説明しているようだった。
恐らく冒険者ギルド職員だろうと、ラインヴァルトは判断した。
そのラインヴァルトの表情は若干険しく、トールの方は何か期待をした表情を浮かべている。
「(帰るか)」
ラインヴァルトは、小声でトールに告げる。
告げられたトールは、苦笑いを浮かべた。
ラインヴァルトが、この世界の事態などに興味が無い事は分かっていた。
別世界での行動に束縛される事も好まぬであることも。
掲示板の方向に視線を向けながら、トールは何か考えていたが、その時間は短かった。
―――トールにしてみれば、選択は一つしかないが。
「(「(何を言うんですか、行きますよ)」
トールは、ラインヴァルトの言った言葉を容赦なく拒絶すると口笛を吹きながら向かう。
ラインヴァルトは、思わず天を仰いで額に手を当てた。
「(関わる気全開か、お前は)」
ラインヴァルトは、頭をガシガシ掻きながら渋々その後を付いていく。
「―――――繰り返す、冒険者諸君っ、緊急討伐であるっ!!、たった今、アーシラ村が鬼獣の群れに襲撃を受けているという緊急の連絡が入った!」
集まっている冒険者達は真剣な表情を浮かべるもの、隣同士で話し合いをする者という様子だ。
「(これは厄介な問題に巻き込まれるぞ)」
ラインヴァルトはそんな事を思いながら、トールの様子をさり気に覗う。
様子からして、この厄介な問題に進んで飛び込もうとしている様には見えた。
「(間違いなく厄介な事に巻き込まれる)」
ラインヴァルトは、暗澹とした気持ちになった。
見た所、他の冒険者の様子では緊急討伐に参加したくない冒険者が多い様に見受けられたからだ。
「(説明を聞く限りだと、俺達はやはり積極的に参加して鬼獣という魔物に襲われて心身共に披露している村人を助けないといけませんね)」
トールは、ラインヴァルトの苦悩など知らずに小声で告げながら右手を上げようとする。
「(おいっ!?)」
ラインヴァルトは、トールのその行動を阻止しようとしたが、間に合わなかった。
「質問があるんですが」
トールが親しみを覚えそうな声で男性ギルド職員に尋ねた。
「何かね?」
男性ギルド職員が、トールの質問に答えてくる。
「(良し、トール、的外れな質問をしろっ)」
ラインヴァルトは、心の中で呟いた。
「一番重要なんですが、ランクEでもその緊急討伐には参加は出来るんでしょうか?」
トールが尋ねた。
「(何て事を質問するんだっ!?)」
ラインヴァルトは、トールが質問した言葉が信じられず愕然とした。
「可能だ、活躍次第ではランクアップの保障をしよう」
男性ギルド職員が応えた。
ラインヴァルトは、ギルド職員の返答を聞いて思わず罵りそうになった。
トールは、にやりとした表情を浮かべていた。
ラインヴァルトはこれにより関わりたくない厄介な事に、不本意ながら関わる事が決定してしまった。
――――スクルトリアの荘厳な門から四台の荷馬車が姿を現した。
その一団は、アーシラ村を目指して馬を走らせていく。
二台には、この討伐に参加した数少ない冒険者、残りの二台は補給物資が積まれている。
緊急討伐に参加した数少ない冒険者の中には、ラインヴァルトとトールの姿はあった。
若干ラインヴァルトは不機嫌な表情を浮かべている様に見える。
「(そんなに拗ねないでくださいよ)」
トールが小声で告げてくる。
2人がいる馬車には、何組かの冒険者の姿があるため、声を潜めて会話をしている。
「(拗ねてはいない)」
ラインヴァルトが短く応える。
「(戻るとか言って飛び降りるかなと心配してました)」
トールが、何処かおどける様に小声で告げる。
「(もうここまで来たら、最後まで突き進むしか選択は残ってないだろ?)」
ラインヴァルトは、そう応えた。
この先、何が待ち構えているのか見当がついたわけではないが、ラインヴァルトは、今後の場面を描こうとした。
だが、冒険小説などで描かれている魔物の群れの襲撃がどういうものであるかは、 ベルナルドが貸してくれた小説を少し読んでいたために、ラインヴァルトは知りたくもないくらい知っていた。




