「(一度、ペンギンで、職業は冒険者でやってみろ、そうすりゃあわかるさ)」
石や硬い砂で舗装された街道を、ラインヴァルトとトールは、北に向けて
歩いていく。
街道では他の街へと向かう馬車や冒険者等の姿が見えた。
テオラギ村は、「スクルトリア」から徒歩で約四時間ほどかかる距離にある
村なのだが、2人はそんなに時間をかけるつもりは毛頭なく、高度補助魔術を
使用して移動するもりだ。
ただ、まだちらほらとこの世界の住人の眼があるため、2人はまだ唱えていない。
「(―――そうそう、ラインヴァルトさん、ベルナルドさんから伝言あったんですよ)」
トールは小声で告げてくる。
付近には、まだ他の冒険者の姿があるためだろう。
「(なんだ?)」
ラインヴァルトが小声で応える。
「( えーと、「無事に別世界から帰還したら、さっさと「王国を建国しよう」の続きをしてくれ」と言ってましたよ…似たような事を他の同僚も・・・)」
トールが告げてくる。
「(・・・俺は、ベルナルドの口車に乗せられて、あの超古代文明
魔道遊戯機械で遊んだことに後悔している)」
ラインヴァルトは、歩きながら短く応える。
様子からして、あまり良い体験ではなかった様だ。
「(ま・・まぁ、そう言わずに続きをしてくださいよ、あの遊戯機械で現実を忘れるほどのめり込んでいる同僚とベルナルドさんが催促しているんですから)」
トールは、そう尋ねながらも、ラインヴァルトの様子からして、あの超古代魔道遊戯機械で遊ぶ事はもはやない事は、うすうすわかってはいる。
かなり嫌がっている風に見えるからだ。
「(種族がペンギンでか?)」
ラインヴァルトが憮然とした表情で小声で応える。
「(そりゃあ、あれはベルナルドさんと他の同僚・・・、えーと、
エイヘス、ルフシスも悪いですが、何も国一つを取って成り上がる事もなくて、
冒険者でも農民という職業を選ぶという選択肢もあったはずですよ)」
トールは、少し呆れた様な表情を浮かべながら、古代魔道遊戯機材にのめり込んでいる同僚の名前も出す
「(・・・・俺も、ベルナルドの説明を適当に聞き流しながら設定したのは悪かったとは思っている、だが、それで種族と職業の選択肢が、ペンギン、スライム、トカゲ、ゴーレム、ゴプリンはないだろ?、職業ときたら冒険者、魔王の
2つだけだ)」
ラインヴァルトが小声で応える
トールは、何とも言えない表情を浮かべる。
トールも、その時、その場にいたのだが、エイヘスとルフシスが古代遊戯機材に何かこっそりと設定を弄っていたのは知っている。
だが、どんな設定にしたかまではわからなかったが、今、ラインヴァルトが
言った事を信じると、トールもさすがに「馬鹿な事をしたな」以外は思い
付かない。
トールでも、そんな事をされれば嫌な気分にはなる。
「(それで、実際それで遊んでみたらどうだったと思う?、お前やクラウディアやエレーナは、興味が無かったらやったことはないからわからねぇとは思うが)」
ラインヴァルトが小声で告げる。
「(・・・・どんな感じだったんですか?)」
トールは、少し興味を引いた表情を浮かべながら応える。
――――――トールとラインヴァルトの会話で出てくる「王国を建国しよう」とは・・・。
ラインヴァルトが生活している元の世界の時代から遥か過去・・、古代冒険者時代よりも遥か昔に栄えていた超古代文明時代に売り出されていた(?)古代魔道遊戯機械である。
現時代に残されている文献などから分かる事は、正式名称は「大規模多人数同時参加型仮想現実戦略遊戯」と呼称されていた事が判明している。
この長い呼称を付けられていた古代魔道遊戯機械は、ラインヴァルトがいる時代で残っているのは、数えるぐいしかない(地下迷宮や遺跡内部に発見されずまだ眠っている品がある事は不定はしないが・・・)
その様な貴重な品が、なぜ、ラインヴァルトの近くにあり、なおかつ遊べるかというと・・・、元冒険者上がりの管理職員ベルナルドが原因である。
元冒険者の時に、たまたま偶然発見したもらしいのだが、商店などで売ろうとしても、古代魔道遊戯器械を始動する操作方法が難解らしく買い取りしてもらえなかったため、現在までベルナルドが所持していた。
ベルナルドは、古代用語語学や罠の解除技術及び破壊技術が一般冒険者よりも
能力が長けており、遊戯器械の操作など造作もなかったため、いつでも
どこでも(?)遊べる遊戯器械だ。
現在は、サラムコビナで元ポートリシャス大陸連合警備隊冒険者管理局職員の
ラウルフが経営する酒場「テフテフ」という店に置かれている。
客の大半が冒険者管理局員なため、盗もうとする命知らずはいない。
第一、盗んで転売しようとしても売れないだろう。
――――――1人でも遊戯に興じる事は出来るこの古代魔道遊戯機械の一番の楽しみ
方は大多数で遊戯に興じる事である。
「王国を建国しよう」は、完全仮想現実世界に存在する400ヶ国以上の好きな国家を担当、もしくは1から全てを創り上げていき、プレイヤーは自己の目標のために仮想現実世界で、歴史を紡いでいく。
種族と職業の選択肢は幾つも存在しているが、ラインヴァルトが文句を言って羅列した職業と人種は、超文明時代でも現時代でもあまり人気がない。
特に1から国を創ろうとなれば、幾多の人種や種族で遊びに興じても時間はかかるが、不人気種族と職業で1から国創りとなれば、倍以上の時間がかかる。
仮想現実戦略遊戯世界にいるNPCと称されるキャラとの緊密化した環境の関係や
行動や能力、進捗状況によってはダイナミックに変化するためペンギンなる
種族を選ばされたラインヴァルトに取っては、ただ心が折れるだけである。
また、常に仮想現実は時間が流れており、古代魔道遊戯機械内に創られた世界には時間の存在がある。
仮に誰も古代魔道遊戯機械で遊戯に興じてなくても、仮想現実世界は存在し
続け時間が流れている。
「(一度、ペンギンで、職業は冒険者でやってみろ、そうすりゃあわかるさ)」
ラインヴァルトはそう告げながら立ち止まり、辺りに人の姿が見えない事を確認すると高度補助魔術を唱えた。




