「(あいつは・・・、身体は大人でも純粋な子供心をもっているから問題がないんだよ)」
翌日、ラインヴァルトとトールは冒険者ギルドにやってくると、さっそく
無数の張り紙が所狭しに貼られている掲示板に向かった。
ギルド内の左手奥には、若干多めの冒険者達の姿が見えたが、2人は、その冒険者達に話しかける事もすることなく掲示板の前まで行く。
掲示板の前に他の冒険者の姿が無い事を確認すると、素早く
「ゲートキーパー」を取り出して、画面を触って操作を続ける。
「異世界言語翻訳」を操作し、初めてした時の様に貼られている無数の張り
紙に翳す。
ごく小さく写真を撮った様な音がなったのを確認すると、「ゲートキーパー」の画面に視線を向ける。
翻訳され、「ゲートキーパー」の画面に写しだされている依頼の張り紙を見る。
「(何か良いのがありますか?)」
トールが小声で尋ねてくる。
「(ある事はあるんだけどな・・・初めて見た時のとほとんど変わってない)」
ラインヴァルトは、小声で応える。
「(というと、やはりCランク「鬼獣」系討伐の依頼が多いと?)」
トールが再び小声で尋ねてくる。
「(もちろん、「鬼獣」系以外の魔物討伐依頼もあるが、A、S、SS、XXXランクばかりだ)」
ラインヴァルトは、何とも言えない表情を浮かべながら応える。
「(・・・・もういっそのこと全て受けて暴れますか)」
トールは、ちょっとおどけるように小声で尋ねてくる。
いっそのこと「特殊能力」をフル活用するかと聞いているのだ。
「(残念ながら、俺達はいい大人なんだ、そんなことすれば第三者からは、かなり痛い大人だと思われる)」
ラインヴァルトは、「ゲートキーパー」の画面を操作しながら小声で応える。
「(・・・・でも、ベルナルドさんなら飛びついて全て受けますよ)」
トールは、しばらく考え込んでから応える。
「(あいつは・・・、身体は大人でも純粋な子供心をもっているから問題がないんだよ)」
ラインヴァルトは、そう応えながら画面操作を終えると一つの張り紙を剥がす。
「(なるほど・・・で、それは?)」
トールが、納得した表情を浮かべながら、張り紙を剥がしたラインヴァルトに小声で尋ねる。
「(調査系だ、テオラギという村周辺の「鬼獣」の群れの調査、ランクCだ。
何か質問は?)」
ラインヴァルトは応えるが、その貌は不機嫌だ。
「(・・・・俺は無いですよ)」
トールは、ラインヴァルトの不機嫌な貌を見て、にやにやと笑っている。
なぜ、にやにやと笑っているのかは、ラインヴァルトがD、Eランクの比較的穏やかな依頼を集中的に受けて、目立たずに異世界冒険者生活をしようとしていたのが、その比較的穏やかなD、Eランクの依頼が無かったため不機嫌になったラインヴァルトの様子を見てだ。
ラインヴァルトは、その張り紙を受付嬢に見せて主な内容を尋ねた。
対応した受付嬢は、腰まで伸びる黄褐色の長い髪、黒に近い濃紺の瞳が印象的な受付嬢だった。
受付嬢からの説明では、森の中を巡回していたテオラギ村の猟師が「鬼獣」
らしき群れの足跡を見つけたというものなのだが、その具体的な群れの数と動向を知らべろという依頼で、報酬は、銀貨で580ナハルだ。
ラインヴァルトは受付嬢の説明を聞きながら溜息が出そうになった。
「(・・・こりゃあ、交戦する事になるかもしれないな)」
ラインヴァルトはそう思いながら、何処か楽しそうなトールを一瞥する。
別に闘う事が嫌なわけではないのたが、ラインヴァルトが心配しているのは、
「特殊能力」を使わずに交戦が出来るかどうかと心配していた。
今の所、銃火器類の代物が付近には見当らなかった。
もし、この世界に銃火器類が存在していないのであれば、より一層銃器類に関しては使用は慎重にならなくてはならないとラインヴァルトは思った。
また、この世界の「鬼獣」などの討伐を本格的に受けるのであれば、「特殊能力」は必ず使用しなくてはならないとも考えてはいた。




