表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/45

苦労している連合警備隊冒険者管理職員達 ② 

 ポートリシャス大陸西部サラムコビナ連合警備隊冒険者管理局支部管轄:「最高危険区域迷宮」管理職員専用直通テレポート・ゲート付近では、遺品回収に赴いている管理職員達とは、別の過酷な任務に就いていた。

 そこでは、「最高危険区域迷宮」全階層から死傷して緊急帰還した管理職員が担架で運ばれており、その光景は、さながら戦場・戦時における野戦病院である。


「畜生っ、畜生っ!!、俺の眼がぁっ、俺の眼がぁっ!!」

 担架の上で寝かされているホビット族の管理職員が、顔を両手で押さえて空気を震わす様な絶叫を上げて叫んでいる。

 管理局が支給している装備類も襤褸雑巾のありさまだ。

 その管理職員を、白い防護服を纏い貌をガスマスクで覆った管理職員が診察をしている。

 体格からして、人間種族の様だ。

「(この負傷者を至急、支部の緊急魔術医療センターに運び込んでくれっ!!)」

 治療を行っていた人間種族の管理職員は、そう告げる。

 その他にも、「最高危険区域迷宮」で棲息する魔物の爆炎に炙られて酷い火傷を負った管理職員、腕を食い千切られた管理職員、特殊攻撃を受けて致命的な傷を負った管理職員の姿があった。



 甲殻類を思わせる形態をした8本の触手と、長い尾を持つ奇獣系の魔物を貌に張り付けさせた管理職員が担架に乗せられている担架では、二名の白い防護服を纏い貌をガスマスクで覆った管理職員が診察をしていた。

 担架に乗せられている管理職員は、体格からしてムーク族だ。

 白い防護服の管理職員は、体格からの判断からして、エルフ族とドワーフ族といった所か・・・・。




 首を後部で包まれクモ状の8つ足で堅く頭を掴み、酸素を送り込み殺さずに、ムーク族の管理職員を昏睡状態にされている。

「(剥がそうとしても、張り付く力は強くて患者の皮が剥げそうになるな・・・、こんな魔物は見たことないが、新種か?)」

 エルフ族らしい体格の管理職員が呻く様に尋ねる。

「(おいらも見たことない。しかし、張り付く力は強力で、剥がそうとすれば

 患者の皮剥げそうになる・・・・、新種が発見されるのは日常茶飯事だけど、

 慣れる事はないなぁ)」

 ドワーフ族らしい体格の管理職員が何とも言えない声で応える。





「(それにどうやら、この新種の魔物の血液は超強酸の様だ。下手に傷を付ければ、危険を招いてしまうぞ)」

 エルフ族らしい体格の管理職員が告げる。

「(ならば、この患者は憑依魔物専門魔術センターへ緊急搬送決定だ。

 ここではどうすることもできないよ)」

 ドワーフ族らしい体格の管理職員が、そう告げながら書類にペンを走らせる。



 別の所では、三人の管理職員が担架に乗せられていた。

 その付近には、「最高危険区域迷宮」内部へ遺品回収に赴いていた管理職員一名と、白い防護服を纏い貌をガスマスクで覆った管理職員二名がいた。

 白い防護服の管理職員二名は、体格からしてウェルパー族と人間種族だ。

 管理職員は、ラウル族、担架に乗せられているのは、エルフ、ハーフエルフ、ドワーフといった種族だ。




「(―――地下迷宮内部で、どのカテゴリーレベルの魔物と交戦されたんですか?)」

 ウェルパー族らしい体格の白い防護服を纏った管理職員が尋ねた。

「カテゴリーレベル4に分類されるゾンビとの交戦したが・・・」

 ラウルの管理職員は、困惑した声で応える。

「(そのゾンビの具体的な名称は?)」

 ウェルパー族らしい体格の白い防護服を纏った管理職員が尋ねる。

「具体的な名前?、どんな名称と言われても・・・」

 ラウルの管理職員は、怪訝な表情を浮かべながら応える。

「(この三名の命に係わります)」

 ウェルパー族らしい体格の白い防護服を纏った管理職員が応える。




 人間種族らしい体格の白い防護服を纏った管理職員は、担架に乗せられて

 いる管理職員の診断をしていた。

 三名中、二名は昏睡している。

「(気分はどうですか?)」

 人間種族らしい体格の白い防護服を纏った管理職員が尋ねる。

 その手には、薄い板状の携帯用特殊魔道具を持っていた。

「・・・・寒気がする・・・酷い頭痛と吐き気も・・・」

 応えたのは、ハーフエルフの管理職員が応えた。

 頭部、顔面、頸部を保護するための目出し帽は、脱がされて素顔を晒されて

 いる。

 ハーフエルフの特徴ある美貌だが、その貌色は異様なほど真っ白だ。

 例えるなら、死人を彷彿とさせるような―――。

 それは、他の担架の上に寝かされ、昏睡状態のエルフ族とドワーフ族の管理職員もだ。

 微かに全身を痙攣させている。




「(・・・他には?)」

 人間種族らしい体格の白い防護服を纏った管理職員は、そう尋ねながら薄い板状の携帯用特殊魔道具を操作する。

 その指先は、若干震えている。

 携帯用特殊魔道具の画面には、三名の管理職員の症状が表示されている。

 三名とも体温、脈拍、血圧が無いと表示されている。

「胃がつっぱてくる・・・・なんなんだよ・・・・これ・・・・」

 ハーフエルフの管理職員が呻く様に応える。

 人間種族らしい体格の白い防護服を纏った管理職員は、魔道具の操作を終えると、

 ウェルパー族らしい体格の白い防護服を纏った管理職員に声をかけて、少し離れた

 場所まで連れていく。

「(何だ、どうした?)」

 ウェルパー族らしい体格の白い防護服を纏った管理職員が尋ねる。

「(体温、脈拍、血圧、共に無し、酷い頭痛、胃がつっぱる、極度の

 寒気・・・、この症状で思い当るのを聞きたい)」

 人間種族らしい体格の白い防護服を纏った管理職員が静かに尋ねる。

「(本格的な検査をしないとわからんが・・・、「デスウィルス」に感染して

 いる可能性があるぞ・・・)」

 ウェルパー族らしい体格の白い防護服を纏った管理職員が、緊張した声で応える。




「デスウィルス」とは、ゾンビ系の魔物が保持している特殊ウィルスだ。

 非常に強い感染力を持ち、空気感染・水を汚染することによる経口感染・血液感染など、あらゆる経路で拡散する。

 基本的に空気感染を起こすのは、ゾンビ系の魔物によるブレス系の特殊攻撃で付近一帯に拡散した初期の段階であり、生物に感染した後は血液感染など感染者の体液が血液内に入ることで感染を広げる。

 また、ゾンビ系の魔物の爪や牙で、引っ掛けられ、噛まれたりなどで微量なかすり傷でも感染する。

 症状が現れるまでの時間は個人差が大きく、この世界の高度な魔術医療技術でも

 現在判明はしていない。

 万一「デスウィルス」感染しても、早期に高度魔術医療技術で製造した「タールマン」ワクチンを投与すればゾンビ化を免れる事がある。

 しかし、脳細胞を侵食された場合は救う手立てはなく、脳を破壊するなどの直接的な攻撃で活動を停止させるしかなく、この様なゾンビには浄化系魔術は効果がない。

「タールマン」ワクチンの効能だが感染度合いでは、投与しても効果が現れず

 ゾンビ化することもあるため、過信はできない。




 ―――ある特定の列強国の一つが、軍事用兵器として用意るため「デスウィルス」をベースとして、様々なウィルスの魔道遺伝子を組み込むなどして極秘開発したウィルスが存在する。

 そのウィルスに感染した者は、脳を破壊するという直接的な攻撃では活動を停止しない。

 従来のゾンビは動きはスローだが、このウィルスに感染したゾンビは全速力で走って襲ってくる。

 対処方法は、従来のゾンビの様に頭を破壊するのではなく、炎で灰すらも残さないほど消滅させるか、石化系の魔術で石化させて砂に返すか、氷系魔術で氷漬けにして粉々砕くという方法しかないが・・・まあ、それらは従来のゾンビとの

 対処方法とそう変わらない。

 ただ、従来のゾンビには対処方法の追加で、浄化系魔術で対処するという方法も付くだけである。

 その「デスウィルス」より進化させたウィルス名は、「トライオキシン245」

 という。




 別の場所では、他の負傷者の管理職員と同じように担架に乗せられているノームの管理職員が、身震いするような恐ろしく凄まじい絶叫を上げていた。

「(鎮静剤か、睡眠魔術を使って黙らせろっ!!)」

 そのすぐ横で、ダークエルフらしき体格の白い防護服を纏った管理職員が、重度の火傷を負ったリザートマンの管理職員を診察しながら、苛立った声で怒鳴り散らす。

 一見するとなんら被害を受けていないノームの管理職員だが、魂が削られるような叫び声を上げているのは異常だ。

 また、両手両足を特殊拘束具で拘束されている。

 白い防護服を着込んだ人間種族らしい体格の管理職員とシャドーエルフらしき

 体格の管理職員二名が、そのノームの管理職員を担架に乗せたまま「精神科隔離施設直通テレポート・ゲート」とトタン板製の手書き札が書かれた場所へと運んでいく

 冒険者管理局遺品回収課における神経消耗患者や精神錯乱症状を訴える

 職員は、特に「最高危険区域迷宮・遺跡」や「重要危険区域迷宮・遺跡」で

 多い。

 連合警備隊冒険者管理局遺品回収課の管理職員は、凄まじい重圧と並々ならない決意で凶悪無比な魔物相手に、重火器類や魔術を使って熾烈な交戦を行い、

 冒険者パーティの遺品を回収している。




 特に魔物カテゴリーレベル3以上に分類される魔物は、凄まじい量の火力と攻撃魔術の防御陣を突破し、または擦り抜けて襲いかかってくる。

 従来の様に力に溺れて狂犬の如く噛みついてくる魔物程度なら殲滅できるが、

 軍隊や傭兵団の様に統制が取れ、人間や異種族の様に計算され尽くした連携攻撃の前には、鉄壁の防御陣でも役には立たない。

 何が何でも骨までしゃぶり尽くすと決意を固めた魔物は、突破して防御側を殲滅してくる。

 ほんの数メートル先で、同僚の管理職員が魔物の鋭い爪で引き裂かれまたは喰い殺され、豊富な特殊攻撃で犠牲になった凄惨な光景を管理職員は何度も何度も見せつけれる。




 また、その様な異様な状況下で管理職員が交戦している魔物が地上に這いずり出てきて、故郷に残している家族や恋人を喰い殺すかも知れないというあり得ない錯覚を感じてしまう。

 戦争ではなく、人外の魔物と戦闘を行っているという冒険者ではない一般市民には理解される事がない絶望的な恐怖――――ありとあらゆる感情が、管理職員の

 神経を脳を心を蝕んでいく。

 もちろんそれは冒険者にも言えることだが、現にその凄惨な光景に耐え

 切れず管理職員を辞め、冒険者を廃業する者もいる。

 冒険者管理局職員になるにも、冒険者になるにしても、この世界では

 それなりの覚悟が必要なのである。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ