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「(こちらにきてまだ日数は立っていないが・・・・、俺とトールが抜けた穴は大丈夫なのか?)」

 

 簡易宿所の店主―――――もとい、この2人と直接会話をしたこの世界の人々は、恐らく想像も出来ないだろう。

 ラインヴァルトとトールが所属している連合警備隊冒険者管理局なる組織がいかに凄まじいものか。




 ――――「連合警備隊冒険者管理局」

 組織の前身は、2人が今いる世界の「冒険者ギルド」だ。

 古代冒険者時代に商工業者が結成し、後ろ盾もない冒険者達の支援と権利と地位向上のために結成されていた。

 2人の世界標準歴で、650年前―――。

 ポートリシャス大陸セントデイラ共和国出身冒険者「英雄王」ヴィットリーオが「人種・言語の差を乗り越えている我ら冒険者の権利と地位を維持するためには、冒険者、古代魔道具や禁呪魔術類を管理する組織の建設が必要である」と唱えた。

 背景には、古代魔道具と禁呪魔術の乱用、道徳観の低下による冒険者の犯罪行為が多発し、また「冒険者ギルド」

 の影響力が廃れた事が原因だった。

 その後、「英雄王」ヴィットリーオは「冒険者人権条約」を挙げて冒険者の理性に沿った冒険の生き方

 を没するまで説き続けた。

 その後には、150年後にトリールハイト大陸アシュタシス王国出身冒険者「覇王」リドワーンが「王道冒険者思想」を打ち出し、「連合警備隊冒険者管理局」が発足した。

 その400年後には、アディガリア大陸ヴァルアトル王国出身冒険者「賢王」ザメンによる「冒険者条約」の考案により、一層充実した組織となり現在に至っている。




「冒険者条約」は、第1条から第4条まである。

 連合警備隊冒険者管理職員は冒険者管理職員訓練所で、まず初めにその条約を頭に叩き込まれる。

 それは、ラインヴァルト、トール、ベルナルド、クラウディア、エレーナも例外ではなかった。

 その中でも、ラインヴァルトは、魔術関連の知識も叩き込まれていたので、人一倍苦労したことは言うまでもない。


 第1条は、冒険者パーティメンバーの傷病者、冒険者衛生要員、冒険者宗教要員、冒険者衛生施設、冒険者衛生用輸送手段等 条約の保護対象者が地下迷宮や遺跡内部で孤立してから、安全圏まで帰還が完了するまで


 第2条約は、冒険者パーティメンバーの傷病者、冒険者衛生要員、冒険者宗教要員等、地下迷宮や遺跡内部で

 戦闘が行われている間(地下迷宮や遺跡内部に潜った後は第1条約が適用される)


 第3条約は、冒険者パーティが、地下迷宮や遺跡内部で遭難し、最終的に無事帰還するまで


 第4条約は、冒険者パーティに所属する特殊能力者又は、特定の国家に所属する特殊能力者の軍事行動及び冒険者

 活動規定と登録確認



 4人が所属する「遺品回収課」は、「冒険者条約」第1条約の 第16条に基づいて活動している。

 条文は以下の通りだ。

「「冒険者条約」の第16条:「全8大陸冒険者管理局は、冒険者登録者の死亡証明書又は正当に認証された死者名簿を作成しなくてはならない。

 同様に、死者について迷宮や遺跡で発見された複式の識別票の一片又は、単式の識別票の場合には、識別票、遺書その他近親者にとって重要な書類、金銭及び一般に内在的価値又は感情的価値のあるすべての物品を取り集め、

 且つ、冒険者管理局冒険者登録機関を通じて近親者にそれらの物品を送らなければならない。

 それらの小包には、死亡した所有者の識別に必要なすべての明細を記載した記述書及び小包の内容を完全に示す表を附さなければならない」




 2人がいた世界の冒険者には、冒険者登録と共に冒険者認識票が同時に手渡される。

 認識票の形状や材質、打刻される冒険者の情報は各大陸地域の連合警備隊冒険者管理局支部によって異なっている。

 多くは5cm程度の大きさの高度特殊魔術をかけられているアルミニウム製やステンレス製で、氏名、生年月日、性別、血液型、種族、認識番号、信仰する宗教等が打刻されている。

 遺体そのものまでは回収する事はほぼ不可能だ。

 冒険者の死骸は迷宮や遺跡内にいる魔物に何もかも喰われてなくなるためだ。

 ただ、認識票は迷宮や遺跡内で放置していても、高度特殊魔術を施しているため無くなる事はない。



「連合警備隊冒険者管理局」では、八大陸中にある幾多の地下迷宮や遺跡を厳重な警戒によって取り締まり、または管理している。

 無暗やたらに命知らずで英雄願望の冒険者の遺体を増やさないため、特に冒険者実績の低い冒険者パーティが足を踏み入れる事をできるだけ制限をしている。

 迷宮や遺跡には、上級者の冒険者や冒険者管理局職員ですら命を落とす魔物や悪辣な罠が無数に存在しているからだ。



 管理している地下迷宮や遺跡の出入口の壁や床には、世界上のありとあらゆる"封じ"の呪文が刻まれている。

 また、そこには連合警備隊冒険者管理局が発足してから変わらず同じ警告文を書かれた立札が建っている。

「「この門を潜る命知らずの冒険者へ。一切の望みを捨てよ」」

 それらの事は、各大陸の「冒険者管理局冒険者登録機関」へ登録手続きを終了した新米冒険者パーティに手渡す

「初心者冒険者パーティガイドブック、猫に小判先生による解説書付き」に記されている。

 今現在2人がいる別世界では、そんな事はしていないだろうが「連合警備隊冒険者管理局」では、八大陸各地域の遺跡や迷宮を三つのランク付けしている。

「安全区域遺跡・迷宮」、「重要危険区域迷宮・遺跡」、「最高危険区域迷宮・遺跡」というランクだ。



「安全区域遺跡・迷宮」は、あくまでも駆け出し冒険者パーティにとってはある程度安全といったレベルの比較論としてのランク付なため、油断すれば魔物の餌になる。

「重要危険迷宮・遺跡」は、迷宮や遺跡で腕を上げた上級冒険者パーティであっても、油断と戦術を誤れは生命を落とし、「安全区域遺跡・迷宮」に棲息する魔物とは段違いの魔物と悪辣な罠が待ち構えている。



「最高危険区域迷宮・遺跡」は、凄腕の超上級冒険者パーティであっても、無事に脱出する事は不可能に近い。

 凶暴凶悪、最も強く、最も狂った常識外れで、冒険者達から「お前らちょっと空気読めよ、どうかしているぜ」

 と呼称されている魔物達が徘徊している。

 はるか古代冒険者時代よりも大昔に地上を徘徊していた思われる太古の飛龍や巨人を筆頭に、吟遊詩人の奏でる

 英雄譚や神話時代から今現在まで語り続けられている常闇の向こう側の未知の魔物―――――最上級の魔族、魔王、魔神、魔神王と言った想像絶する魔物が棲息している。



 それぞれの迷宮や遺跡の魔物に勝利の凱歌を上げれば、魔物を倒さなくては手に入らない希少な伝説の

 刀剣や防具、財宝が手に入る事も確かな事実である事は確かだ。

 ―――「連合警備隊冒険者管理局遺品回収課」は、「冒険者条約」の下にそれぞれの迷宮や遺跡で無念のうちに命を散らした冒険者パーティの遺品回収が義務付られている。




「重要危険区域迷宮・遺跡」及び「最高危険区域迷宮・遺跡」では、特に駆け出し冒険者パーティが脚を踏み入れる事を出来る限り制限している。

 それで、駆け出しの冒険者パーティとの衝突も少なからずある事も事実である。

 最上級の魔族を筆頭に太古の飛龍や巨人といった魔物が群れを作り、広大な遺跡や迷宮内を徘徊して回っている中に、碌に冒険者式戦術や実戦経験不足の駆け出し冒険者パーティが入ればどうなるか?。

 それらの遺品は誰が回収しなくてはならないのか?――――――。

 具体的な説明をしなくても、そういう事である。




 また、「連合警備隊冒険者管理局遺品回収課」職員は、基本的に「安全区域遺跡・迷宮」全てと、「重要危険区域迷宮・遺跡」の一部では、魔物との交戦は禁止されている。

 交戦規程が許されている場所は、主に「最高危険区域迷宮・遺跡」だ。

 だが、交戦し倒した魔物が隠し持っていた財宝類の回収も禁止されている。

 あくまで「連合警備隊冒険者管理局遺品回収課」職員が回収できるのは、冒険者パーティの遺品だけである。

 その遺品回収作業を行う時は、それぞれのランク付けされている迷宮や遺跡で編成が違う。

「安全区域遺跡・迷宮」では、2人一組。

「重要危険区域迷宮・遺跡」では、3人一組

「最高危険区域迷宮・遺跡」では、6人一組、もしくは8人一組(ラインヴァルト達は、事情により3人一組)。




 ラインヴァルトは、丼料理に手をつけていた手を少し止めた。

「(こちらにきてまだ日数は立っていないが・・・・、俺とトールが抜けた穴は大丈夫なのか?)」

 ラインヴァルトは、そんなことを思った。




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