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「どう見たら、そう見えるのか聞きたい所だぞ?――――」

 街に入ると、二人は改めて街の様子を見る。

 ラインヴァルトとトールから見れば、そこは古代冒険者時代を彷彿とされる街の光景が広がっていた。

 街を南北に走る大通りは、商人達の荷馬車や買い物客でごった返し、脇にずらりと置かれた露店には、

 さまざまな商品が並べられて、道行く人々を楽しませている。

 家や商店、宿屋、酒場、武器屋に防具屋――――、そして行きかう人々は、ラインヴァルトやトールに取っては、何処か懐かしさを覚える光景だ。

 ただ、一つ、ここが異世界であると言う事が強烈に印象付けられる事があった。

 ――――やはり街の中でも人間しか見当たらなかった。

 ドワーフ、エルフ、ホビット、フェアリー、フェルパー、ラウルフ、ムーク、リザードマン、ダークエルフ、シャドウエルフ、各種の混血種族の姿が何処にもなかった。

「(馬車の中で情報を集めた限りでは、この異世界には存在していないようですよ)」

 トールが小声で告げる。

 その表情は、何処か違和感を感じている様だ。




「(案外、森とかでひっそりと暮らしているんじゃないのか?、存在していなかったら、

 いなかったで、この異世界は狂っているぜ・・・)」

 ラインヴァルトも、違和感を感じる表情を浮かべながら告げる。

 二人に取っては、人間種族だけが存在する世界など考えもつかないため、この世界が異常に見えるのだろう。

「(まぁ、冒険者ギルドが有るみたいですからそれで良しとしませんか?)」

 トールが、辺りを物珍しそうに見渡しながら告げる。

「(俺達の世界では、記録ぐらいしか残っていない組織だがな)」

 ラインヴァルトは苦笑いを浮かべる。




 2人は、そんな街の喧噪には眼もくれずに、まっすぐに冒険者ギルドの建物がある広場へと向かう。

 商店を練り歩いている人々の間には、いかにも冒険者の様な屈強な体格の者や、帯剣した女の姿もある。

 冒険者ギルドがある場所に近づくに連れて、その姿が多くなってきた。

「あれだな」

 ラインヴァルトが、石造りの建造物を視界に捉えて告げる。

 冒険者ギルドは、石造りの建物であることを老人から聞き出していた。

「みたいですね、さぁ、行きましょう」

 トールは、何処か嬉しそうに応えながら、速足で歩いていく。

 その様子を見て、ラインヴァルトは苦笑いを浮かべながら、その後を付いていく。

「冒険者ギルド」の出入り口は、両開きの押し戸となっていた。

 トールは、律儀にもラインヴァルトが来るのを笑みを浮かべながら待っていた。




 2人は、同時に両開きの押し戸を開けてゆっくりと中に入った。

 建物内を見て、トールは口笛を軽く吹く。

 視界に飛び込んできた光景は、文字通り古代冒険者時代に存在していたギルドそのままの光景だった。

 ラインヴァルトも、その光景を見て自然に口元に笑みを浮かべる。

 2人がいた世界では、もう見る事もできない風景なためか、何処か懐かしさを覚える光景を見て感動もしている。

 だが、ここにもやはり人間以外の種族は見当たらない。

 正面の奥には受付があるのが見えた。

 右には巨大な掲示板があり、大量のメモが張り付けられているのが見える。

 また左手奥には、5~6人囲める木製のテーブルとイスが複数とバーカウンターがあるのが見えた。




 その場所では、幾人もの冒険者達が食事等をしているのが、トールとラインヴァルトがいる所からでもわかった。

 ラインヴァルトは貌を引き締めると、正面の奥の受付へと向かう。

「こんにちわ、今日はどう言った御用件でしょうか?」

 年齢的には二十二か三で、えくぼのある滑らかな肌をした長いブロンド髪の受付嬢が、営業スマイルを浮かべながら、ラインヴァルトに尋ねてくる。

「どうも、新規登録をしたいんだが出来るかい?」

 ラインヴァルトが柔らかい口調で尋ねる。

 受付嬢は、外見とは違う喋り方のラインヴァルトに眼を瞬かせ不思議そうに

 見てくる。

 だが、すぐに営業スマイルに切り替えた。

「わかりました、必要事項に記入するので、質問に答えてください」

 受付嬢が質問をしながら、数枚の書類を取り出す。

「わかったよ、御嬢さん」

 ラインヴァルトが応える。

「ご登録は、何名ですか?」

 と尋ねてくる。

「二人」

 ラインヴァルトは、物珍しそうにギルド内を見渡しているトールを一瞥する。




「お名前は?」

 書類に書き込みながら、続けて質問をしてくる。

「ラインヴァルト・カイナード」

 ラインヴァルトが応える。

「トール・クルーガです」

 とトールが応えた。

 その後、受付嬢が年齢と出身地、戦闘スタイルについて尋ねてきたので、2人は素直に応えた。

「お二人は、ポートリシャスという国のご出身地なのですか?」

 受付嬢が尋ねてくる。




「ああ、ここからかなり遠い国からさ。聞いたことあるのかい、御嬢さん?」

 ラインヴァルトがそう尋ねる様子を見た、トールは、口元ににやにやした笑みを浮かべながら、

「おやおや、さっそく美人な受付嬢を口説き落とそうとしているんですか?、ダメですよ、業務の邪魔したら可哀そうじゃないですか」

 とおどける様に告げてくる。

「どう見たら、そう見えるのか聞きたい所だぞ?――――」

 ラインヴァルトは、トールに視線を向けながら呆れた声で応える。

 受付嬢は二人の様子が面白かったのか、笑っている。

「…それでは、冒険者ギルドの詳しい説明をさせて頂きますね」

 受付譲が明るい声で言ってくる。

 ラインヴァルトがその説明を聞いた限りでは、もといた世界の旧冒険者時代にあった冒険者ギルドやベルナルドが良く読んでいる冒険者小説とほぼ一緒の

 様だった。

 つまり、後ろ盾もない冒険者達の支援と権利と地位向上のために住民と冒険者が結成した組織だ。




 この世界のギルドは、冒険者の実力と実績、そして依頼の難易度をランク付けしているらしい。

 最上ランクはXXXランクで、SS、S、A、B、C、D、Eと続いてく。

 初めて登録した冒険者全員は、全てEランクから開始という事だ。

 依頼内容は、護衛、討伐、採取、雑用に分類されており、内容によりランクが付けられている。




 近年では特殊討伐という項目が追加されているが、討伐対象は「鬼獣」だ。

「依頼は、どのランクであっても全て受ける事か可能です」

 受付嬢が告げてくる。

「それはつまり、一番ランクの低くても、いきなりXXXランクの依頼を受けることも可能って事か?」

 ラインヴァルトが尋ねる。

「ご忠告はさせていただきますが、可能です」

 受付嬢が営業スマイルを浮かべながら応えてくる。

「依頼主の命が関わる護衛任務でも可能なのかな?」

 トールが、受付嬢に視線を向けながら尋ねる。

「はい、特にランク制限はしていませんから」

 受付嬢が応えた。




 E、D、Cのランク昇格条件は、それぞれが30回の依頼達成、上級ランクのB、A、S、SS、XXXには、ギルド職員五名以上の推薦とギルド長による判断が必要で

 あると受付嬢が説明をしてくる。

「それが基本だが、今、俺が尋ねたとおり一番下のランクがSS、XXXの依頼を受けて成功させたら、一発でXXXランクまで昇格してもらえると?」

 ラインヴァルトが質問をする。

「その通りですが、お勧めはできませんよ」

 受付嬢が応えてくれる。




 何がお勧めできないかは、説明はしなくても2人にはなんとなくわかった。

 ―――命の保証はできない。そういう事だろう。

 また、ランク降格条件はギルドに多大な損害を与え、または、悪質な犯罪行為を行ない、冒険者ギルドの名誉を

 傷付ける行為を行ったと認められる場合と説明をしてきた。

 時には、除名処分が下る事もあるらしい。

「それでは、これからギルドカードを発行しますので、こちらに手を置いていただけますか?」

 受付嬢はそう告げながら、ラインヴァルトの眼の前に一つの水晶玉を置いた。

「これに?」

 とラインヴァルトが、少しだけ怪訝な表情を浮かべる。

 見た所、普通の水晶玉の様だが・・・。




 受付嬢は、営業スマイルを浮かべたまま頷く。

 ラインヴァルトは、恐る恐る水晶玉に片手を乗せる。

 水晶玉に乗せた瞬間それは蒼白く輝き、一枚のカードらしきものを吐き出して

 くる。

 恐らく、それがギルドカードなのだろうが、どのような構造しているのかは

 ラインヴァルトにもトールにもわからなかった。

 ギルドカードを取り出してみると、そこには、「ラインヴァルト・カイナード  ランクE」と刻まれていた。




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