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「(・・・・ベルナルドだったら、これを聞いたら小躍りするだろうな)」

 ラインヴァルトとトールは、馬車に揺られる事半日、目的の街「スクルトリア」に着いた。

 その街は10mほどの城壁で囲まれているのが見えた。

 石で組まれた壁などは、新冒険者時代に生まれたラインヴァルトとトールからすれば、かなり珍しい景色だ。

 旧冒険者時代ならありふれた光景だが、新冒険者時代ではあまり見かけない光景だからだ。

 ラインヴァルトは、女子供とのコミュニケーション取りに時間を割いているトールの様子を一瞥して、

 近づいてる城壁を観察する。

「(この世界では、壁に囲まれた中以外は、決して安全とは言えない・・ということか)」

 ラインヴァルトは思った。

 道すがら、ラインヴァルトは卸者の老人から聞いた情報では、この世界の街の半数は魔物からの襲撃に備えて

 高い城壁で覆い、街から街への移動にはそれなりの装備と、腕の立つ冒険者を雇うのが常識となっているらしく

 この地域――――もとい、ラインヴァルトとトールが現在いる異世界・・・アーシベール大陸全域では、ラインヴァルトとトールが撃退した、「鬼獣」という魔物が近年爆発的に大量発生し、襲われる事も多いらしく、最南端に近い辺境ともいえるこの近隣も例外ではないらしい。




 ラインヴァルトとトールのいる世界では、新冒険者時代が開幕以降は連合警備隊冒険者管理局が管理する

 地下迷宮や古代遺跡周辺地域などには、超高度特殊魔術結界を張り巡らしている。

 迷宮や遺跡の出入り口には、さらに全大陸中のありとあらゆる"封じ"の呪文が同じように刻まれて、容易に魔物を地上へは出させない仕組みを作り上げている。

 もちろん、付近には冒険者管理局監視施設が置かれ、荒くれ者集団の冒険者パーティーの取り締まりも行っている。

 その他にも、これだけは尋ねておかなくてはならない事を老人に尋ねた。

「俺達、ポートリシャスって国から来たんですけど、このへんは初めてなので、ちょっと教えてもらえませんか?」

 ラインヴァルトは卸者の老人にそう尋ねた。

「何を知りたいんです?」

 と答えてきた。

 ラインヴァルトは、わざと申し訳なさそうな表情を浮かべながら、「貨幣について・・」と尋ねた。

 老人はそれを聞いて、怪訝な表情も浮かべずに応えた。

 聞いた限りでは、この世界の貨幣は、冒険小説に登場する様な貨幣だった。

 白金貨・金貨・銀貨・銅貨で、高いのは白金貨で、貨幣単位「ナハル」だ。

「(・・・・ベルナルドだったら、これを聞いたら小躍りするだろうな)」

 ラインヴァルトは、そんなことを思った。




 また、街に入るときは簡単な検問を受けると、老人が説明してきた。

 それを聞いて、まずいなと、ラインヴァルトは思った。

 身元証明をされたら、異世界から来たラインヴァルトとトールに取っては、いささかまずいからだ。

 この世界の人間ではない2人は、この世界の身元を証明するものを持っていない。

 だが、幸いも、正確な身分ではなく、確認するのは犯罪者リストに載ってるか載ってないかの簡単な検査

 らしく、それを聞いてラインヴァルトもトールもほっと安心した。

 数々ある道が荘厳な門の方に集まっており、大勢の人が門目指して歩いている。

 その姿を見て、ラインヴァルトは何か違和感を覚えていた。

 その原因がなんであるかは、わかっている。

 ―――異種族の姿がまったく無く、人間の姿しかないからだ。




 数々の道が荘厳な門の方に集まっており、大勢の人が門目指して歩いている。

 荘厳な門まで近づくと、ラインヴァルトは、改めて城壁には特殊結界魔術が施されていないを目の当たりにする。

「(俺達の世界では考えられねぇ・・・)」

「スクルトリア」の人口がどれほどかはわからないが、もしも五十万以上の都市ならば特殊魔術結界を施す事が義務づけられる事は間違いない。

 それとも、目的の街だけが魔術的な保護結界も施していないだけか・・・、ラインヴァルトには見当もつかなかった。

 だが、「鬼獣」の襲撃に備えにしてばラインヴァルトとトールにしては、警戒が無いに等しいと思った。

 現に、女子供とのコミュニケーションを終えたトールも、その光景を目の当たりにして、少し驚いた表情を浮か

 べている。




 別にラインヴァルトは、コミュニケーションを取るのが苦手というわけではないのだが、今回はトールという同行者がいるので、その辺りは任せているだけである。

 傭兵士官学校で、戦場でのコミュニケーションがどれほど重要かなのかも徹底に教えられ、その能力を生かして

 戦場を生き抜いてきたラインヴァルトが苦手なはずはない。

 荘厳な門の前では、数組の冒険者や商隊が検閲待ちで並んでおり、屈強な警備兵が手元に持っている

 手配書で検問をしている。

 また、荘厳な門の横には警備兵の詰め所が設置されている。

 ラインヴァルトとトールは、老人にお礼を告げると、馬車から降り立つ。

 トールは、道すがらに仲良くなった女子供に手を振りながら、別れを告げた。

 順番に2人は、門番の前に立った。

 背が低く豆タンクの様な警備兵は、手配書を見ながらラインヴァルトとトールの貌を見る。

「この辺では見かけない格好だな……、そっちの兄さんは連れかい?」

 と警備兵がラインヴァルトの服装が珍しかったのか、尋ねてくる。

「ああ、こっちのは俺の連れだ」

 ラインヴァルトは、元の口調で応える。




「どうも、お仕事ご苦労様です」

 トールは、何処か親しみを覚えそうな口調で応える。

 手配書を確認を終えると、口元に笑みを浮かべる。

「確認終了だ、お二人さん。スクルトリアにようこそ!」

 警備兵はそう告げた。

 ラインヴァルトとトールが、街の中へ入ろうとして、ラインヴァルトがふっと脚を止めて、警備兵に視線を向ける。

「警備の旦那、「冒険者ギルド」の建物が何処にあるのか教えてもらいたいんだが?」

 ラインヴァルトが尋ねる。

 道すがらに、老人に「冒険者ギルド」が存在するのかどうかも、ラインヴァルトは確認していた。

 この世界の「冒険者ギルド」は、どのような感じかは、直接ギルドで確認するだけだ。

「この門から先まっすぐに行けば見えるよ」

 警備兵が応える。

 ラインヴァルトは、礼を告げると街の中へと入っていく。

 警備兵は、ラインヴァルトとトールの後ろ姿に、さり気に視線を向けた。

「(――――あの2人組・・・何者だ?)」

 特に頬に傷がある男は、悪い人間ではなさそうだがそれ以上に何かヤバい臭いを感じた。

 もちろん、ラインヴァルトは警備兵がそんな印象を感じ取っているとは思ってもいない―――。




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