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「(お約束の展開?、なんだそれは)」

 ベルナルドが立ち去ったのを見送ると、ラインヴァルトは、改め辺りを見渡す。

「で、まずどうしますか?」

 トールが、物珍しそうに見渡しているラインヴァルトに尋ねてくる。

「この森から出て、村を探す。全てはそこからだ、トール」

 ラインヴァルトがそう告げると、歩き出す。

 なお、ベルナルドが撃退した熊の魔物に突き刺さっていた刀剣類は、すでに消えて無くなっている。

 鹿や大鹿が通って出来た迷路の様な小道しかない、鬱蒼と生い茂った森林地域を2人は全神経を集中して

 警戒しながら移動をする。

 2人がいるのは異世界――――どのような魔物がいるのか判断できないため、警戒しすぎると言う事は決してない事を、トールとラインヴァルトは意識していた。




 ラインヴァルト、トール、ベルナルド、そして度々名前が登場する、クラウディア、エレーナは、

 連合警備隊冒険者管理局遺品回収課に所属する中で、他の遺品回収課ティームとは少し違った業務を行っている。

 地下迷宮・遺跡内部長距離偵察及び遺品回収任務―――ティーム名「フォークウィンド」

 冒険者管理局遺品回収課が、回収作業を行う時は冒険者の様に6人編成で迷宮や遺跡内を動き廻るのではなく、基本は二人一組の少人数である。

 だが、それが冒険者管理局が管轄する「最高危険区域迷宮・遺跡」、「重要危険区域迷宮・遺跡」に

 関しては四人一組、もしくは六人一組編成で遺品回収作業を行い、また、交戦規定も比較的許可される。

 基本的に冒険者管理局遺品回収課は、冒険者の様に財宝集めなどをするのではなく、管理する迷宮や遺跡内部で命を落とした冒険者パーティの遺品を回収することが業務で、内部構造などの探索などは行う事はない。

 全ては冒険者らがする事なのだが、「フォークウィンド」は、その内部構造などの探索の任務も与えられ、

 ある程度魔物との交戦規程も自由裁量を与えられている。

 これは、他の遺品回収ティームにはない特別な特権であり、有り得ない事なのである。




 地面をえぐる小川を飛び越え、ツタがからまる木の根を乗り越えてからしばらくして、悲鳴と怒声らしいのが聴こえてきた。

 ラインヴァルトとトールが脚を止めた。

「(どうやらさっそく、お約束的な展開の様ですよ)」

 トールが小声で話しかけてくる。

「(お約束の展開?、なんだそれは)」

 ラインヴァルトは怪訝な声で応える。

「(良くベルナルドさんが読んでいる冒険小説あるじゃないですか?、幾つかのシリーズを貸してもらって読んだことあるんですが、九割ほどが執筆者のご都合でこんなのがあるんですよ)」

 ラインヴァルトは、何とも言えない表情を浮かべる。

 彼も幾つかのシリーズを強引に貸されたので、しぶしぶ読んだことがあったが、ラインヴァルトの記憶にはそんな展開が書かれていた覚えはない。

 かなり複雑な人間関係と権力闘争、そしてあまりにも生々しい戦争の裏側で暗躍する登場人物達の事が書かれていたぐらいだ。

 あまりにも、ラインヴァルトが傭兵時代に経験し見てきた様な事が小説内で書かれていたため、途中で投げ出した。




「(で、そのご都合的な展開で、襲われているのは誰なんだ?)」

 2人は、自然と喧騒が聞こえてくる方向へと走りだし、ラインヴァルトが尋ねた。

「(展開の種類がありますよ、一つは盗賊に襲われている村娘、魔物に襲われそうになっている村人、

 権力闘争に巻き込まれ、暗殺者に襲撃されている高貴な方とか…)」

 トールは、思い付く限りの事を説明しながらも走る。

「(俺個人的には、三番目は勘弁してほしいぞ。)」

 何処かうんざりとした小声で、ラインヴァルトが応える。

「(その訳は?)」

 トールが小声で尋ねる。

「(面倒過ぎる展開が、嫌になるほどあるからにきまっているじゃねぇか)」

 ラインヴァルトが応えた。

 そして木々の間から抜けると――――――地平線が見えそうな広い場所に出た。

 2人は、その光景に眼を奪われて一瞬だけ立ち停まった。

 あくまでも一瞬だけだ。




 次に視界に飛び込んできたのは、一台の馬車だった。

 中には、不安と恐怖に満ちた瞳で怯えている人々。

 馬車の中は女子供がほとんどで、卸者らしき老人も怯えていた。

 馬車の回りを三十数体の魔物が取り囲んでいた。

 身長は二メートル前後で、肌は蒼白く、発達した筋肉が鎧の様に全身を覆っている。

 身につけているのは獣の生皮一つで、手には粗末な剣を握っている。

 血に濡れた様な紅の瞳と、めくれ上がった唇からは鋭い牙が見えた。





「この展開は?」

 ラインヴァルトが尋ねながら、漆黒の片手剣を鞘から抜く。

「この展開は思い付きませんでした。俺の知識不足です」

 トールがそう応えながら、幅の広い片刃の短刀を抜く。

 恐らく、それはベルナルドから召喚した代物だろう。

「気にするな―――行くぞッ!!」

 ラインヴァルトがそう告げるのと同時に、二人は相手との距離を詰めようと地面を蹴った――――。


とりあえず、ストックが無くなったのでちょっと更新速度が遅くなります。


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