少女
「開門!」
帝国軍『雷狼団』の本隊が到着し、城門に司令官と思わしき男の声が響く。
「門を開けろ!」
ライルは素早く命じると、司令官を迎えるため城門の下に降りた。
「私は、“雷狼団”の司令官。ダーセント・ロード少佐だ」
重そうな鎧を着込んだ騎士は、クレン中尉と合流しライルのところにやってきた。
「…警備隊長ライルです」
「そうか、では早速例の人物の探索を始めさせてもらう」
ダーセントと名乗る騎士はそういうと部下に命じてテントを設営させ始めた。
「ところで警備隊長」
「はい」
ダーセントはいかにも当然というように、言い放った。
「捜索には、貴官も参加するのだぞ?」
ライルが、命令を受けて帰宅するころにはすでに日が暮れていた。
「じゃあな、ライル。気をつけろよ」
「……ああ」
「さあ、帰りましょう」
アリィと連れだって、自宅の前まで来るとライルは突如歩みを止めた。
「どうしたの?」
アリィは小首を傾げて、ライルが睨みつける方に眼をこらした。
「…ドアが開いてる」
「えっ?」
今朝出た時にはちゃんと鍵を閉めて来たはずだ。
アリィが近寄って見ると、ライルの言うとおりドアがほんの少し開いていた。
「もしかして、泥棒?」
「……」
おびえるアリィの横を、ライルが腰の剣に手をかけながら家に入って行く。
「ちょ、ちょっと待ってよ」
アリィは小声で叫びながら、ライルのすぐ後ろについていった。
しっかりと、ライルの服の裾を握って。
「……?」
ライルは家の中を見渡したが、特に変わった様子はない。
「ね、ねぇ。あれ…」
アリィが指さす方を見ると、部屋の真ん中にあるソファーに誰かが腰かけていた。
「…あれは」
ライルがゆっくりと近づいてみると、腰かけていたのは赤髪の少女だった。
少女は座ったまま寝ているようで、目を閉じたまま開く気配が無かった。
「っ!この人って!!」
少女の顔を見たアリィが思わず声を上げる。
そう、その少女は昼間見せられた、写真の少女だった。