表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼い瞳  作者: 凉川
3/6

騒動

もちろんアリィではない。


「何だ?」


「何?」


ライルとアリィが同時に声のした方を振り向く。


「おい!。ふざけてんじゃねえぞこらぁ!!」


「なにを!?やる気かお前!!」


そこでは5、6人のグループが取っ組み合いの喧嘩をしていた。


「おい、やめろって!」


「あ?関係ねえ奴は黙ってろよ!!」


「うわぁ!」


止めに入った通行人も巻き添えを食って殴り飛ばされる始末だ。


既に黒山の人だかりになっている野次馬達に混ざりながら,その様子を見ていても以降に収まる気配が無い。


それどころか、どんどんヒートアップしてきて、既に手がつけられないほどの騒ぎになっていた。


「ねぇ、ライル。」


アリィは傍らに立つライルの服の裾を引っ張った。


「ん?」


「そろそろ止めた方がいいんじゃない?このままじゃ怪我人が出るわよ?」


「む、それもそうか。」


ライルはしばらく腕組みをして考えていたが、はなから答えなど決まっている。


この少年がこういった争いごとを見逃すはずが無いのだ。


見た目はあまり頼りなさそうなのだが、こういうことになると人が変わったような態度でその場を収めてしま

う。


だからこそ、“警備隊長”などと言う仰々しい肩書が付けられたのだ。


そして、それを可能にする力もこの少年は備えている。


「あ、ちょうどいい所に。警備隊長、こいつらどうにかしてくれよ!」


そのうち、野次馬の一人が気付きライルに話しかけて来た。


「・・・分かった。」


この少年にはよけいな言葉など必要ない。


ただ、人道的に正しい事を頼まれればどんなに危険な仕事だろうと文句も言わずに引き受けてしまう。


実はそれがアリィにとっては心配の種の一つなのだが・・・


「さすが!・・・おい皆、警備隊長が出陣なさるぞ!!」


先程の野次馬の言葉に人混みがどよめき、ライルの為に道を開ける。


「ちょっと、ライル!」


アリィが後ろから呼びかけると、ライルは顔だけ振り返らせた。


「問題ない、すぐに終わる。」


「そういう問題じゃなくて……」


アリィがまた声をかけようとすると、既にライルは揉み合っている男たちの間に入って行ってしまった。


「……もう。」


アリィは、あきれて肩の力を抜いた。


「なんだよ、テメェは!」


さっそく、ライルに気付いた一人の男が怒鳴る。


「やめておけ。」


だが、ライルは全く動じずに淡々と言う。


「人の喧嘩に口出してんじゃねぇよ、ああ!?」


もう一人の男がライルに掴みかかる。




「・・・おとなしくやめとけばいいのに。」


アリィは、その様子を多数の野次馬達と眺めながら呟いた。だが、別にライルの身を案じて言ったのではない。


不幸な男達に向かって言ったのだ。


もう二年になるが、この少年については知らない事の方が多い。


過去の事などは何も語ろうとしないし、最近ようやくたまにわずかではあるけれども、笑顔と言えるものを見


せてくれるようになったがこの少年には感情と言う物が薄いような気がする。


ただ名前がライルで,剣の腕がそれこそ帝国の騎士にも劣らない程の達人である事、


そんなぐらいしか知らない。


最も、アリィ自身が自分の事はほとんど語った事が無いのだが。


それでもライルといて不快な事は一度も無かったし、むしろ居心地がいいぐらいだった。


そして、ライルの能力には完全な信頼を置いていた。


「ぐぁ!」


「な、何!?」


「くそ!」


ライルが鎮圧と言う名の行動を開始して一分もたたない間に、喧嘩していた男ども全員が地面に倒れてうめき声をあげていた。


「・・・だから言ったのに。」


アリィは野次馬達から抜け出してライルのそばに寄った。


「お疲れ様。」


「終わった。」


短いやり取りの後、アリィとライルは再び並んで歩きだした。


・・・ひっくり返ったままの男達を置いて。


ライルたちが、さらにしばらく歩いて行くと


又、人だかりが出来ていた。


「はぁ。…今度は何?」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ