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十八女貢の恋愛奔走記

作者: 戯言士

 懲りもせずに再び恋愛ものの投稿。

 以前に投稿した『柳華蓮の妄想日記』の柳華蓮の彼氏である十八女(さかり)(みつぐ)の物語となります。

 彼女の名前は柳華蓮。

 O型蠍座の美少女だ。

 真面目で努力家の強い女性。

 だけど──。


「ねえ(みつぐ)、今度の日曜日、覚えてるよね? プレゼント楽しみにしてるから♪」


 背後から俺を覗き込み、笑みとともに誕生日プレゼントをねだる華蓮。


 そう、強いのだ。

 彼女と付き合い始めたのも、この押しの強さに負けたため。

 一方的に告白を突き付けてきて、そのままダッシュで去っていった彼女。

 考える間も返事をする間もありゃしない。

 彼女としては羞恥に堪えられなかった年頃乙女ってつもりなのだろうけど、残された俺にどうしろと……。

 暫く呆然としていた俺だったけど、それでもまあ、断るにはもったいない話。やはり思春期の男としては美少女の告白を無視なんてできないわけで。

 こうして成り行きに流されるまま付き合い始めた俺だけど、正直いって恋愛というものがよく解ってはいない。どうすればいいんだ?


 付き合い始めたその日から、彼女はやたらべたべたと纏わり付くようになった。そう、文字通り物理的に。いわゆるスキンシップというやつだろう。

 最初はやたらもじもじとしていて、手を繋ぐどころかか手が触れることにさえもびくびくとしているような感じで、その怯えようにまるでこっちが苛めているかのような錯覚を覚え罪悪感を感じてしまう程だったのだが、それを伝えた結果がこの始末。

 まあ俺も思春期の男だし、腕や背中に密着されればドキドキと動悸もしはするけど、なんていうか彼女を見ていると被捕食者になったような気がしてならない。


 毎日昼休憩になると昼食を一緒に食べようと華蓮がやってくる。

 ひとり静かに落ち着いて食べるのも悪くはないが、これもこれで悪いものではない。孤独な昼食も女の子がいるだけで華やかになるのは言うまでもなく、況してそれが彼女とあればなおさらというものだ。

 というわけで一つ机を前に向き合い弁当を取り出すわけだが──。

 華蓮の昼は購買のパンが基本らしい。つまり菓子パンや総菜パン。なんというか思ったよりもワイルド……。

 対する俺は趣味が高じた手作りの弁当。

 華蓮が興味津々と覗き込んでくる。自信作ではあるがやはり女の子に見られるのは恥ずかしい。所詮は男の作った物だし。

 意外にも華蓮の反応は好評だった。本当に美味しそうに食べていたもんなぁ。

 ついついあれこれと食べさせる手が止まらなくなっていた。多分雛鳥に餌を与えている飼い主ってこんな気分なんだろうな……。

 ということで、その翌日からは華蓮の分の弁当も俺が作ることとなったのだった。


 中間試験を前にして、華蓮が妙にそわそわし始めた。訊ねてみたところどうやら一緒に勉強をしたいということらしい。というわけで毎日放課後は図書室通い。

 ……なぜだろう、一瞬華蓮が肩を落としたような気がしたのは。勉強というのなら図書室というのは基本だろうに?

 さて、その華蓮だが──。

 なんなんだろう、解らないところがあるといろいろと質問してくるのだが、やたらと話が他所道に逸れるのだ。これじゃ勉強というよりもただのお喋りだ。

 多分質問は口実でこっちの方が目的で話しかけてきてるんだろうなぁ。肩の触れ合うほどに距離を詰めてきてるし。

 一応質問に答えはちゃんと出ているのだから問題はないのかも知れないけど、なんだかなぁ……。

 まあ、実際試験の結果はふたり揃ってそこそこの好成績だったし、良かったということでよいのだろう。


 そして中間試験も終わり現在。

 華蓮の誕生日のことは考えていた。だがプレゼントに関してはまだ何にするかは決めていない。果たして何が良いだろうか。

 華蓮のこの上機嫌さはプレッシャーではあるが、この期待に応えてこそ彼氏。それが甲斐性というものだ。


 あれからプレゼントについていろいろ調べてみたのだが、なんというかタブーな物の多いことに愕然。

 ハンカチは手切れを靴は踏み躙る行為を連想させるのでダメ。

 筆記用具は勉強不足を、時計は時間厳守を指摘しているように誤解を受けるのでダメ。

 ガラスの小物は割れるイメージがあって縁起が悪いためこれもダメ。

 その他嵩張る非実用品も避けるべき。

 最後のはともかく他のは気にし過ぎというものだろ。

 では何が良いのか?

 一位人気はコスメや化粧品。

 だが男の俺には判らない世界。いろいろと合う合わないがあると聞くし、変に手を出さない方が良いだろう。

 それになにより使ったとしても多分俺じゃ違いが判らないだろうし……。

 二位はポーチ。

 なるほど日頃よく持ち歩く物が好いということか。確かに身の周りの小物を整理して収納できるポーチは手放すことのできない必需品だろう。

 だが、華蓮にも機能性とかに拘りがあるだろうし、今使っている物に思い入れがあるかも知れないしなぁ……。

 そうなると、他の実用品も考え直した方がよいかも知れない。付き合い始めて高々一月だし、華蓮のことを知り尽くしているわけじゃないから知らず知らずで不満も出てくることだろう。

 となると……。


 土曜日。華蓮の誕生日前日。

 結局俺が選んだのは華蓮の誕生石であるオパールをあしらったチャームだった。

 アクセサリーいう実用品でありながらも、さりげなさ故にそこまで気になることもない。それでいて御守りとして彼女を護ってくれる。

 宝石だけに結構値が張るものだと思っていたけど、物とサイズを選べば高校生にも手に入れること可能なお手頃価格で助かった。

 本体は3.5cmでオパール自体は6mmと小指の先サイズ。少し地味だがデザインは可愛らしいので、あまり派手な物は身に付けない華蓮なので案外気に入ってもらえるかも知れない。

 自分にしては上出来なセンスにほくそ笑む。


 明けて当日の日曜日。

 華蓮の喜ぶ笑顔を思い浮かべながら家を出る。

 見上げた空はどこまでも高く青く澄み渡り、太陽は炯々と眩しく世界を照らしていた。

 

 多分結末まで書いた方が読書方の受けが良いのでしょうけど、今回も敢えてここまでです。一応イメージはあるのですが、この後の展開は皆様の予想にお委せした方がいろいろと想像できて好さそうですしね。(笑)

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